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第7章 それぞれのサイカイ
第52話ー⑨ 青春
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――数日後、テレビ放映の日。
暁としおんと真一は3人で共同スペースのテレビ前で番組が始まる瞬間を待っていた。
一緒に観たいと思っていた凛子は当日の番組にリモート出演することが決まっていたので、暁は少々残念に思いつつも、終わった後にまた凛子から感想を聞こうと決めていた。
「うわあ。緊張するな……」
「今更緊張しても仕方ないよ。僕たちは待つだけだよ」
そう言って足を小刻みに揺らす真一。
「そんなこと言って! 真一もさっきから貧乏ゆすりが止まってないぞ? 緊張してんのか??」
「こ、これはまだ始まらないことへの苛立ちだって!!」
「はいはい!」
「ちょっと!!」
緊張しながらも、楽しみにしている様子の真一としおん。そしてそんな2人に暁は、
「そう言えば、凛子が言っていた課題はクリアしたのか?」
そう問いかけた。するとその問いに、
「もちろん」
と自信満々に答える真一。
「ふふふ~、これです!」
しおんはそう言って、開設した動画チャンネルとSNSのアカウントを暁に見せた。
「おおお! これが放送の後にどうなるのか楽しみだな!」
「はいっ!」
「しっ! 始まったよ!」
真一の声を聞いた暁は、テレビに目線を向けた。
「それでは本日のゲストを紹介します! 人気沸騰中の中高校生バンド『ASTER』のギターボーカルを務めている、あやめ君です!」
「皆さん、こんにちは! 『ASTER』のあやめです! 今日はよろしくお願いします!」
テレビからするあやめの声を聞いたしおんは驚いて立ち上がる。
「あ、あやめがゲスト!? 凛子の奴、何にも言ってなかったぞ!」
「お、落ち着けってしおん! ほら、テレビの音が聞こえないだろう?」
「すみません……」
「ま、凛子のことだからあえて言わなかったんだろうけどね」
淡々とそう告げる真一。
確かに収録時にそのことを知れば、しおんが意識して変に力が入ってしまうことを凛子は考えたんだろうな――そう思いながら一人頷く暁。
それから暁たちは再びテレビに視線を移した。
「はい、よろしくお願いします! そして! もう一人のゲストは! アイドルとして、現在再ブレイク中の知立凛子ちゃんです!」
「みなさーん! こんにちは☆ りんりんこと知立凛子です! よろしくお願いします!」
「凛子ちゃんはリモートでの出演になります! それではいつものあのコーナー…――」
それから順調に番組は進んでいった。
「さて次のコーナーは! 凛子ちゃんの持ち込み企画!」
「はい! 私のお友達を紹介しちゃいます! それではVTRスタートです!」
そして施設で撮影した映像が流れる。
「な、なんか恥ずかしいな……」
「この程度で恥ずかしがるなんて、しおんもまだまだだね」
2人はテレビに映る自分の姿を見て、そわそわとしていた。
(2人とも緊張しているんだな……まあ出ていない俺もなんだけどさ)
そう思いながら、静かにテレビを見つめる暁。
「この後、ライブシーンだな」
しおんはそう言って息を飲んだ。
「どう映っているんだろうね……」
そしてしおんたちには内緒で撮影していた準備の映像が流れた。
「こんなのいつの間に……」
「聞いてないけど?」
真一はそう言って暁に冷たい視線を向ける。
「い、いやあ。こういう準備シーンは面白いと凛子が言っていて……あはは」
「凛子の奴~! 好き勝手やりやがったな!」
「あ、始まる」
そしてライブシーンが流れた。
「俺たちの演奏ってはたから見るとこう見えているんだな」
「うん。今までちゃんと見てこなかったけど……なかなかひどいものだね」
「今のところ、もっと大きく動いてもいいんじゃないか?」
「そうだね、あとここは引き気味で――」
しおんと真一は自分たちの映像を見ながら、熱心にそう話し合っていた。
そんな2人の姿に暁は思わず笑みがこぼれる。
「ああ、青春だな」
そんなことを口走っていた。
誰かと一緒に夢を追うって素敵なもんだなと暁はそう思った。
それから映像はスタジオへ戻る。
「素敵なお友達ですね! 『はちみつとジンジャー』。これから大注目ですね!」
『はい! ちなみにSNSもあるのでぜひ検索してみてください!』
笑顔でそう告げる凛子。
「じゃああやめ君はどうだった? 同じミュージシャンとしての感想をお願いできるかな?」
番組MCの問いにあやめは笑顔を作り、
「はい。実は僕、この2人を前から知っていて、その時からずっと注目していたんです。知っている方も多いと思うのでここで打ち明けますと、『はちみつとジンジャー』のギターは僕の兄さんなんです!」
嬉しそうにそう答えた。
「そうだったの!? じゃあ今日この番組に出ることはお互いに知っていたんだ?」
「いいえ。僕もびっくりしました! それにアーティスト名の由来である『はちみつジンジャードリンク』のレシピって、僕が兄さんに送ったもので……なんだかちょっと恥ずかしいですね」
照れながらそう答えるあやめ。
「あははは! またそのレシピを教えてくださいね!」
「はい! ……僕は彼らのことをライバルとして見ています。これから大注目だってことは間違いないので、よろしくお願いします!」
「ライバルですか……なんだか素敵な響きですね! それではあやめ君も大注目の『はちみつとジンジャー』をよろしくお願いします! 続いては――」
しおんはテレビに映るあやめを見つめていた。
「あやめ……」
「よかったな、しおん?」
「ははは」
暁の言葉に照れ笑いをするしおん。
そして、突然なり始める通知音。
「な、なんだ!?」
驚いたしおんはスマホの画面を確認する。
「す。すげえ! 見ろよ、真一!! すごい勢いでフォロワーが増えてんぞ!」
「テレビ効果、おそるべしだね。その結果に見合う僕らにならないとね」
「おう! じゃあさっそくやるか!」
「うん」
そして2人は立ち上がってしおんの自室へと向かっていった。
「青春だな」
暁はそんな2人を見て、そう呟いた。
今回のテレビのことはやって良かったと思っている。でも……これからが本番だ。
暁はそんなことを思いながら、目を通したデータのことをふと思い出す。
「スキャンダル、か……」
これから起こるであろう事態に備える。それが今、俺ができることだから――。
暁としおんと真一は3人で共同スペースのテレビ前で番組が始まる瞬間を待っていた。
一緒に観たいと思っていた凛子は当日の番組にリモート出演することが決まっていたので、暁は少々残念に思いつつも、終わった後にまた凛子から感想を聞こうと決めていた。
「うわあ。緊張するな……」
「今更緊張しても仕方ないよ。僕たちは待つだけだよ」
そう言って足を小刻みに揺らす真一。
「そんなこと言って! 真一もさっきから貧乏ゆすりが止まってないぞ? 緊張してんのか??」
「こ、これはまだ始まらないことへの苛立ちだって!!」
「はいはい!」
「ちょっと!!」
緊張しながらも、楽しみにしている様子の真一としおん。そしてそんな2人に暁は、
「そう言えば、凛子が言っていた課題はクリアしたのか?」
そう問いかけた。するとその問いに、
「もちろん」
と自信満々に答える真一。
「ふふふ~、これです!」
しおんはそう言って、開設した動画チャンネルとSNSのアカウントを暁に見せた。
「おおお! これが放送の後にどうなるのか楽しみだな!」
「はいっ!」
「しっ! 始まったよ!」
真一の声を聞いた暁は、テレビに目線を向けた。
「それでは本日のゲストを紹介します! 人気沸騰中の中高校生バンド『ASTER』のギターボーカルを務めている、あやめ君です!」
「皆さん、こんにちは! 『ASTER』のあやめです! 今日はよろしくお願いします!」
テレビからするあやめの声を聞いたしおんは驚いて立ち上がる。
「あ、あやめがゲスト!? 凛子の奴、何にも言ってなかったぞ!」
「お、落ち着けってしおん! ほら、テレビの音が聞こえないだろう?」
「すみません……」
「ま、凛子のことだからあえて言わなかったんだろうけどね」
淡々とそう告げる真一。
確かに収録時にそのことを知れば、しおんが意識して変に力が入ってしまうことを凛子は考えたんだろうな――そう思いながら一人頷く暁。
それから暁たちは再びテレビに視線を移した。
「はい、よろしくお願いします! そして! もう一人のゲストは! アイドルとして、現在再ブレイク中の知立凛子ちゃんです!」
「みなさーん! こんにちは☆ りんりんこと知立凛子です! よろしくお願いします!」
「凛子ちゃんはリモートでの出演になります! それではいつものあのコーナー…――」
それから順調に番組は進んでいった。
「さて次のコーナーは! 凛子ちゃんの持ち込み企画!」
「はい! 私のお友達を紹介しちゃいます! それではVTRスタートです!」
そして施設で撮影した映像が流れる。
「な、なんか恥ずかしいな……」
「この程度で恥ずかしがるなんて、しおんもまだまだだね」
2人はテレビに映る自分の姿を見て、そわそわとしていた。
(2人とも緊張しているんだな……まあ出ていない俺もなんだけどさ)
そう思いながら、静かにテレビを見つめる暁。
「この後、ライブシーンだな」
しおんはそう言って息を飲んだ。
「どう映っているんだろうね……」
そしてしおんたちには内緒で撮影していた準備の映像が流れた。
「こんなのいつの間に……」
「聞いてないけど?」
真一はそう言って暁に冷たい視線を向ける。
「い、いやあ。こういう準備シーンは面白いと凛子が言っていて……あはは」
「凛子の奴~! 好き勝手やりやがったな!」
「あ、始まる」
そしてライブシーンが流れた。
「俺たちの演奏ってはたから見るとこう見えているんだな」
「うん。今までちゃんと見てこなかったけど……なかなかひどいものだね」
「今のところ、もっと大きく動いてもいいんじゃないか?」
「そうだね、あとここは引き気味で――」
しおんと真一は自分たちの映像を見ながら、熱心にそう話し合っていた。
そんな2人の姿に暁は思わず笑みがこぼれる。
「ああ、青春だな」
そんなことを口走っていた。
誰かと一緒に夢を追うって素敵なもんだなと暁はそう思った。
それから映像はスタジオへ戻る。
「素敵なお友達ですね! 『はちみつとジンジャー』。これから大注目ですね!」
『はい! ちなみにSNSもあるのでぜひ検索してみてください!』
笑顔でそう告げる凛子。
「じゃああやめ君はどうだった? 同じミュージシャンとしての感想をお願いできるかな?」
番組MCの問いにあやめは笑顔を作り、
「はい。実は僕、この2人を前から知っていて、その時からずっと注目していたんです。知っている方も多いと思うのでここで打ち明けますと、『はちみつとジンジャー』のギターは僕の兄さんなんです!」
嬉しそうにそう答えた。
「そうだったの!? じゃあ今日この番組に出ることはお互いに知っていたんだ?」
「いいえ。僕もびっくりしました! それにアーティスト名の由来である『はちみつジンジャードリンク』のレシピって、僕が兄さんに送ったもので……なんだかちょっと恥ずかしいですね」
照れながらそう答えるあやめ。
「あははは! またそのレシピを教えてくださいね!」
「はい! ……僕は彼らのことをライバルとして見ています。これから大注目だってことは間違いないので、よろしくお願いします!」
「ライバルですか……なんだか素敵な響きですね! それではあやめ君も大注目の『はちみつとジンジャー』をよろしくお願いします! 続いては――」
しおんはテレビに映るあやめを見つめていた。
「あやめ……」
「よかったな、しおん?」
「ははは」
暁の言葉に照れ笑いをするしおん。
そして、突然なり始める通知音。
「な、なんだ!?」
驚いたしおんはスマホの画面を確認する。
「す。すげえ! 見ろよ、真一!! すごい勢いでフォロワーが増えてんぞ!」
「テレビ効果、おそるべしだね。その結果に見合う僕らにならないとね」
「おう! じゃあさっそくやるか!」
「うん」
そして2人は立ち上がってしおんの自室へと向かっていった。
「青春だな」
暁はそんな2人を見て、そう呟いた。
今回のテレビのことはやって良かったと思っている。でも……これからが本番だ。
暁はそんなことを思いながら、目を通したデータのことをふと思い出す。
「スキャンダル、か……」
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