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第10章 未来へ繋ぐ想い

第82話ー⑦ S級クラスの出来事

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 ――レクリエーション終了後。

 グラウンドに集まる生徒たち。

 そして生徒たちの前に立った暁は、

「よし、じゃあ結果は剛チームの勝利だな!」

 と笑顔で伝えた。

「やったな、水蓮! 実来!!」
「わーい!!」「やったー!!」

 そう言って剛たちはハイタッチをした。

「まあ、織姫たちも頑張った! お疲れ様!!」

 暁が笑顔でそう言うと、

「……策略が甘かったかもしれませんね」
「いえ、僕も大事なところで判断が遅かったかもしれません」
「それを言うなら、俺の力不足がな……」

 織姫たちはため息交じりにそう呟いていた。

「今回はダメだったかもしれないけど、次はいい結果になるさ! 大切なのは、なぜ今回うまくいかなかったのかってことと、それを次にどう繋げるかだろ?」

 暁が笑顔でそう言うと、織姫と狂司は肩を落とし、

「はい……」

 と答えたのだった。

「ローレンスも初めてなのに、頑張ったな! どうだった??」
「遊びで能力を使ったことはなかったから、なんだか新鮮だった。それと――」

 ローレンスは狂司の方を見る。

「?」
「少しだけ、狂司と仲良くなりたいって思った」
「おお、そうか! 終わってから、良い方向に気持ちが変わっているのなら、俺的には大満足だ!」

 暁はそう言って微笑んだ。

 そんな暁を見た狂司は、

「今回は僕とローレンス君を仲良くさせるために仕組んだんですか?」

 腕を組みながらそう尋ねた。

「まあ、それもある! もう一つは実来にもレクに参加してほしかったってことだな!」
「え? 私……?」

 実来は唐突にそう言われ、きょとんとした顔をする。

「ああ。だって、実来は自分の能力嫌いだろ?」
「ま、まあ……あんまり良い能力ではないからね。好きにはなれない、かな」

 実来はしょぼんとした顔でそう言った。

「あはは。でも、使い方次第でポジティブな力になるってことはわかったな?」
「うん。単体で見れば気持ち悪い能力だけど、でも……仲間と一緒なら、自分以上の力になるんだなって思った。ここに来て、よかったって思えたよ!」

 そう言ってニッと笑う実来。

 そうですか、実来もローレンスさんも今回のレクリエーションで気持ちに変化があったんですね。でも、私は――?

 そして狂司の方を見る織姫。

 彼のことがわからないまま。先日はひどいことを言ってきたくせに、さっきは優しいことを言ってきた。そして私は彼とどうありたいのか、それもわからない――

 それから目が合う織姫と狂司。

 すると狂司は織姫の隣にやってくると、

「さっきの話の続きは後ほど」

 そう言って微笑んだ。

「はい……」

 ローレンスさんと何があったのでしょう。それを知ってしまった私は、彼と今まで通りの関係でいられるのかな――

 そして生徒たちは建物の中に戻って行った。



 午後の授業を終えた織姫は、いつも狂司と話し合っている食堂に来ていた。

「まだかかりそうかな……」

 そう言って椅子に座る織姫。

「そういえば、ここで昨夜――」

 織姫はそう呟き、昨夜の出来事を思い返していた。


 * * *


 織姫は大浴場を出た後、食堂の明かりが見えると狂司が夕食を摂っているのではないかと思い、食堂をそっと覗き込んだ。

 するとそこには狂司だけではなく実来の姿もあり、2人は楽しそうに会話をしているようだった。

『如月さんは、意外と良いこと言うんですね』
『意外とは余計じゃない――?』

 なんだか楽しそう。私と話していても烏丸君があんな楽しそうに笑ったことなんて――

 それから織姫は静かに食堂の前から立ち去ったのだった。


 * * *


「私には何も話してくれないのに……やっぱり実来のことを特別に思っているのでしょうか」

 織姫はそう言って俯いた。

「すみません、お待たせしました」

 その声を聞き、顔を上げる織姫。

「あ……」
「? どうしました?」

 驚く織姫の顔を見た狂司は首を傾げる。

「別に。それで……さっきのローレンスさんとのことを教えてくれるのでしょう」

 織姫は淡々とそう言った。
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