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第10章 未来へ繋ぐ想い

第78話ー② 夜空にきらめく星を目指して

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 ――食堂にて。

 暁は水蓮を連れて、朝食を摂り始めていた。

「ふわああ」

 大きな欠伸をする水蓮。

「まだ眠いか?」

 暁が水蓮にそう告げると、水蓮は首を大きく横に振り、

「大丈夫! だって、スイはもう小学生になるんだもん! 早起きできるようになるから!」

 そう言って微笑んだ。

「おおお。水蓮、えらいなあ」

 暁はそう言いながら水蓮の頭を撫でる。

「えへへへ」

 これがもしかして親心ってやつなのかもな――

 そう思いながら、暁は笑う水蓮に温かな視線を送ったのだった。

 それから暁たちが朝食を摂っていると、狂司とその後ろから織姫がやってきた。

「狂司君、織姫ちゃん。おはよう、ございます!」
「2人共、おはよう!」

 水蓮と暁がそれぞれ挨拶をすると、

「「おはようございます」」

 狂司と織姫は同時に返答する。

 そしてそれが気に入らなかったのか、すかさず狂司を睨む織姫。

「偶然ですって」

 やれやれと言った顔で織姫にそう言う狂司。

「ははは! 息ぴったりだな!」

 暁が笑いながらそう言うと、今度は暁を睨む織姫。

「ご、ごめんなさい……」
「先生、なんで謝ってるのー?」

 きょとんとした顔で水蓮がそう言うと、

「水蓮、大人ってそういうもんなんだよ」

 暁はため息交じりにそう答えた。

「うーん。よくわからないけど、わかった!」

 水蓮はそう言って微笑む。

 ――ああ、水蓮は癒しだな。

 そんなことを思い、暁も微笑んだのだった。

 その後、狂司と織姫は別々にカウンターへ向かった。

 そして食べ物を先に取り終えた狂司が席に着くと、織姫はそんな狂司から少し離れたところに座って朝食を摂り始めた。

 一緒に食堂へ来るくらいだから、仲が良いかと思ったけど、そうでもないんだな――

 暁はそう思いながら、味噌汁をすすっていた。

 するとそんな織姫の近くに席を移す狂司。織姫は不快は表情を浮かべつつも、黙々と食事を続けていた。

 やっぱり、仲良しなのか――?

 首を傾げつつ、暁は織姫たちをそっと見つめていた。

 それからしばらくすると、遅れて剛がやってきた。

「お、おはよう、ございます!」
「おはよう、剛!」
「剛君、おはようございます!」
「はあ。間に合った……」

 そう言って剛は額を腕で拭うと、

「みんな早いな」

 食堂を一望しながらそう言った。

「たぶん剛君が遅いだけですよ、おはようございます」
「そうですね。おはようございます、火山さん」

 淡々と剛にそう告げる狂司と織姫。

「お前ら、揃ってそりゃないだろ! もっと『火山さん、お疲れだったんですね♡』とか『遅くまで勉強して、さすがです! かっこいいっす!!』とか嘘でも言ってくれよ!!」

 剛が2人に向かってそう言うが、無言で食事を続ける狂司と織姫。

「先生……! 俺、そんなに人望ないですか!!」

 剛はそう言って暁に泣きついた。

「そ、そんなこと……なあ!?」

 暁は水蓮にそう言うと、

「うんうん」と水蓮は笑顔で答えたのだった。

「ありがとう、先生! 水蓮も!」

 そう言って涙を拭う剛。

「泣くなよー。まだ今日は始まったばかりだろ? そんなんじゃ、一日持たないぞ」
「おう!」


 * * *


 なぜ近くに座るのか、というひと悶着を終えた織姫と狂司は、少し離れた所から剛たちのやり取りを聞いていた。

「相変わらず、朝から騒がしい人ですね……」

 織姫がそう呟くと、

「それが剛君らしさではありますがね」

 狂司はニコニコと笑いながらそう言った。

 独り言のつもりだったのに――と織姫は思いつつも、狂司の方を見て、

「男子の共同スペースでもあのような感じなのですか」

 そう問いかけた。

「普段は勉強に集中しているようなので、今よりは静かですよ。勉強しすぎの反動かもしれませんね」

 そう言うことなら仕方がないのかもしれません。まあそうだとしても、毎日こんなに騒がしいのはちょっと――

 そう思いながら、ため息を吐く織姫。

「だったらもっと構ってあげてくださいよ。毎朝こんなに騒々しいのは、正直めんどくさいです」
「いえ、僕も正直面倒なので、ここは先生に頑張ってもらいましょう」
「……それが最適ですね」

 それから織姫たちは食事を終えて、授業の準備のために食堂を出て行った。



 ――織姫の自室。

「さて、授業に行きましょうか――」

 そう言って織姫が部屋を出ようとした時、机にある織姫のスマホが振動した。

 それから織姫はそのスマホを手に取り、画面を見つめる。

「お母様からの着信? ……はい」
『織姫、おはようございます』
「おはようございます」

 お母様の声を聞くのはいつぶりだろうか――そんなことをふと思う織姫。

 そして今回、母が電話をしてきたのは、最愛の娘の声を聞くため……ではなく、昨日のメールの件だろうと察する織姫。

「メールの件、ですよね」
『わかっているのなら、話が早いわ。今度、顔合わせに行ってほしいのだけれど……外出許可はおりそうかしら?』

 少々身勝手なこと言う母の言葉を聞き、眉間に皺を寄せる織姫。

「……無理でしょうね。私は能力が消失したわけじゃないので」

 織姫は淡々とそう告げた。

『そこを何とかできないかしら? 織姫のことなのに、織姫が顔を出さないんじゃ、神宮寺さんたちも不快に思うでしょう?』
「無理です。ここは国のルールに従って運営されている施設です。それに背くとなると、国を敵に回しかねませんか?」

 もちろんそんなことはないのだが、自分が何を言ってもきっと聞き入れてくれない母にはこれくらいのはったりがちょうどいいと思った織姫。

『そうですか……確かにそれはよろしくないですね。わかりました、それでは顔合わせは延期にしましょう。では、また連絡します』

 そう言って通話を切る織姫の母。

「合理的にしか物事を考えられないのかしら……なんで私はあんな親に認められたいと思ってしまうのでしょう」

 でも、本当は――そう思って俯く織姫。そしてはっとして時計を見た。

「あ、時間が……急がないと、遅刻です」

 それから織姫は部屋を出て教室に向かったのだった。
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