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第10章 未来へ繋ぐ想い
第79話ー⑩ 私の守りたかった場所
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「実来。この世界で実来の友達になる人間はその級友だけじゃないと俺は思う」
「はい……」
「だから、また探せばいい。きっと実来ならすぐにできるさ」
暁はそう言って笑った。
「うん。そうだと、いいな」
そう言って実来も笑った。
「それに、ここにもいるだろう? 友達候補がたくさん」
「でも、本星崎さんが……」
実来はそう言って、悲し気な顔をした。
「ああは言ってたけど、たぶん織姫も後悔していると思うぞ。かっとなって言うつもりなんてなかったことを言ってしまったってところかな」
「そうなのかな」
「それに俺もこの間、織姫を怒らせちゃったからな。あはは」
「ふふっ。先生でも失敗するんだね」
「そりゃな。俺もまだまだだからさ」
そして実来は、抱えていた足を伸ばす。
「はあ。なんか私、ずっとつまらないことで悩んでいたんだなあ」
「ははは! でも初めての友達なら大事したいって思うのが普通だよな」
「でしょ? でも失敗したなあ……ずっと違和感はあったのに、見ない振りしてさ。はあ……時間を無駄にしたかな」
ため息交じりにそう言って、天を仰ぐ実来。
「そんなことないさ。人生まだまだこれからだろ?」
「うん!」
実来は満面の笑みでそう答えた。
ここに来て、初めてこんなに笑う実来を見たかもしれないな。ずっと退屈そうな顔をしていたし。確か真一も、しおんと会うまではずっと退屈そうで全然笑わなかったっけ――
「そういえば実来って『はちみつとジンジャー』のファンだったよな!」
「何、いきなり……?」
実来がそう言って首を傾げると、
「いや。真一はしおんに会うまで、ずっと孤高の存在だったなあと思って」
暁は懐かしそうにそう言った。
「私は孤高じゃなかったけどね! それでそれで!?」
「なかなか食いつくな……」
「ファンとしては、最重要項目でしょ? もっと教えてよ!!」
前のめりでそう言う実来。
本当に『はちみつとジンジャー』が好きなんだな。なんだか、俺も嬉しく思うよ――
そう思いながら、ふふっと笑う暁。それから遠くから聞える始業ベルに暁ははっとして、今日が平日だったことを思い出す。
「ああ、わかった。でもその前に、やらなきゃいけないことがあるよな?」
「え? あ、本星崎さんに謝るってことだよね……」
実来はそう言って俯いた。
「それもそうだが。今日は、平日だな?」
「うん! あ……授業っ!!」
「そうだ! 謝るのも『はちみつとジンジャー』の話もまた昼食の時にな」
「……うん。わかったよ」
実来はそう言って笑った。
それから暁は実来と共に建物へ入っていった。
そしてそれぞれ授業の準備をしてから教室へと向かったのだった。
* * *
――食堂にて。
午前の授業を終え、生徒たちは食堂で昼食を摂っていた。
織姫は狂司と共に昼食をとっていると、そこにトレーを持った実来が織姫の目の前に座る。
「……本星崎さん。さっきはその……ごめんなさい。私、ひどいことを言った」
「……」
織姫は無言のまま、食事を続けていた。
まだ怒ってるかな。そうだよね。私はそれだけのことを言っちゃったもんね――
そう思いながら、実来はめげずに声を掛け続ける。
「謝っただけで許してもらおうなんて思わない。どれだけ私のことを悪く言ってもいい。だから……その……お友達になりませんか」
実来がそう言うと、織姫は目を丸くして実来を見た。
「お友達になろうだそうですよ、織姫さん?」
狂司は笑いながら織姫にそう言うと織姫は箸を止めて、箸置きにそっと置く。
「え、本星崎さん……?」
「織姫でいい……友達になるのでしょう」
織姫は赤くして、下を向きながらそう言った。
「うん! ありがとう、織姫!! 私のことも実来って呼んでよ!!」
実来が笑顔でそう言うと、
「わかりました……実来さん」
織姫は顔を上げてそう呼んだ。
「違う違う! 実来!!」
実来の要望に織姫は困った顔をしてから、
「み、実来……」
小さな声でそう言った。
「うん、OK!」
「じゃあ僕も――」
「烏丸君はダメ。女の子じゃないから」
「それは残念です」
やれやれと言った顔でそう言う狂司。そんな狂司を見た織姫は、
「じゃあ烏丸君、私のことも苗字呼びに変えてください。いつの間にか勝手に名前で呼んでいましたよね」
平坦な口調でそう言った。
「あれ、OKかと思っていたんですが、違ったんですか? それにさっき――」
「うわあああ! わかりました!! いいです、織姫でいいです!!」
耳まで顔を赤くして、狂司の言葉を遮る織姫。
「え、さっきって何!?」
「実来には関係ないですっ!」
「実は――」
「烏丸君!!」
「あははは!」
それから実来は織姫と狂司と3人で昼食を楽しんだのだった。
私が守りたいと思っていた場所は、脆くそして曖昧な場所だった。
でもこれから本当に守っていきたい場所を私は見つけたよ。
無理やり繋ぎ止めないとなくなってしまうような友情は、きっと友情なんかじゃなかったんだ。
今回のことで私はそれに気が付いたんだと思う。
これから守りたい私の居場所。そしてようやく出会えたかもしれない本当の友達。
私の人生、これからってこと!!
「織姫~、今夜、部屋行ってもいい? 一緒の『はちみつとジンジャー』の動画観よ!」
「え? 観ませんよ! それと、そういうのは暁先生と観てください。興味ないです!!」
「そんなこと言わず~いいじゃん」
「……もう、仕方ない。今夜だけですよ」
「やった!!」
実来は、少しずつ憧れていた学園生活を楽しんでいくことになる。
そしてこの出会いが、実来の未来を明るく照らすことになるのだった。
「はい……」
「だから、また探せばいい。きっと実来ならすぐにできるさ」
暁はそう言って笑った。
「うん。そうだと、いいな」
そう言って実来も笑った。
「それに、ここにもいるだろう? 友達候補がたくさん」
「でも、本星崎さんが……」
実来はそう言って、悲し気な顔をした。
「ああは言ってたけど、たぶん織姫も後悔していると思うぞ。かっとなって言うつもりなんてなかったことを言ってしまったってところかな」
「そうなのかな」
「それに俺もこの間、織姫を怒らせちゃったからな。あはは」
「ふふっ。先生でも失敗するんだね」
「そりゃな。俺もまだまだだからさ」
そして実来は、抱えていた足を伸ばす。
「はあ。なんか私、ずっとつまらないことで悩んでいたんだなあ」
「ははは! でも初めての友達なら大事したいって思うのが普通だよな」
「でしょ? でも失敗したなあ……ずっと違和感はあったのに、見ない振りしてさ。はあ……時間を無駄にしたかな」
ため息交じりにそう言って、天を仰ぐ実来。
「そんなことないさ。人生まだまだこれからだろ?」
「うん!」
実来は満面の笑みでそう答えた。
ここに来て、初めてこんなに笑う実来を見たかもしれないな。ずっと退屈そうな顔をしていたし。確か真一も、しおんと会うまではずっと退屈そうで全然笑わなかったっけ――
「そういえば実来って『はちみつとジンジャー』のファンだったよな!」
「何、いきなり……?」
実来がそう言って首を傾げると、
「いや。真一はしおんに会うまで、ずっと孤高の存在だったなあと思って」
暁は懐かしそうにそう言った。
「私は孤高じゃなかったけどね! それでそれで!?」
「なかなか食いつくな……」
「ファンとしては、最重要項目でしょ? もっと教えてよ!!」
前のめりでそう言う実来。
本当に『はちみつとジンジャー』が好きなんだな。なんだか、俺も嬉しく思うよ――
そう思いながら、ふふっと笑う暁。それから遠くから聞える始業ベルに暁ははっとして、今日が平日だったことを思い出す。
「ああ、わかった。でもその前に、やらなきゃいけないことがあるよな?」
「え? あ、本星崎さんに謝るってことだよね……」
実来はそう言って俯いた。
「それもそうだが。今日は、平日だな?」
「うん! あ……授業っ!!」
「そうだ! 謝るのも『はちみつとジンジャー』の話もまた昼食の時にな」
「……うん。わかったよ」
実来はそう言って笑った。
それから暁は実来と共に建物へ入っていった。
そしてそれぞれ授業の準備をしてから教室へと向かったのだった。
* * *
――食堂にて。
午前の授業を終え、生徒たちは食堂で昼食を摂っていた。
織姫は狂司と共に昼食をとっていると、そこにトレーを持った実来が織姫の目の前に座る。
「……本星崎さん。さっきはその……ごめんなさい。私、ひどいことを言った」
「……」
織姫は無言のまま、食事を続けていた。
まだ怒ってるかな。そうだよね。私はそれだけのことを言っちゃったもんね――
そう思いながら、実来はめげずに声を掛け続ける。
「謝っただけで許してもらおうなんて思わない。どれだけ私のことを悪く言ってもいい。だから……その……お友達になりませんか」
実来がそう言うと、織姫は目を丸くして実来を見た。
「お友達になろうだそうですよ、織姫さん?」
狂司は笑いながら織姫にそう言うと織姫は箸を止めて、箸置きにそっと置く。
「え、本星崎さん……?」
「織姫でいい……友達になるのでしょう」
織姫は赤くして、下を向きながらそう言った。
「うん! ありがとう、織姫!! 私のことも実来って呼んでよ!!」
実来が笑顔でそう言うと、
「わかりました……実来さん」
織姫は顔を上げてそう呼んだ。
「違う違う! 実来!!」
実来の要望に織姫は困った顔をしてから、
「み、実来……」
小さな声でそう言った。
「うん、OK!」
「じゃあ僕も――」
「烏丸君はダメ。女の子じゃないから」
「それは残念です」
やれやれと言った顔でそう言う狂司。そんな狂司を見た織姫は、
「じゃあ烏丸君、私のことも苗字呼びに変えてください。いつの間にか勝手に名前で呼んでいましたよね」
平坦な口調でそう言った。
「あれ、OKかと思っていたんですが、違ったんですか? それにさっき――」
「うわあああ! わかりました!! いいです、織姫でいいです!!」
耳まで顔を赤くして、狂司の言葉を遮る織姫。
「え、さっきって何!?」
「実来には関係ないですっ!」
「実は――」
「烏丸君!!」
「あははは!」
それから実来は織姫と狂司と3人で昼食を楽しんだのだった。
私が守りたいと思っていた場所は、脆くそして曖昧な場所だった。
でもこれから本当に守っていきたい場所を私は見つけたよ。
無理やり繋ぎ止めないとなくなってしまうような友情は、きっと友情なんかじゃなかったんだ。
今回のことで私はそれに気が付いたんだと思う。
これから守りたい私の居場所。そしてようやく出会えたかもしれない本当の友達。
私の人生、これからってこと!!
「織姫~、今夜、部屋行ってもいい? 一緒の『はちみつとジンジャー』の動画観よ!」
「え? 観ませんよ! それと、そういうのは暁先生と観てください。興味ないです!!」
「そんなこと言わず~いいじゃん」
「……もう、仕方ない。今夜だけですよ」
「やった!!」
実来は、少しずつ憧れていた学園生活を楽しんでいくことになる。
そしてこの出会いが、実来の未来を明るく照らすことになるのだった。
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