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アフターストーリー

第2話ー③ 約束のブレスレット

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 ――昼休み、カフェにて。

 マリアはフォークを持って、ボーっとしたまま購入したバジルパスタを見つめていた。

「疲れたかい?」

 ゆめかはボーっとするマリアにニコニコと笑いながら、そう尋ねた。

「あ、す、すみません……」
「大丈夫さ。それより、大丈夫かな? 午後もいけそうかい?」
「は、はい! もちろんです!!」
「無理はダメだよ?」

 心配そうな顔でそう言うゆめか。

 そしてマリアは首を振り、

「無理はしていません。ただ……」

 ゆめかを見据えた。

「ただ?」
「白銀さんって本当にすごい方なんだって、改めて感じたんです」
「あはは。それはありがとう。嬉しい言葉だよ」

 そう言って微笑むゆめか。

「私も、なれるでしょうか」
「ん?」
「白銀さんのようなカウンセラーに……」

 マリアは俯きながらそう言った。

「私みたいになる必要はないさ」

 その言葉にはっとして顔を上げ、瞠目するマリア。

「マリア君はマリア君らしいカウンセラーになればいい。君の優しさで、いろんな人たちを救ってあげたらいいんだよ」
「私……自信がなくて」

 自分らしいって何だろう――

「大丈夫。大丈夫だから――私は、マリア君の優しさを知っている。愛情を知っている。それで救われた子だっていたんだろう?」

 そう言われたマリアはふと、シロの顔を思い出す。

 シロがそうであったらいいな――マリアはそう思いながら、「はい!」と答えたのだった。

「うん、素敵な笑顔だ。もう大丈夫そうだね」

 ゆめかは笑顔でそう言った。

「ありがとうございます。やっぱり白銀さんは、私の尊敬するカウンセラーですね」
「ははは。ありがとう」

 それからマリアは残っていたバジルパスタを綺麗に食べ終え、午後もゆめかに同行して子供たちの部屋を周ったのだった。



 ――1日目、終了後。

「今日はお疲れ様。あとは部屋でゆっくりしてくれればいいから」

 ゆめかは笑顔でマリアにそう告げた。

「白銀さんはまだお仕事ですか?」
「ああ、別件でちょっとね!」
「じゃあ、私も――」
「あ、ああ。その件はカウンセリングとは関係ない仕事なんだ。だから大丈夫だよ」
「は、はい……」

 困った顔で言うゆめかに、マリアは首を傾げた。

 白銀さんはきっと忙しい人なんだな――

 そう思うことで、マリアはそれ以上のことを考えるのはやめたのだった。

「それじゃ、また明日! 夕食はカフェで食べるもよし。外に行くも良し! もし外に行くのなら、遅くならないように帰ってくるんだよ。きっとキリヤ君が心配するからね」
「はい」
「じゃあ、お疲れ様!」

 そう言ってゆめかはマリアを置いてどこかへ行ってしまった。

「外に行ってもいいっていっていたけど……」

 そう呟いたマリアは廊下の窓から外を見つめた。

「出かけたら、迷子になりそう……カフェで済ませよう」

 そしてマリアはカフェへ向かった。



 ――カフェにて。

「どこに座ろう……」

 マリアがそう呟き、キョロキョロしていると、

「あ、マリア!!」

 そう言ってカフェの中央にある席からキリヤは手を振っていた。そしてその隣には、呆れ顔の優香もいた。

 キリヤ、来てたんだ――

 そう思いながら、マリアはキリヤたちのいる席へと向かう。

「マリア、お疲れ様! 初日はどうだった?」
「うん。大丈夫だったよ」
「白銀さんから厳しいこととか言われなかった?」

 心配そうな顔でそう言うキリヤ。

「うん。ずっと優しかった」
「……やっぱりマリアだからなのかな」
「え?」
「あ、何でもない! こっちの話!!」

 キリヤはそう言ってはぐらかす。

 私だからって、どういう事なんだろう? やっぱり外部の人間だからってことかな――

 そう思いながら首を傾げるマリア。

 それから急に優香が咳ばらいをして、

「――今から夕食なら、ご一緒にいかがです?」

 笑顔でマリアにそう言った。

「うん!」

 それからマリアはカウンターでロコモコ丼を購入し、キリヤたちのいる席で夕食を摂り始めた。

「……そういえば、白銀さんはまだお仕事って言っていたけど、キリヤたちはもうお仕事終わったの?」
「あ、うん。僕たちは今日、訓練日だったからね!」
「訓練……?」

 訓練って何の訓練? それに、キリヤたちが普段どんな仕事をしているのかを私は知らないな――

 そんなことを思いながら、キリヤをボーっと見つめるマリア。

 それから優香はキリヤの方を見ながら、「ごほんっ」と何かを訴え掛けるような咳ばらいをした。

「あ、あの……えっと。避難訓練の日だったんだ! あははは!」

 訓練ってそう言うことだったんだ。納得――

「そうなんだね。お疲れ様」

 マリアはそう言って微笑んだ。

「ありがとう!」

 キリヤは嬉しそうな顔でそう言った。

「相変わらずですね、キリヤ君は」
「は!? 相変わらずって何が!!」
「いえ。桑島さんのことが本当に大好きなんだなと」

 ニヤリと笑いながらそう言う優香。

「もう、からかわないでよ!!」
「うふふ」

 2人のやりとりを微笑ましい笑顔で見守るマリア。そして、

「いつ結婚するの?」

 キリヤたちの顔をまっすぐに見ながらマリアはそう言った。

「ぼ、僕たちはまだそんな――」
「そうです。まだ先の事なので!!」

 キリヤたちは頬を赤らめながらそう答えた。

 もう夫婦みたいな会話に見えたんだけどな。そっか、まだなんだ――少し残念な気持ちになりつつ、その時を楽しんで待つことにしたマリアだった。



 夕食後、マリアは用意してもらった個室で過ごしていた。

「あっという間の一日だったな……」

 マリアはそう呟きながら、ボーっとベッドで寝転がっていた。

「私にしかなれないカウンセラー、か」

 それからマリアは布団に顔を埋める。

「私、大丈夫かな……」

 すると、マリアのスマホから通知音が響いた。

「何だろう――あ!」

 スマホを手に取り、その通知音の正体を知ったマリアは笑顔になる。

「結衣、頑張ってるんだ」

 結衣から来たメッセージには、声優事務所への所属が決まったことが記されていた。

 ――結衣だけじゃない。キリヤと優香、真一としおんも……みんな、夢や目標のために頑張ってるんだ。

「私も、頑張りたい。みんなと肩を並べられるように」

 それからマリアは気持ちを入れ替え、夜を明かしたのだった。
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