356 / 501
第9章 新たな希望と変わる世界
第71話ー⑧ 捕らわれの獣たち 後編
しおりを挟む
「君たちがここを出るには、僕の息の根を完全に止めてからじゃないとね。中途半端に生かしておくと君たちに未来はないよ? まあ君に人が殺せたら、だけどね!! あはははは!」
隼人はそう言って高笑いをする。
確かに、俺には人を殺す覚悟なんて……やっぱり無理なのか――
そう思って、拳を握る暁。
「――ねえ。あなたが本当に総理の皮をかぶっているか教えてよ」
翔が一歩前に出て、そう告げた。
「翔……?」
「はあ? なんでそんなことをしなきゃいけないわけ?」
隼人は眉間に皺を寄せてそう言った。
「だって、僕はそれを見たわけじゃない。だからあなたが言う事が真実かどうか疑わしい。もしもできないのなら、虚偽の発言だってことで僕はあなたをここでいたぶらなくちゃいけない」
翔は淡々とそう告げた。
なんでそんな挑発するようなことを――?
翔の顔を見ながら、そう思う暁。
「ちっ。ガキのくせに面倒だな。篤志も余計なことをガキに吹き込みやがって……わかったよ。じゃあ、みせてやろうじゃないか。僕の能力をさ――」
そう言いながら、隼人の顔が変貌していく。
「ははは。これでどうかな! 信じる気になっただろう」
「ああ、そうだね。あなたは正真正銘の現総理大臣、安藤征夫だね」
そう言ってニヤリと笑う翔。
「そうだ! 私が安藤征夫だ! はははは!」
一体翔はどうするつもりなんだ――?
暁がそう思っていると、部屋の扉がゆっくりと開く。
「誰だ?」
黒服がそう言うと、
「私だよ、隼人」
そう言って篤志が部屋に入ってきた。
「ずいぶん遅かったな、篤志!」
「本当はもう少し前からついていたんだけどね。面白そうなものが撮れそうだったから――」
そう言って篤志はスマホを取り出し、とある配信動画を見せた。
『そうだ! 私が安藤征夫だ! はははは!』
これはさっきの……もしかして、翔はあの人がいることを察して、あんなことを言い出したってことか――
「な……これは一体どういうことだ!」
安藤の顔をした隼人は隣にいる黒服に問う。
「わ、私も状況が……」
「僕をはめたのか、篤志!」
隼人は篤志を睨みつけてそう言った。
「それは違う。真実を白日の下にさらしただけだ。これで終わりにしよう、隼人。私達はここで終わらせなくちゃいけない」
篤志は隼人の顔をまっすぐ見てそう告げる。
「い、嫌だ! やっと恵里菜から解放されて、自由になったんだ! 僕はずっとこの世界を手に入れることが夢だった!! だから、こんなところで終わってたまるか!!」
そう言って、机から何かを取り出す隼人。
「――僕の能力は変身だけじゃない。例えば、この鉄の箱。なんだかわかるかい? これは僕の能力で爆弾にしたものさ」
隼人はそう言って、手のひらサイズの箱を暁たちが見えるように持つ。
「爆弾に、した……?」
「ああ、そうさ! じゃあこれをここで爆発させれば、この部屋はおろかフロアごと吹っ飛ぶ。そしてらお前ら全員一網打尽だな! あははははは!」
狂った笑いをしながらそう言う隼人。
早くあれを止めないと……でも下手に近づいて、爆発させられたら――
そう思った暁はなかなか動き出すことができなかった。
「大丈夫。兄さんの速さなら、止められる。躊躇しないで行って!!」
「翔……でも!!」
「僕たちにはドクターもいる。だから大丈夫」
そう言う翔は、勝利を確信している表情をしていた。
きっとさっきみたいに、何か考えがあるんだよな――!
「ああ、わかった」
そして暁は隼人に向かって走り出した。
「あれえ? 聞いてなかったわけ? これは本当に爆弾――って爆発しない!? なんでだ!! そうか、お前か、篤志ぃぃぃぃ!!」
「くらえ!」
そして暁は、右手に『獣人化』を発動し、隼人の顔面へその拳をお見舞いする。
「ぐはっ」
そして隼人は、ゆっくりとその場に倒れた。
「ふう」
「お見事ですね、暁先生」
篤志はそう言って拍手をしながら暁の方に歩み寄った。
「いえ、あなたのおかげ……なんですよね?」
「ははは。僕の『創造者』は知覚しているものだったら、どんなものでも好きなように創造できるからね」
なんて便利な能力なんだ――暁はそう思って、目を丸くした。
「そうだ! さっきの動画――」
「ええ、私がこのペン型カメラで撮影して、生配信していました。公共の電波をジャックして」
そう言って胸ポケットのあるペンを取り出す篤志。
「公共の電波をジャックって……翔、この人は本当に何者?」
「ドクターは本当に何でもできるんだよ!」
なぜか偉そうにそう言う翔。
「そ、そうか」
理由はわからないけれど、ドクターがチート級に強いという事だけはわかった暁だった。
「じゃあ私たちはそろそろ退散しようか、翔。そろそろ警察関係者が乗り込んできそうだからね」
「あ、はい!」
そう言って扉の方に向かう篤志と翔。
「ま、待ってください! そんな逃げるみたいなことをしなくても……それにこの世界が救われたのは、あなたのおかげで――」
その言葉に篤志は振り返ると、
「いいんだ。私は陰でひっそりと生きていきたいと思っているからね。だから、君がこの事件を解決した英雄になるんだ。そうなることで、『ゼンシンノウリョクシャ』が危険な存在ではないことのアピールにもなるだろう」
そう言って笑った。
そんなことまで考えてくれていたのか――
「じゃあね、暁先生。能力者の未来を君に預けるよ」
「兄さん、お元気で!」
それから篤志と翔は部屋を出て行った。
「俺に能力者の未来、か……」
それからしばらくして、神無月たちが警察関係者たちを連れて隼人の部屋にやってきた。そして黒服と隼人は警察署へと連行されたのだった。
その時、黒服の男から龍海の居場所を聞いた暁は急いで言われた部屋に向かうと、
「龍海!」
「ううう……先生~!」
そう言って龍海は暁に泣きついた。
少し痩せたように見えたが、身体の異常はなさそうだとホッとする暁。
「じゃあ帰ろう、優香たちも待っているからさ!」
「うむっ!」
そして事件は無事に解決になったのだった。
隼人はそう言って高笑いをする。
確かに、俺には人を殺す覚悟なんて……やっぱり無理なのか――
そう思って、拳を握る暁。
「――ねえ。あなたが本当に総理の皮をかぶっているか教えてよ」
翔が一歩前に出て、そう告げた。
「翔……?」
「はあ? なんでそんなことをしなきゃいけないわけ?」
隼人は眉間に皺を寄せてそう言った。
「だって、僕はそれを見たわけじゃない。だからあなたが言う事が真実かどうか疑わしい。もしもできないのなら、虚偽の発言だってことで僕はあなたをここでいたぶらなくちゃいけない」
翔は淡々とそう告げた。
なんでそんな挑発するようなことを――?
翔の顔を見ながら、そう思う暁。
「ちっ。ガキのくせに面倒だな。篤志も余計なことをガキに吹き込みやがって……わかったよ。じゃあ、みせてやろうじゃないか。僕の能力をさ――」
そう言いながら、隼人の顔が変貌していく。
「ははは。これでどうかな! 信じる気になっただろう」
「ああ、そうだね。あなたは正真正銘の現総理大臣、安藤征夫だね」
そう言ってニヤリと笑う翔。
「そうだ! 私が安藤征夫だ! はははは!」
一体翔はどうするつもりなんだ――?
暁がそう思っていると、部屋の扉がゆっくりと開く。
「誰だ?」
黒服がそう言うと、
「私だよ、隼人」
そう言って篤志が部屋に入ってきた。
「ずいぶん遅かったな、篤志!」
「本当はもう少し前からついていたんだけどね。面白そうなものが撮れそうだったから――」
そう言って篤志はスマホを取り出し、とある配信動画を見せた。
『そうだ! 私が安藤征夫だ! はははは!』
これはさっきの……もしかして、翔はあの人がいることを察して、あんなことを言い出したってことか――
「な……これは一体どういうことだ!」
安藤の顔をした隼人は隣にいる黒服に問う。
「わ、私も状況が……」
「僕をはめたのか、篤志!」
隼人は篤志を睨みつけてそう言った。
「それは違う。真実を白日の下にさらしただけだ。これで終わりにしよう、隼人。私達はここで終わらせなくちゃいけない」
篤志は隼人の顔をまっすぐ見てそう告げる。
「い、嫌だ! やっと恵里菜から解放されて、自由になったんだ! 僕はずっとこの世界を手に入れることが夢だった!! だから、こんなところで終わってたまるか!!」
そう言って、机から何かを取り出す隼人。
「――僕の能力は変身だけじゃない。例えば、この鉄の箱。なんだかわかるかい? これは僕の能力で爆弾にしたものさ」
隼人はそう言って、手のひらサイズの箱を暁たちが見えるように持つ。
「爆弾に、した……?」
「ああ、そうさ! じゃあこれをここで爆発させれば、この部屋はおろかフロアごと吹っ飛ぶ。そしてらお前ら全員一網打尽だな! あははははは!」
狂った笑いをしながらそう言う隼人。
早くあれを止めないと……でも下手に近づいて、爆発させられたら――
そう思った暁はなかなか動き出すことができなかった。
「大丈夫。兄さんの速さなら、止められる。躊躇しないで行って!!」
「翔……でも!!」
「僕たちにはドクターもいる。だから大丈夫」
そう言う翔は、勝利を確信している表情をしていた。
きっとさっきみたいに、何か考えがあるんだよな――!
「ああ、わかった」
そして暁は隼人に向かって走り出した。
「あれえ? 聞いてなかったわけ? これは本当に爆弾――って爆発しない!? なんでだ!! そうか、お前か、篤志ぃぃぃぃ!!」
「くらえ!」
そして暁は、右手に『獣人化』を発動し、隼人の顔面へその拳をお見舞いする。
「ぐはっ」
そして隼人は、ゆっくりとその場に倒れた。
「ふう」
「お見事ですね、暁先生」
篤志はそう言って拍手をしながら暁の方に歩み寄った。
「いえ、あなたのおかげ……なんですよね?」
「ははは。僕の『創造者』は知覚しているものだったら、どんなものでも好きなように創造できるからね」
なんて便利な能力なんだ――暁はそう思って、目を丸くした。
「そうだ! さっきの動画――」
「ええ、私がこのペン型カメラで撮影して、生配信していました。公共の電波をジャックして」
そう言って胸ポケットのあるペンを取り出す篤志。
「公共の電波をジャックって……翔、この人は本当に何者?」
「ドクターは本当に何でもできるんだよ!」
なぜか偉そうにそう言う翔。
「そ、そうか」
理由はわからないけれど、ドクターがチート級に強いという事だけはわかった暁だった。
「じゃあ私たちはそろそろ退散しようか、翔。そろそろ警察関係者が乗り込んできそうだからね」
「あ、はい!」
そう言って扉の方に向かう篤志と翔。
「ま、待ってください! そんな逃げるみたいなことをしなくても……それにこの世界が救われたのは、あなたのおかげで――」
その言葉に篤志は振り返ると、
「いいんだ。私は陰でひっそりと生きていきたいと思っているからね。だから、君がこの事件を解決した英雄になるんだ。そうなることで、『ゼンシンノウリョクシャ』が危険な存在ではないことのアピールにもなるだろう」
そう言って笑った。
そんなことまで考えてくれていたのか――
「じゃあね、暁先生。能力者の未来を君に預けるよ」
「兄さん、お元気で!」
それから篤志と翔は部屋を出て行った。
「俺に能力者の未来、か……」
それからしばらくして、神無月たちが警察関係者たちを連れて隼人の部屋にやってきた。そして黒服と隼人は警察署へと連行されたのだった。
その時、黒服の男から龍海の居場所を聞いた暁は急いで言われた部屋に向かうと、
「龍海!」
「ううう……先生~!」
そう言って龍海は暁に泣きついた。
少し痩せたように見えたが、身体の異常はなさそうだとホッとする暁。
「じゃあ帰ろう、優香たちも待っているからさ!」
「うむっ!」
そして事件は無事に解決になったのだった。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
人の身にして精霊王
山外大河
ファンタジー
正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。
主人公最強系です。
厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。
小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。
喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~
中島健一
ファンタジー
[ルールその1]喜んだら最初に召喚されたところまで戻る
[ルールその2]レベルとステータス、習得したスキル・魔法、アイテムは引き継いだ状態で戻る
[ルールその3]一度経験した喜びをもう一度経験しても戻ることはない
17歳高校生の南野ハルは突然、異世界へと召喚されてしまった。
剣と魔法のファンタジーが広がる世界
そこで懸命に生きようとするも喜びを満たすことで、初めに召喚された場所に戻ってしまう…レベルとステータスはそのままに
そんな中、敵対する勢力の魔の手がハルを襲う。力を持たなかったハルは次第に魔法やスキルを習得しレベルを上げ始める。初めは倒せなかった相手を前回の世界線で得た知識と魔法で倒していく。
すると世界は新たな顔を覗かせる。
この世界は何なのか、何故ステータスウィンドウがあるのか、何故自分は喜ぶと戻ってしまうのか、神ディータとは、或いは自分自身とは何者なのか。
これは主人公、南野ハルが自分自身を見つけ、どうすれば人は成長していくのか、どうすれば今の自分を越えることができるのかを学んでいく物語である。
なろうとカクヨムでも掲載してまぁす
巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる