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第10章 未来へ繋ぐ想い
第80話ー① 最後の足取り
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実来と織姫が仲直りして数日が経った頃。
暁の元へ再び優香から連絡が入った。
「――もしもし? キリヤ、見つかったのか!?」
『すみません。未だに手がかりなしです……』
優香は悲し気にそう言った。
「そうか……」
『それで、今回は先生にお願いしたいことがあって――』
「お願いしたいこと?」
『はい。今度、神宮寺さんを連れて、研究所に来てもらえませんか? 他の生徒たちには内緒で』
「ああ、わかった」
優香がそう言うのは、おそらくキリヤが行方不明になっていることを悟られない為なんだろうな――
そう思う暁。
『じゃあまた日付がわかったら、教えてください』
「おう」
そして通話を終えた暁。
「それにしても、奏多と一緒にってどういうことなんだろう……とりあえず、奏多に連絡を入れておくか」
それから暁は奏多に連絡をし、次の日曜日に研究所へ行くことになった。
――日曜日。
暁は生徒たちに奏多と出かけるから施設を開けると伝えて、研究所からの送迎車に乗った。
「奏多と付き合っていなかったら、生徒たちにあんな理由を言えなかっただろうな」
「付き合って、じゃないですよね? 婚約して、です」
奏多は笑顔でそう言った。
「あはは……そう、だったな」
暁は恥ずかしそうにそう言った。
「でも、優香さんの頼み事って何なのでしょう」
「だな……たぶん、キリヤのことなんだろうけど」
「はい。優香さん、最近はずっと一人でキリヤ君のことを探していて……そろそろ過労で倒れてしまうんじゃないかってみんな心配していたところなんですよ」
唐突に掛けられた声に奏多は首を傾げる。
「? えっと、あなたは?」
「ああ、お会いするのは初めてでしたね。僕は笹崎八雲です。研究所でドライバーとして雇われています。そしてキリヤ君たちと一緒に働いているものです」
八雲はルームミラー越しに微笑みながらそう言った。
「そしていつも俺が研究所へ行く時に送迎をしてくれる人なんだ」
「はい!」
「なるほど。それは失礼いたしました。私は神宮寺奏多と申します。暁さんとは婚約させてもらっております」
奏多がそう言って会釈をすると、
「ははは。聞いていましたよ!」
八雲はそう言って笑った。それから真剣な表情をして、
「……先生、キリヤ君と優香さんのこと、頼みます。僕は何もできませんから。先生が頼みの綱です」
八雲はルームミラー越しに暁の目を見てそう言った。
「はい……俺にできることがあれば、精一杯やります!!」
笑顔でそう答える暁だった。
「ありがとうございます! 本当は僕ら『グリム』の問題なのに……すみません」
「いいんですよ。優香もキリヤも自分にとって大切な存在ですから」
「幸せなんですね、2人は。こんな素敵な先生に出会えて」
「そうだといいですけどね!」
暁はそう言って笑った。
「じゃあ、もうすぐ到着しますよ!」
「はい!!」
――研究所。
車が到着すると、建物の中から優香が出てきた。
「暁先生、神宮寺さん。ご足労いただきありがとうございます」
優香はそう言って頭を下げる。
「いいんだよ。生徒の頼みなんだから! ……でも、少し痩せたんじゃないか? ちゃんと食べてるか??」
「ええ、まあ……」
そう言えば、さっき笹崎さんが過労で倒れそうだって言っていたっけな。たぶん、それだけじゃないんだと思うけれど――
「優香さんが元気じゃないと、キリヤが見つかった時に心配されますよ」
「それはそれで、嬉しいかもしれません……」
そう言って「えへへ」と笑う優香。
それから我に返った優香は首を横に振ると、
「……そうじゃなくて! とりあえず中へ!! 話はそれからです」
暁たちの方を見てそう言った。
奏多はそんな優香を見て、「うふふ」と楽しそうに笑っていた。
それから暁と奏多は優香と共に研究所の中へと向かったのだった。
――会議室。
「それでお願いなんですが……神宮寺家の力を借りたいなと思って」
「我が家のですか?」
奏多はそう言ってきょとんとした顔をする。
「ええ。以前、先生が誘拐された事件がありましたよね。その時に使っていた衛星を、と思って――」
「ああ、そうか! あれならDNAからその本人の居場所を探知できるってやつだったよな!!」
手をポンっと打ちながら暁はそう言った。
「なるほど……わかりました! 喜んでご協力致します。キリヤは私にとっても大事な家族の一人ですからね!」
奏多は笑顔で優香にそう告げた。そして、
「ありがとうございます……」
そう言って目を潤ませる優香。
「……でも、キリヤはどこへ行ったんだろうな。それにこんなに連絡がないなんて」
「そうなんですよ。マメなキリヤ君なら絶対に連絡をくれるはずなのに。それに、このメモが机に残されたっきりで――」
優香は暁にそう言って1枚のメモを差し出す。
「これ、読んでもいいのか?」
「ま、まあ……少し恥ずかしいですが」
そして暁はそのメモを受け取って読む。
そこには、優香が無事に帰ってきたことへの安堵の想いとこれからしばらく留守にするということ書かれていた。
「この、やることってなんだろうな……」
首をかしげてそう言った。
「それにここ! 『帰ったら優香に伝えたいことがある』ですって! 何なのでしょう!!」
奏多は嬉しそうにそう言った。
「神宮寺さん、今そこは重要な部分ではありません!!」
優香は顔を赤くしてそう言った。
「まあとにかく。今、キリヤはどこかで何かをしているってことだよな。でもその場所がわからないと……」
「ええ。スマホの電源もここを出る時に落としていったみたいで、それ以降の足取りがわからないんです」
「なんでそんなことを?」
暁は「うーん」と言いながら考えるが、答えはすぐに出なかった。
「たぶん行き場所を特定されたくない理由があるんだと思うんですよね。私が心配して探しにくると思ったんでしょうか」
「優香さんが来ないようにしたということは、その場所が危険なところの可能性があるってことですよね」
奏多は真剣な顔でそう言った。
「え……まさか何かに巻き込まれて!? 大丈夫かな、キリヤ君」
不安な表情をする優香。
「大丈夫だ! なんて気休めにしかならないけど、信じて待っていてってキリヤも書き残しているだろう? だから無事だって信じるしかない、よな!!」
暁は笑顔でそう言った。
「そう、ですね……わかりました。キリヤ君を信じます! だから、神宮寺さん! 宜しくお願いします」
優香はそう言って奏多に頭を下げた。
「ええ。お任せください。優香さんのため、キリヤのために。この神宮寺奏多が一肌脱ぎましょう!」
「ありがとうございます!!」
それから優香からキリヤの頭髪を受け取り、暁たちは研究所を後にしたのだった。
――車内。
「キリヤ、見つかるといいな」
「……たぶん見つからないんじゃないかと私は思うのです」
奏多は暁にしか聞こえない小さな声でそう言った。
「え……?」
「さっき優香さんも言っていたでしょう。キリヤが連絡してこないなんてって。きっと連絡できない場所にいるんだと思います」
「でも、それじゃ……」
「見つからないけれど、最後にどこへ向かったかはきっとわかります。だからそこにいけば、きっと手掛かりも見つかりましょう」
「ああ、そうだな!」
それから奏多を神宮寺家に送り、暁も施設に帰宅した。
「神宮寺家の力を信じるしかないか……」
そして暁は自室に戻ったのだった。
暁の元へ再び優香から連絡が入った。
「――もしもし? キリヤ、見つかったのか!?」
『すみません。未だに手がかりなしです……』
優香は悲し気にそう言った。
「そうか……」
『それで、今回は先生にお願いしたいことがあって――』
「お願いしたいこと?」
『はい。今度、神宮寺さんを連れて、研究所に来てもらえませんか? 他の生徒たちには内緒で』
「ああ、わかった」
優香がそう言うのは、おそらくキリヤが行方不明になっていることを悟られない為なんだろうな――
そう思う暁。
『じゃあまた日付がわかったら、教えてください』
「おう」
そして通話を終えた暁。
「それにしても、奏多と一緒にってどういうことなんだろう……とりあえず、奏多に連絡を入れておくか」
それから暁は奏多に連絡をし、次の日曜日に研究所へ行くことになった。
――日曜日。
暁は生徒たちに奏多と出かけるから施設を開けると伝えて、研究所からの送迎車に乗った。
「奏多と付き合っていなかったら、生徒たちにあんな理由を言えなかっただろうな」
「付き合って、じゃないですよね? 婚約して、です」
奏多は笑顔でそう言った。
「あはは……そう、だったな」
暁は恥ずかしそうにそう言った。
「でも、優香さんの頼み事って何なのでしょう」
「だな……たぶん、キリヤのことなんだろうけど」
「はい。優香さん、最近はずっと一人でキリヤ君のことを探していて……そろそろ過労で倒れてしまうんじゃないかってみんな心配していたところなんですよ」
唐突に掛けられた声に奏多は首を傾げる。
「? えっと、あなたは?」
「ああ、お会いするのは初めてでしたね。僕は笹崎八雲です。研究所でドライバーとして雇われています。そしてキリヤ君たちと一緒に働いているものです」
八雲はルームミラー越しに微笑みながらそう言った。
「そしていつも俺が研究所へ行く時に送迎をしてくれる人なんだ」
「はい!」
「なるほど。それは失礼いたしました。私は神宮寺奏多と申します。暁さんとは婚約させてもらっております」
奏多がそう言って会釈をすると、
「ははは。聞いていましたよ!」
八雲はそう言って笑った。それから真剣な表情をして、
「……先生、キリヤ君と優香さんのこと、頼みます。僕は何もできませんから。先生が頼みの綱です」
八雲はルームミラー越しに暁の目を見てそう言った。
「はい……俺にできることがあれば、精一杯やります!!」
笑顔でそう答える暁だった。
「ありがとうございます! 本当は僕ら『グリム』の問題なのに……すみません」
「いいんですよ。優香もキリヤも自分にとって大切な存在ですから」
「幸せなんですね、2人は。こんな素敵な先生に出会えて」
「そうだといいですけどね!」
暁はそう言って笑った。
「じゃあ、もうすぐ到着しますよ!」
「はい!!」
――研究所。
車が到着すると、建物の中から優香が出てきた。
「暁先生、神宮寺さん。ご足労いただきありがとうございます」
優香はそう言って頭を下げる。
「いいんだよ。生徒の頼みなんだから! ……でも、少し痩せたんじゃないか? ちゃんと食べてるか??」
「ええ、まあ……」
そう言えば、さっき笹崎さんが過労で倒れそうだって言っていたっけな。たぶん、それだけじゃないんだと思うけれど――
「優香さんが元気じゃないと、キリヤが見つかった時に心配されますよ」
「それはそれで、嬉しいかもしれません……」
そう言って「えへへ」と笑う優香。
それから我に返った優香は首を横に振ると、
「……そうじゃなくて! とりあえず中へ!! 話はそれからです」
暁たちの方を見てそう言った。
奏多はそんな優香を見て、「うふふ」と楽しそうに笑っていた。
それから暁と奏多は優香と共に研究所の中へと向かったのだった。
――会議室。
「それでお願いなんですが……神宮寺家の力を借りたいなと思って」
「我が家のですか?」
奏多はそう言ってきょとんとした顔をする。
「ええ。以前、先生が誘拐された事件がありましたよね。その時に使っていた衛星を、と思って――」
「ああ、そうか! あれならDNAからその本人の居場所を探知できるってやつだったよな!!」
手をポンっと打ちながら暁はそう言った。
「なるほど……わかりました! 喜んでご協力致します。キリヤは私にとっても大事な家族の一人ですからね!」
奏多は笑顔で優香にそう告げた。そして、
「ありがとうございます……」
そう言って目を潤ませる優香。
「……でも、キリヤはどこへ行ったんだろうな。それにこんなに連絡がないなんて」
「そうなんですよ。マメなキリヤ君なら絶対に連絡をくれるはずなのに。それに、このメモが机に残されたっきりで――」
優香は暁にそう言って1枚のメモを差し出す。
「これ、読んでもいいのか?」
「ま、まあ……少し恥ずかしいですが」
そして暁はそのメモを受け取って読む。
そこには、優香が無事に帰ってきたことへの安堵の想いとこれからしばらく留守にするということ書かれていた。
「この、やることってなんだろうな……」
首をかしげてそう言った。
「それにここ! 『帰ったら優香に伝えたいことがある』ですって! 何なのでしょう!!」
奏多は嬉しそうにそう言った。
「神宮寺さん、今そこは重要な部分ではありません!!」
優香は顔を赤くしてそう言った。
「まあとにかく。今、キリヤはどこかで何かをしているってことだよな。でもその場所がわからないと……」
「ええ。スマホの電源もここを出る時に落としていったみたいで、それ以降の足取りがわからないんです」
「なんでそんなことを?」
暁は「うーん」と言いながら考えるが、答えはすぐに出なかった。
「たぶん行き場所を特定されたくない理由があるんだと思うんですよね。私が心配して探しにくると思ったんでしょうか」
「優香さんが来ないようにしたということは、その場所が危険なところの可能性があるってことですよね」
奏多は真剣な顔でそう言った。
「え……まさか何かに巻き込まれて!? 大丈夫かな、キリヤ君」
不安な表情をする優香。
「大丈夫だ! なんて気休めにしかならないけど、信じて待っていてってキリヤも書き残しているだろう? だから無事だって信じるしかない、よな!!」
暁は笑顔でそう言った。
「そう、ですね……わかりました。キリヤ君を信じます! だから、神宮寺さん! 宜しくお願いします」
優香はそう言って奏多に頭を下げた。
「ええ。お任せください。優香さんのため、キリヤのために。この神宮寺奏多が一肌脱ぎましょう!」
「ありがとうございます!!」
それから優香からキリヤの頭髪を受け取り、暁たちは研究所を後にしたのだった。
――車内。
「キリヤ、見つかるといいな」
「……たぶん見つからないんじゃないかと私は思うのです」
奏多は暁にしか聞こえない小さな声でそう言った。
「え……?」
「さっき優香さんも言っていたでしょう。キリヤが連絡してこないなんてって。きっと連絡できない場所にいるんだと思います」
「でも、それじゃ……」
「見つからないけれど、最後にどこへ向かったかはきっとわかります。だからそこにいけば、きっと手掛かりも見つかりましょう」
「ああ、そうだな!」
それから奏多を神宮寺家に送り、暁も施設に帰宅した。
「神宮寺家の力を信じるしかないか……」
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