311 / 501
第8章 猫と娘と生徒たち
第63話ー① 夢に向かう者たち
しおりを挟む
冬の寒さがすっかりとなくなり、桜のつぼみが膨らみ始めた頃。
今年度卒業する生徒たちの卒業の日が近づいていた。
「またさみしくなるな……」
そんなことを呟きながら、教室を見渡す暁。
「毎年のことですが、先生も相変わらずですなあ」
そう言って笑う結衣。
「だってさ……本当のことなんだから仕方がないだろう? それに、結衣もまゆおも真一も……俺がここに来たときからここにいたから、長い付き合いになるわけだし……」
肩を落としながらそう言う暁。
「そういえば、僕たち3人の方がここでの生活は先輩でしたね!」
「確かにそうですな!」
笑いながらそう言うまゆおの言葉に、結衣はそう言ってポンと手を打った。
「初期メンバーはこれでみんないなくなっちゃうわけですか。それは確かに寂しいと思うのもわかりますです!」
「だろ……?」
ため息交じりにそう言う暁。
「でも今は織姫ちゃんもりんりんもおりますし、それにかわいい愛娘の水蓮ちゃんもいるじゃないですか。きっとこれからも変わらず楽しい場所であると私は思うのです」
「そうですよぉ。私が1人いれば、生徒100人分くらいになります☆」
凛子はそう言って、ウインクをした。
「それはないだろ……」
しおんがボソッとそう呟いた。
「しおん君? 言いたいことがあるのなら、もっと大きな声で言ってくれませんかあ?」
「……はっ! 寝てた!! で、凛子は俺に何か言ったか?」
しおんは白々しい顔で凛子にそう告げると、
「最後の最後まで腹立たしいですねぇ。無能力者をいたぶるのはいかがなものかと思いますが、きっと神様は私のことだけ見逃してくれますよね☆」
凛子はそう言って、にっこりと笑う。
「わ、悪かったって! さすがに死ぬから!! 本当にやめてくれ!」
「あらあら。いつから『謝罪』というものを覚えたのでしょうね、しおんくぅん?」
そう言って立ちあがる凛子。
「はああ? それくらい俺だってできるし! 俺、ガキじゃねえし!!」
しおんもそう言って勢いよく立ち上がると、2人はにらみ合った。
「こらこら! お前たち、いい加減にしろって!!」
「「ふん」」
しおんと凛子はそう言ってそっぽを向いた。
まったく、この2人は――
そう思いながらため息をつく暁。
しおんも凛子も口ではああいう癖に、ちゃんとお互いのことを見守っているんだよな――
そして暁はしおんと凛子を交互に見て、微笑んだ。
この光景も4月からは見ることもないのか、と思うとやっぱり少し寂しい気持ちになる。でも4人はそれぞれの夢に向かって旅立つんだ。だからちゃんと見送ろう。それが卒業する4人にできる最善のことだから――。
そして暁たちはいつもの授業を終えたのだった。
夕食後。
片付けを終えた暁は水蓮が結衣とお風呂に行っている間に、報告書をまとめていた。
「これで、よしっと……今日の仕事は終わりだー」
そう言って背伸びをする暁。
そういえば、キリヤにも結衣たちの卒業のことを知らせておこうかな――
そう思った暁は、キリヤにメッセージを送る。
『久しぶり、キリヤ! 元気にしてるか? もうすぐ結衣たちが卒業なんだよ。時間の流れは早いよな。
それでさ! 外に出たら、みんなそれぞれの夢のために頑張るんだって言っていたよ!!
3月まではいるって言っていたし、会いに来てくれてもいいからな! じゃあ、仕事頑張れよ』
「これでよしっと……キリヤ、どんな反応をするかな。近々、真一たちに会う! って言って施設に来るかもしれないな」
そう呟きながらニヤニヤする暁。
すると、ミケが暁の足元までやってきて、
『暁、この間の件はどうなった?』
と尋ねた。
「あ、そうだったな。そういえば、あれから所長から何の音沙汰もないな……」
『やれやれ。あまり時間はないと言っただろう? 早めに蜘蛛の少女に合わせてほしいものだな』
ミケはため息交じりにそう言った。
「わ、わかったよ! とりあえずキリヤに連絡もしたし、返信が来たらその時にキリヤから所長と優香に伝えてもらうさ」
『頼んだぞ』
そう告げて、ミケは暁の自室へと入っていった。
「でも所長が俺との約束を忘れるなんて……忙しいのかな」
とりあえず今はキリヤからの返信を待とう――そう思った暁だった。
今年度卒業する生徒たちの卒業の日が近づいていた。
「またさみしくなるな……」
そんなことを呟きながら、教室を見渡す暁。
「毎年のことですが、先生も相変わらずですなあ」
そう言って笑う結衣。
「だってさ……本当のことなんだから仕方がないだろう? それに、結衣もまゆおも真一も……俺がここに来たときからここにいたから、長い付き合いになるわけだし……」
肩を落としながらそう言う暁。
「そういえば、僕たち3人の方がここでの生活は先輩でしたね!」
「確かにそうですな!」
笑いながらそう言うまゆおの言葉に、結衣はそう言ってポンと手を打った。
「初期メンバーはこれでみんないなくなっちゃうわけですか。それは確かに寂しいと思うのもわかりますです!」
「だろ……?」
ため息交じりにそう言う暁。
「でも今は織姫ちゃんもりんりんもおりますし、それにかわいい愛娘の水蓮ちゃんもいるじゃないですか。きっとこれからも変わらず楽しい場所であると私は思うのです」
「そうですよぉ。私が1人いれば、生徒100人分くらいになります☆」
凛子はそう言って、ウインクをした。
「それはないだろ……」
しおんがボソッとそう呟いた。
「しおん君? 言いたいことがあるのなら、もっと大きな声で言ってくれませんかあ?」
「……はっ! 寝てた!! で、凛子は俺に何か言ったか?」
しおんは白々しい顔で凛子にそう告げると、
「最後の最後まで腹立たしいですねぇ。無能力者をいたぶるのはいかがなものかと思いますが、きっと神様は私のことだけ見逃してくれますよね☆」
凛子はそう言って、にっこりと笑う。
「わ、悪かったって! さすがに死ぬから!! 本当にやめてくれ!」
「あらあら。いつから『謝罪』というものを覚えたのでしょうね、しおんくぅん?」
そう言って立ちあがる凛子。
「はああ? それくらい俺だってできるし! 俺、ガキじゃねえし!!」
しおんもそう言って勢いよく立ち上がると、2人はにらみ合った。
「こらこら! お前たち、いい加減にしろって!!」
「「ふん」」
しおんと凛子はそう言ってそっぽを向いた。
まったく、この2人は――
そう思いながらため息をつく暁。
しおんも凛子も口ではああいう癖に、ちゃんとお互いのことを見守っているんだよな――
そして暁はしおんと凛子を交互に見て、微笑んだ。
この光景も4月からは見ることもないのか、と思うとやっぱり少し寂しい気持ちになる。でも4人はそれぞれの夢に向かって旅立つんだ。だからちゃんと見送ろう。それが卒業する4人にできる最善のことだから――。
そして暁たちはいつもの授業を終えたのだった。
夕食後。
片付けを終えた暁は水蓮が結衣とお風呂に行っている間に、報告書をまとめていた。
「これで、よしっと……今日の仕事は終わりだー」
そう言って背伸びをする暁。
そういえば、キリヤにも結衣たちの卒業のことを知らせておこうかな――
そう思った暁は、キリヤにメッセージを送る。
『久しぶり、キリヤ! 元気にしてるか? もうすぐ結衣たちが卒業なんだよ。時間の流れは早いよな。
それでさ! 外に出たら、みんなそれぞれの夢のために頑張るんだって言っていたよ!!
3月まではいるって言っていたし、会いに来てくれてもいいからな! じゃあ、仕事頑張れよ』
「これでよしっと……キリヤ、どんな反応をするかな。近々、真一たちに会う! って言って施設に来るかもしれないな」
そう呟きながらニヤニヤする暁。
すると、ミケが暁の足元までやってきて、
『暁、この間の件はどうなった?』
と尋ねた。
「あ、そうだったな。そういえば、あれから所長から何の音沙汰もないな……」
『やれやれ。あまり時間はないと言っただろう? 早めに蜘蛛の少女に合わせてほしいものだな』
ミケはため息交じりにそう言った。
「わ、わかったよ! とりあえずキリヤに連絡もしたし、返信が来たらその時にキリヤから所長と優香に伝えてもらうさ」
『頼んだぞ』
そう告げて、ミケは暁の自室へと入っていった。
「でも所長が俺との約束を忘れるなんて……忙しいのかな」
とりあえず今はキリヤからの返信を待とう――そう思った暁だった。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話
もち
ファンタジー
なんと、なんと、世にも珍しい事に、トラックにはねられて死んでしまった男子高校生『閃(セン)』。気付いたら、びっくり仰天、驚くべき事に、異世界なるものへと転生していて、
だから、冒険者になって、ゴブリンを倒して、オーガを倒して、ドラゴンを倒して、なんやかんやでレベル300くらいの時、寿命を迎えて死んだ。
で、目を覚ましたら、記憶と能力を継いだまま、魔物に転生していた。サクっと魔王になって世界を統治して、なんやかんやしていたら、レベル700くらいの時、寿命を迎えて死んだ。
で、目を覚ましたら……というのを100回くりかえした主人公の話。
「もういい! 異世界転生、もう飽きた! 何なんだよ、この、死んでも死んでも転生し続ける、精神的にも肉体的にもハンパなくキツい拷問! えっぐい地獄なんですけど!」
これは、なんやかんやでレベル(存在値)が十兆を超えて、神よりも遥かに強くなった摩訶不思議アドベンチャーな主人公が、
「もういい! もう終わりたい! 終わってくれ! 俺、すでにカンストしてんだよ! 俺、本気出したら、最強神より強いんだぞ! これ以上、やる事ねぇんだよ! もう、マジで、飽きてんの! だから、終わってくれ!」
などと喚きながら、その百回目に転生した、
『それまでの99回とは、ちょいと様子が違う異世界』で、
『神様として、日本人を召喚してチートを与えて』みたり、
『さらに輪をかけて強くなって』しまったり――などと、色々、楽しそうな事をはじめる物語です。
『世界が進化(アップデート)しました』
「え? できる事が増えるの? まさかの上限解放? ちょっと、それなら話が違うんですけど」
――みたいな事もあるお話です。
しょうせつかになろうで、毎日2話のペースで投稿をしています。
2019年1月時点で、120日以上、毎日2話投稿していますw
投稿ペースだけなら、自信があります!
ちなみに、全1000話以上をめざしています!
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる