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第3部
プロローグ ー第3部ー
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噴水のある公園。幼い姿の恵里菜は黒髪の青年の腕を掴み、その青年のことをまっすぐに見つめていた。
「恵里菜。君の力が必要だ。僕だけじゃ、救えないかもしれない――でも、きっと恵里菜がいれば、恵里菜の見た未来は変えられるかもしれない。今までもそうだったでしょ?」
黒髪の青年は恵里菜の手に自身の手を重ねてそう言った。
「でも今回は勝手が違う……」
恵里菜は俯きながら、そう呟く。
「信じて、自分の未来を。そして僕のこともね」
そしてこの出会いは、のちの恵里菜に大きな心の変化をもたらすことになる――
* * *
凛子が施設を去ってから数日後のことだった。
暁はいつものように職員室で報告書を作成していると、机の端に置いてあったスマホが突然振動し始める。
「着信……? 誰だろう」
そしてそのスマホを手に取る暁。
「知らない番号だな……もしもし?」
暁は確かめるようにそう尋ねると、
「これ、暁先生の番号で合っていますか?」
聞き覚えのある声が帰ってきた。
「ああ、そうだ! 久しぶりだな、優香」
「お久しぶりです、暁先生」
いつもなら、キリヤのスマホから連絡をくれるのにな。わざわざ優香から掛けて来るなんて、何かあったのか――?
「今日はどうしたんだ? それに、なんで優香から俺に?」
「実は――」
そして優香から聞かされた話に驚き、言葉を失う暁。
それは隔離事件後、優香が研究所に戻ってから今日までの3か月間、キリヤが研究所に戻らず行方不明になっているということだった。
「心当たりなんて、ないですよね……」
「ああ……すまないな」
肩を落としながらそう言う暁。
「いえ。もっと早くに先生にお伝えするべきでしたよね。すみません」
「俺のことはそんなに気にしなくてもいいよ! それに、優香はこの3か月、キリヤを信じて待っていたんだろ?」
「はい。でも……」
不安げな声でそう言う優香。
優香の落ち込む気持ちはわかる。そんなに連絡がないって心配だよな。俺だって心配だよ――
そんなことを思いながら、暁は俯いた。
「また何か情報があれば教えてください」
「ああ、わかった」
それから通話を終える暁。
「キリヤ、どこに行ったんだよ……」
暗くなったスマホの画面を見つめ、暁はそう呟いた。そして、以前キリヤに電話をした時のことを思い出す。
「だから奏多のことで相談しようとした時、キリヤに電話が繋がらなかったのか」
それから暁は両手の拳を握る。
「――キリヤも俺の生徒だ。だから、俺の夢の先には、キリヤもいないと!」
そして暁は大きく頷くと、手掛かりが得られそうなところへと連絡を取り始めたのだった。
「恵里菜。君の力が必要だ。僕だけじゃ、救えないかもしれない――でも、きっと恵里菜がいれば、恵里菜の見た未来は変えられるかもしれない。今までもそうだったでしょ?」
黒髪の青年は恵里菜の手に自身の手を重ねてそう言った。
「でも今回は勝手が違う……」
恵里菜は俯きながら、そう呟く。
「信じて、自分の未来を。そして僕のこともね」
そしてこの出会いは、のちの恵里菜に大きな心の変化をもたらすことになる――
* * *
凛子が施設を去ってから数日後のことだった。
暁はいつものように職員室で報告書を作成していると、机の端に置いてあったスマホが突然振動し始める。
「着信……? 誰だろう」
そしてそのスマホを手に取る暁。
「知らない番号だな……もしもし?」
暁は確かめるようにそう尋ねると、
「これ、暁先生の番号で合っていますか?」
聞き覚えのある声が帰ってきた。
「ああ、そうだ! 久しぶりだな、優香」
「お久しぶりです、暁先生」
いつもなら、キリヤのスマホから連絡をくれるのにな。わざわざ優香から掛けて来るなんて、何かあったのか――?
「今日はどうしたんだ? それに、なんで優香から俺に?」
「実は――」
そして優香から聞かされた話に驚き、言葉を失う暁。
それは隔離事件後、優香が研究所に戻ってから今日までの3か月間、キリヤが研究所に戻らず行方不明になっているということだった。
「心当たりなんて、ないですよね……」
「ああ……すまないな」
肩を落としながらそう言う暁。
「いえ。もっと早くに先生にお伝えするべきでしたよね。すみません」
「俺のことはそんなに気にしなくてもいいよ! それに、優香はこの3か月、キリヤを信じて待っていたんだろ?」
「はい。でも……」
不安げな声でそう言う優香。
優香の落ち込む気持ちはわかる。そんなに連絡がないって心配だよな。俺だって心配だよ――
そんなことを思いながら、暁は俯いた。
「また何か情報があれば教えてください」
「ああ、わかった」
それから通話を終える暁。
「キリヤ、どこに行ったんだよ……」
暗くなったスマホの画面を見つめ、暁はそう呟いた。そして、以前キリヤに電話をした時のことを思い出す。
「だから奏多のことで相談しようとした時、キリヤに電話が繋がらなかったのか」
それから暁は両手の拳を握る。
「――キリヤも俺の生徒だ。だから、俺の夢の先には、キリヤもいないと!」
そして暁は大きく頷くと、手掛かりが得られそうなところへと連絡を取り始めたのだった。
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