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第9章 新たな希望と変わる世界
第73話ー⑤ デビュー前の
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――食堂。
「おーい、凛子。待たせたな」
暁がそう言って食堂に着くと、顔を伏せて凛子はスヤスヤと眠っていた。
「今日もお疲れみたいだな……」
そう言って凛子を起こそうと歩み寄る暁。すると、
「先生、ちょっと待ってくださいっ!」
しおんは暁の腕を掴み静止する。
「どうした? 凛子と話しをするために来たんだろ?」
「そうですけど……でも、こんなチャンスは滅多にこないから」
そう言ってニヤリと笑うしおん。
「は?」
「今までの恨みを晴らしてやる!」
それからしおんは眠る凛子の前に行って、しゃがんで座った。
「何をする気だ?」
「こうだっ! えいっ!」
そう言って凛子の頬をつつくしおん。
「!?」
そして驚いて飛び起きる凛子。
「ははは! 油断したな、凛子!!」
「うっ。まさかこの私が、しおん君ごときに先制攻撃を許すなんて……」
「ごときってなんだよ! お前はいつも一言多いんだって!!」
「対等になってから文句は受け付けますね☆」
「くっそ!」
そう言って悔しそうな顔で地団太を踏むしおん。
しおんだって、こうなるってわかっていただろうに。普通に起こしてやればいいのにな――
そんなことを思いながら、言いあう2人を見つめる暁だった。そして久しぶりの2人の言い合いを聞き、懐かしく思っていた。
最近は誰かが言いあうなんてこと……いや、今は剛と狂司がしょっちゅう喧嘩をしているな――
暁がそう思っていると、真一はゆっくりとしおんと凛子に近づく。
「じゃあ、そろそろ本題に行ってもいい? 恒例の夫婦漫才は終わったよね?」
「「だから、夫婦じゃないからっ!!」」
「ああ、もうそういうのいいから」
やれやれと言った顔でそう言う真一。
「じゃあ、俺たちはこの辺で。また夜にな!! いくぞ、剛」
「はーい」
それから3人に食堂を預けて、暁は剛と共に食堂を後にしたのだった。
* * *
食堂に残ったしおんたちは番組について話し合っていた。
「まあそんな感じで、約1か月の密着になると思います!」
「今回は、凛子が直接ってわけじゃないんだよね?」
真一は資料に目を通しながら、凛子にそう問いかける。すると、
「ええ。私はここから出られませんから☆ だから外で暮らしている2人の密着取材は無理ですね!」
そう言ってニコッと笑う凛子。
「そう、だよな」
俺と違って、凛子にはまだ『白雪姫症候群』の能力が――
しおんはそう思いながら、俯く。
そして凛子はそんなしおんの顔を覗きながら、
「なんですか? もしかして私のことで落ち込んじゃった感じですか??」
首をかしげてそう言った。
「うわあ!? 顔近いって!!」
「あらら☆ スーパーアイドルを前にもしかして興奮しちゃいました?」
そう言って意地悪な顔をする凛子。
「くっそお……」
そう呟き、しおんは悔しそうな顔で奥歯を噛んだのだった。
でも本当は少しだけ……目の前で見てかわいいって思ったことは内緒にしておこう。凛子に弱みを握らせるわけにはいかないからな――
「それはそれとして……しおん君に心配されるほど、私はやわな人間じゃないんですけどお?」
「そうだったな。お前はそう言うやつだもんな」
そう言って凛子に微笑むしおん。
「……ごほん。では、お話続けますよお?」
「ああ」「うん」
それからしおんたちは数時間、番組のことで話し合ったのだった――
「当日のスケジュールは、近いうちにプロデューサーさんから行くと思うので、ちゃんと目を通しておいてくださいね? 特にしおん君ですよ??」
凛子が意地悪な顔でそう言うと、
「わかってるって!! まあ今回は凛子が撮影に関わらないみたいだし、変なアドリブはないから安心だな!」
得意げな顔でそう言うしおん。
「あらら。ご要望とあらば、ご用意しておきますよ??」
「や、やめてくれって!!」
しおんと凛子がそんなやり取りをしていると、真一は急に立ち上がり、食堂の出口へと向かって歩いていった。
「真一!? どこ行くんだよ!!」
心配したしおんは真一の背中にそう言うと、真一は振り返り、
「ちょっとトイレ」
そう言って出ていった。
「……」
「……」
真一が食堂を出て行き、しおんたちの間には沈黙の空気が流れていた。
やばい。2人きりだと、なんだか気まずいぞ……何か話題を――
「……今度、CDデビューするんでしょ」
凛子がそう言って沈黙を破った。
凛子、知っていたんだな――
「あ、ああ。ようやくな」
「ようやくって……所属して1年も待たずにCDデビューができるのは、まあその……なかなかやるじゃない」
もしかして、今ほめてくれたのか――?
「ああ、えっと……その。ありがとう、凛子」
しおんはそう言って微笑んだ。
「まあ、まだまだスーパーアイドル知立凛子の足元にも及びませんがね☆」
「だからそういう事言わなきゃ、俺だってなあ――! ってまあいいか」
ため息交じりにそう言うしおん。
そんなしおんを見て、凛子はクスクスと笑う。
それからしおんは、屋上で凛子が行っていたことをふと思い出した。
『あの場にいる全員が繋がる感じというか……共感覚っていうの? すっごいんだよ!』
もしかしたら、今の俺ならその時の凛子と同じ感覚を味わえるかもしれない。あの頃とは違う、今なら――
「なあ凛子。俺に初舞台のことを話してくれたことを覚えているか?」
「……ええ」
「俺にもわかる日が来るのかなってさ」
「さあ。それは私にはわかりません」
「相変わらず、厳しいな」
そう言ってしおんは苦笑いをした。
「でも――」
「ん?」
「今のまままっすぐに音楽を好きでいたら、いつかはきっと……ですかね☆」
「そうか……ありがとな、凛子!」
そう言って微笑むしおん。
「何なんですか? 急に、気持ち悪い」
「はあ? なんだよ、それ! 素直な気持ちを伝えただけだろ!!」
「もしかして、何か企んでます?? ああ、怖い怖い」
そう言って両手で身体をさすりながら、しおんから少し距離を取る凛子。
「だから違うって!! 今の俺があるのは真一のおかげもあるけど、あの時に凛子が屋上に来てくれたからだって俺は思ったから! だからお礼をだな――」
「もし本当にそうだって思うのなら、早く世界的なミュージシャンになりなさいよ。それが一番の恩返しってもんじゃない?」
そう言って、凛子はニヤリと笑った。
「ああ! 今に見てろよ? すぐに世界で活躍するミュージシャンになってやるさ!!」
「ま、来世までかかるだろうから、私は気長に待つよ」
「凛子、お前!!」
「うふふ」
怒るしおんを見て笑う凛子。そしてそんな凛子を見て、しおんも自然に笑顔になっていた。
これがアイドルの力か――そう思い、しおんは凛子の顔を見ながら楽しそうに笑っていたのだった。
「おーい、凛子。待たせたな」
暁がそう言って食堂に着くと、顔を伏せて凛子はスヤスヤと眠っていた。
「今日もお疲れみたいだな……」
そう言って凛子を起こそうと歩み寄る暁。すると、
「先生、ちょっと待ってくださいっ!」
しおんは暁の腕を掴み静止する。
「どうした? 凛子と話しをするために来たんだろ?」
「そうですけど……でも、こんなチャンスは滅多にこないから」
そう言ってニヤリと笑うしおん。
「は?」
「今までの恨みを晴らしてやる!」
それからしおんは眠る凛子の前に行って、しゃがんで座った。
「何をする気だ?」
「こうだっ! えいっ!」
そう言って凛子の頬をつつくしおん。
「!?」
そして驚いて飛び起きる凛子。
「ははは! 油断したな、凛子!!」
「うっ。まさかこの私が、しおん君ごときに先制攻撃を許すなんて……」
「ごときってなんだよ! お前はいつも一言多いんだって!!」
「対等になってから文句は受け付けますね☆」
「くっそ!」
そう言って悔しそうな顔で地団太を踏むしおん。
しおんだって、こうなるってわかっていただろうに。普通に起こしてやればいいのにな――
そんなことを思いながら、言いあう2人を見つめる暁だった。そして久しぶりの2人の言い合いを聞き、懐かしく思っていた。
最近は誰かが言いあうなんてこと……いや、今は剛と狂司がしょっちゅう喧嘩をしているな――
暁がそう思っていると、真一はゆっくりとしおんと凛子に近づく。
「じゃあ、そろそろ本題に行ってもいい? 恒例の夫婦漫才は終わったよね?」
「「だから、夫婦じゃないからっ!!」」
「ああ、もうそういうのいいから」
やれやれと言った顔でそう言う真一。
「じゃあ、俺たちはこの辺で。また夜にな!! いくぞ、剛」
「はーい」
それから3人に食堂を預けて、暁は剛と共に食堂を後にしたのだった。
* * *
食堂に残ったしおんたちは番組について話し合っていた。
「まあそんな感じで、約1か月の密着になると思います!」
「今回は、凛子が直接ってわけじゃないんだよね?」
真一は資料に目を通しながら、凛子にそう問いかける。すると、
「ええ。私はここから出られませんから☆ だから外で暮らしている2人の密着取材は無理ですね!」
そう言ってニコッと笑う凛子。
「そう、だよな」
俺と違って、凛子にはまだ『白雪姫症候群』の能力が――
しおんはそう思いながら、俯く。
そして凛子はそんなしおんの顔を覗きながら、
「なんですか? もしかして私のことで落ち込んじゃった感じですか??」
首をかしげてそう言った。
「うわあ!? 顔近いって!!」
「あらら☆ スーパーアイドルを前にもしかして興奮しちゃいました?」
そう言って意地悪な顔をする凛子。
「くっそお……」
そう呟き、しおんは悔しそうな顔で奥歯を噛んだのだった。
でも本当は少しだけ……目の前で見てかわいいって思ったことは内緒にしておこう。凛子に弱みを握らせるわけにはいかないからな――
「それはそれとして……しおん君に心配されるほど、私はやわな人間じゃないんですけどお?」
「そうだったな。お前はそう言うやつだもんな」
そう言って凛子に微笑むしおん。
「……ごほん。では、お話続けますよお?」
「ああ」「うん」
それからしおんたちは数時間、番組のことで話し合ったのだった――
「当日のスケジュールは、近いうちにプロデューサーさんから行くと思うので、ちゃんと目を通しておいてくださいね? 特にしおん君ですよ??」
凛子が意地悪な顔でそう言うと、
「わかってるって!! まあ今回は凛子が撮影に関わらないみたいだし、変なアドリブはないから安心だな!」
得意げな顔でそう言うしおん。
「あらら。ご要望とあらば、ご用意しておきますよ??」
「や、やめてくれって!!」
しおんと凛子がそんなやり取りをしていると、真一は急に立ち上がり、食堂の出口へと向かって歩いていった。
「真一!? どこ行くんだよ!!」
心配したしおんは真一の背中にそう言うと、真一は振り返り、
「ちょっとトイレ」
そう言って出ていった。
「……」
「……」
真一が食堂を出て行き、しおんたちの間には沈黙の空気が流れていた。
やばい。2人きりだと、なんだか気まずいぞ……何か話題を――
「……今度、CDデビューするんでしょ」
凛子がそう言って沈黙を破った。
凛子、知っていたんだな――
「あ、ああ。ようやくな」
「ようやくって……所属して1年も待たずにCDデビューができるのは、まあその……なかなかやるじゃない」
もしかして、今ほめてくれたのか――?
「ああ、えっと……その。ありがとう、凛子」
しおんはそう言って微笑んだ。
「まあ、まだまだスーパーアイドル知立凛子の足元にも及びませんがね☆」
「だからそういう事言わなきゃ、俺だってなあ――! ってまあいいか」
ため息交じりにそう言うしおん。
そんなしおんを見て、凛子はクスクスと笑う。
それからしおんは、屋上で凛子が行っていたことをふと思い出した。
『あの場にいる全員が繋がる感じというか……共感覚っていうの? すっごいんだよ!』
もしかしたら、今の俺ならその時の凛子と同じ感覚を味わえるかもしれない。あの頃とは違う、今なら――
「なあ凛子。俺に初舞台のことを話してくれたことを覚えているか?」
「……ええ」
「俺にもわかる日が来るのかなってさ」
「さあ。それは私にはわかりません」
「相変わらず、厳しいな」
そう言ってしおんは苦笑いをした。
「でも――」
「ん?」
「今のまままっすぐに音楽を好きでいたら、いつかはきっと……ですかね☆」
「そうか……ありがとな、凛子!」
そう言って微笑むしおん。
「何なんですか? 急に、気持ち悪い」
「はあ? なんだよ、それ! 素直な気持ちを伝えただけだろ!!」
「もしかして、何か企んでます?? ああ、怖い怖い」
そう言って両手で身体をさすりながら、しおんから少し距離を取る凛子。
「だから違うって!! 今の俺があるのは真一のおかげもあるけど、あの時に凛子が屋上に来てくれたからだって俺は思ったから! だからお礼をだな――」
「もし本当にそうだって思うのなら、早く世界的なミュージシャンになりなさいよ。それが一番の恩返しってもんじゃない?」
そう言って、凛子はニヤリと笑った。
「ああ! 今に見てろよ? すぐに世界で活躍するミュージシャンになってやるさ!!」
「ま、来世までかかるだろうから、私は気長に待つよ」
「凛子、お前!!」
「うふふ」
怒るしおんを見て笑う凛子。そしてそんな凛子を見て、しおんも自然に笑顔になっていた。
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