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第10章 未来へ繋ぐ想い
第82話ー② S級クラスの出来事
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翌日、研究所から一台の車がやってきて、その中からゆめかが降りてきた。
「やあ、暁先生! 調子はどうだい?」
「ええ、いつも通りですよ」
「そうか、そうか」
ニコニコと笑いながらそう言うゆめか。
「お姉さん、こんにちは!」
水蓮はそう言って暁の後ろからひょこっと顔を出す。
「ああ、水蓮。大きくなったね」
「うん! スイ、もう大人なので」
「あはは! そうか。水蓮ももう小学生だったよね。うんうん」
そう言って水蓮の頭を撫でるゆめか。
「お姉さん、お仕事頑張ってね! スイはお姉さんを応援しています!!」
「あはは、ありがとう。頑張るよ! 水蓮もお勉強頑張って」
「はい!!」
「じゃあ私はこれで。ローレンス君、そろそろ車を降りたらどうだい?」
ゆめかは車の中に向かってそう言った。
そういえば、いつまで経っても出てこないなとは思っていたけど――
「恥ずかしがり、なんですか?」
「そういうわけじゃないさ。おーい」
「き、聞こえてるって!」
そう言って顔を出すローレンスと呼ばれたツンツン頭の少年。
「ローレンス……?」
なんだか名前の割に顔は日本人だな――
そう思いながら顔を出したローレンスを見つめる暁。
「そういう反応されると思ったから顔を出すのが嫌だったんだって!」
「あははは! 暁先生は特にわかりやすいからね!」
「それ、馬鹿にしてませんか?」
暁は笑うゆめかの顔を見て、唇を尖らせながらそう言った。
「それだけ素直だってことだよ!」
「ま、まあそういうことにしておきます。えっと、じゃあローレンス。今日からよろしくな!」
「は、はい……」
そう言って車を降りるローレンス。
「じゃあ、あとはよろしく。またね、ローレンス君」
「あ、ありがとうございました」
そう言ってローレンスは頭を下げた。
『エヴィル・クイーン』にいたって聞いていたけど、ちゃんと礼儀正しいんだな――
暁はそんなことを思いながら、頭を下げるローレンスを見つめていた。
それからゆめかは研究所に戻って行った。
「そうだ、俺の名前は三谷暁。ここで教師をしているんだ!」
「スイの名前は、最上水蓮です。小学1年生です! よろしくお願いします!!」
暁と水蓮がそれぞれ挨拶をすると、ローレンスは軽く頭を下げてから「よろしくお願いします」と言った。
「よろしくな! じゃあ、さっそく行こうか。建物の中と生徒たちの紹介もしたいしな!」
暁が笑顔でそう言うと、
「はい、お願いします!」
とローレンスは、真面目な顔でそう言った。
そして暁たちは建物の中へと向かって行ったのだった。
――廊下にて。
「この先が職員室。そしてあっちが食堂だ」
暁は歩きながら施設内を説明して回っていた。
「へえ。意外とちゃんとしているんだな……」
ローレンスは感心しながらそう言って歩いていた。
「そんなに興味を持ってもらえて嬉しいよ! そういえば、ローレンスはここに来る前は研究所にいたんだろ? どう過ごしていたんだ?」
「ああ、えっと……」
困った顔でそう言うローレンス。
もしかして、自分が『エヴィル・クイーン』だったことを気にしているのか――?
「ローレンスが『エヴィル・クイーン』にいたことは所長から聞いているよ。だから話せる範囲で構わないから気兼ねなく話してくれ」」
「そうですか。えっと……俺は研究所襲撃事件の後から、研究所の奥の部屋で閉じ込められていたんです」
ローレンスは俯きながらそう言った。
「そう、か……」
まあその襲撃事件だったり、『ゼンシンノウリョクシャ』の隔離事件だったり。『エヴィル・クイーン』にはあまりいい印象がなかったから仕方がないか――
暁はそう思いながら、俯くローレンスを見つめた。
「でも研究所の偉い人が、暁先生のところなら安心だって言って、外に出ることができたんです。もう二度と出られないと思っていた外に。だから今度はちゃんとした人間になりたい。ここで勉強して、それでまともな人生を――って何言ってるんだろうな、俺ってば」
そう言って悲しそうに笑うローレンス。
このままじゃ、ローレンスは過去にしてしまった罪に押し潰されてしまいそうだ――暁はローレンスを見てそう思う。
「今までローレンスが何をしてきたのか、俺は知らない。だから俺はこれからのローレンスが全てだ」
「え……」
「この施設で何か一つでも大切なことを学んで、そして良い大人になれ、ローレンス。ここはそういう場所だからさ」
そう言って微笑む暁。
「……はい!」
ローレンスは笑顔でそう返した。
「じゃあ次、行こう! 食堂でみんなが待っているからさ」
そして暁たちは食堂へ向かった。
――食堂にて。
「おーい、連れてきたぞ」
「お疲れ、先生! 新入りは――」
そしてローレンスの顔を見た剛。
「ローレンス! 久しぶりだなあ!!」
剛はそう言ってローレンスの傍により、肩をバンバンと叩く。
「剛、知り合いだったのか」
「おう! 研究所の時以来だな!」
剛がそう言ってニッと笑うと、
「そう、だな」
元気がなさそうに答えるローレンス。
どのタイミングで剛とローレンスが出会ったのかはわからないけれど、おそらくさっき言っていた襲撃事件のことと関係があるんだろうな――
ローレンスの表情を見ながらそんなことを思う暁。
「いやあ、まさか本当に暁先生のところに来るなんてさ!」
「まあ、なりゆきではあるんだけどな」
「え? 剛がローレンスに俺のことを?」
「まあ、そんな感じだな!」
自慢げにそう言って笑う剛。
「あはは。確かに」
「そうか……」
その時の剛が何を言ってくれたのかはわからないけど、ローレンスと俺がこうして出逢うきっかけを作ってくれたんだな――
暁はそんなことを思い、微笑んだ。
「お久しぶりですね、えっと……ローリング君?」
狂司はローレンスの元にゆっくりと歩み寄りながら、笑顔でそう言った。
「お、お前――!」
そう言って狂司を睨むローレンス。
2人の空気感に静まり返る食堂。
この2人が出会えば空気が重くなることをなんとなく察していた暁は、
「過去は過去、今は今。そうだろ?」
ローレンスと狂司の顔を見てそう言った。
それから狂司はため息を吐くと、ニコッとローレンスに微笑んだ。
「まあ、先生の言葉には賛成です。今日からクラスメイトとしてよろしくお願いしますね、ロンリネス君?」
「ローレンスだって! それ、わかってやってるだろ!!」
「あははは!」
狂司は笑いながら食堂を出て行った。
「烏丸君!」
後ろで黙って見ていた織姫は、狂司を追って食堂を出て行った。
「あらら。織姫行っちゃったじゃん。まあいっか。私は如月実来! 宜しくね、ローランド? 君!」
「いや、だからローレンスだって! そんなホスト界の帝王みたいな名前で呼ぶなっ!!」
「あはは! 冗談だって! 宜しく、ローレンス君!!」
「よ、宜しく……」
疲弊した様子でそう言うローレンス。
まあ、食堂に来て早々に生徒たち絡まれて疲れたんだろうな――
そんなことを思いながら、暁は困り顔でローレンスを見つめる。
「そういえば、なんでローレンス? 絶対に日本人じゃん」
「あ、それは……」
「もしかして――」
「え!?」
ニヤリと笑う実来にはっとするローレンス。
「良いって、良いって。無理して言わなくてもわかってるから!!」
実来は腕を組み、そう言って「うんうん」と頷く。
「お前、何を知って……」
「ほら、あれでしょ? 左手に封印された力が――! ってやつ!!」
「違うっ!!」
「あははは!!」
実来は楽しそうに笑っていた。
そういえば、実来もだいぶ施設に馴染んできたな――
そんなことを思いながら、暁は実来を見つめる。
「ローレンスにも、早くここを好きになってもらいたいな」
暁は微笑みながらそう呟いたのだった。
「やあ、暁先生! 調子はどうだい?」
「ええ、いつも通りですよ」
「そうか、そうか」
ニコニコと笑いながらそう言うゆめか。
「お姉さん、こんにちは!」
水蓮はそう言って暁の後ろからひょこっと顔を出す。
「ああ、水蓮。大きくなったね」
「うん! スイ、もう大人なので」
「あはは! そうか。水蓮ももう小学生だったよね。うんうん」
そう言って水蓮の頭を撫でるゆめか。
「お姉さん、お仕事頑張ってね! スイはお姉さんを応援しています!!」
「あはは、ありがとう。頑張るよ! 水蓮もお勉強頑張って」
「はい!!」
「じゃあ私はこれで。ローレンス君、そろそろ車を降りたらどうだい?」
ゆめかは車の中に向かってそう言った。
そういえば、いつまで経っても出てこないなとは思っていたけど――
「恥ずかしがり、なんですか?」
「そういうわけじゃないさ。おーい」
「き、聞こえてるって!」
そう言って顔を出すローレンスと呼ばれたツンツン頭の少年。
「ローレンス……?」
なんだか名前の割に顔は日本人だな――
そう思いながら顔を出したローレンスを見つめる暁。
「そういう反応されると思ったから顔を出すのが嫌だったんだって!」
「あははは! 暁先生は特にわかりやすいからね!」
「それ、馬鹿にしてませんか?」
暁は笑うゆめかの顔を見て、唇を尖らせながらそう言った。
「それだけ素直だってことだよ!」
「ま、まあそういうことにしておきます。えっと、じゃあローレンス。今日からよろしくな!」
「は、はい……」
そう言って車を降りるローレンス。
「じゃあ、あとはよろしく。またね、ローレンス君」
「あ、ありがとうございました」
そう言ってローレンスは頭を下げた。
『エヴィル・クイーン』にいたって聞いていたけど、ちゃんと礼儀正しいんだな――
暁はそんなことを思いながら、頭を下げるローレンスを見つめていた。
それからゆめかは研究所に戻って行った。
「そうだ、俺の名前は三谷暁。ここで教師をしているんだ!」
「スイの名前は、最上水蓮です。小学1年生です! よろしくお願いします!!」
暁と水蓮がそれぞれ挨拶をすると、ローレンスは軽く頭を下げてから「よろしくお願いします」と言った。
「よろしくな! じゃあ、さっそく行こうか。建物の中と生徒たちの紹介もしたいしな!」
暁が笑顔でそう言うと、
「はい、お願いします!」
とローレンスは、真面目な顔でそう言った。
そして暁たちは建物の中へと向かって行ったのだった。
――廊下にて。
「この先が職員室。そしてあっちが食堂だ」
暁は歩きながら施設内を説明して回っていた。
「へえ。意外とちゃんとしているんだな……」
ローレンスは感心しながらそう言って歩いていた。
「そんなに興味を持ってもらえて嬉しいよ! そういえば、ローレンスはここに来る前は研究所にいたんだろ? どう過ごしていたんだ?」
「ああ、えっと……」
困った顔でそう言うローレンス。
もしかして、自分が『エヴィル・クイーン』だったことを気にしているのか――?
「ローレンスが『エヴィル・クイーン』にいたことは所長から聞いているよ。だから話せる範囲で構わないから気兼ねなく話してくれ」」
「そうですか。えっと……俺は研究所襲撃事件の後から、研究所の奥の部屋で閉じ込められていたんです」
ローレンスは俯きながらそう言った。
「そう、か……」
まあその襲撃事件だったり、『ゼンシンノウリョクシャ』の隔離事件だったり。『エヴィル・クイーン』にはあまりいい印象がなかったから仕方がないか――
暁はそう思いながら、俯くローレンスを見つめた。
「でも研究所の偉い人が、暁先生のところなら安心だって言って、外に出ることができたんです。もう二度と出られないと思っていた外に。だから今度はちゃんとした人間になりたい。ここで勉強して、それでまともな人生を――って何言ってるんだろうな、俺ってば」
そう言って悲しそうに笑うローレンス。
このままじゃ、ローレンスは過去にしてしまった罪に押し潰されてしまいそうだ――暁はローレンスを見てそう思う。
「今までローレンスが何をしてきたのか、俺は知らない。だから俺はこれからのローレンスが全てだ」
「え……」
「この施設で何か一つでも大切なことを学んで、そして良い大人になれ、ローレンス。ここはそういう場所だからさ」
そう言って微笑む暁。
「……はい!」
ローレンスは笑顔でそう返した。
「じゃあ次、行こう! 食堂でみんなが待っているからさ」
そして暁たちは食堂へ向かった。
――食堂にて。
「おーい、連れてきたぞ」
「お疲れ、先生! 新入りは――」
そしてローレンスの顔を見た剛。
「ローレンス! 久しぶりだなあ!!」
剛はそう言ってローレンスの傍により、肩をバンバンと叩く。
「剛、知り合いだったのか」
「おう! 研究所の時以来だな!」
剛がそう言ってニッと笑うと、
「そう、だな」
元気がなさそうに答えるローレンス。
どのタイミングで剛とローレンスが出会ったのかはわからないけれど、おそらくさっき言っていた襲撃事件のことと関係があるんだろうな――
ローレンスの表情を見ながらそんなことを思う暁。
「いやあ、まさか本当に暁先生のところに来るなんてさ!」
「まあ、なりゆきではあるんだけどな」
「え? 剛がローレンスに俺のことを?」
「まあ、そんな感じだな!」
自慢げにそう言って笑う剛。
「あはは。確かに」
「そうか……」
その時の剛が何を言ってくれたのかはわからないけど、ローレンスと俺がこうして出逢うきっかけを作ってくれたんだな――
暁はそんなことを思い、微笑んだ。
「お久しぶりですね、えっと……ローリング君?」
狂司はローレンスの元にゆっくりと歩み寄りながら、笑顔でそう言った。
「お、お前――!」
そう言って狂司を睨むローレンス。
2人の空気感に静まり返る食堂。
この2人が出会えば空気が重くなることをなんとなく察していた暁は、
「過去は過去、今は今。そうだろ?」
ローレンスと狂司の顔を見てそう言った。
それから狂司はため息を吐くと、ニコッとローレンスに微笑んだ。
「まあ、先生の言葉には賛成です。今日からクラスメイトとしてよろしくお願いしますね、ロンリネス君?」
「ローレンスだって! それ、わかってやってるだろ!!」
「あははは!」
狂司は笑いながら食堂を出て行った。
「烏丸君!」
後ろで黙って見ていた織姫は、狂司を追って食堂を出て行った。
「あらら。織姫行っちゃったじゃん。まあいっか。私は如月実来! 宜しくね、ローランド? 君!」
「いや、だからローレンスだって! そんなホスト界の帝王みたいな名前で呼ぶなっ!!」
「あはは! 冗談だって! 宜しく、ローレンス君!!」
「よ、宜しく……」
疲弊した様子でそう言うローレンス。
まあ、食堂に来て早々に生徒たち絡まれて疲れたんだろうな――
そんなことを思いながら、暁は困り顔でローレンスを見つめる。
「そういえば、なんでローレンス? 絶対に日本人じゃん」
「あ、それは……」
「もしかして――」
「え!?」
ニヤリと笑う実来にはっとするローレンス。
「良いって、良いって。無理して言わなくてもわかってるから!!」
実来は腕を組み、そう言って「うんうん」と頷く。
「お前、何を知って……」
「ほら、あれでしょ? 左手に封印された力が――! ってやつ!!」
「違うっ!!」
「あははは!!」
実来は楽しそうに笑っていた。
そういえば、実来もだいぶ施設に馴染んできたな――
そんなことを思いながら、暁は実来を見つめる。
「ローレンスにも、早くここを好きになってもらいたいな」
暁は微笑みながらそう呟いたのだった。
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