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第7章 それぞれのサイカイ
第52話ー⑥ 青春
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翌日。暁は食堂で凛子を含めて4人でテレビの段取りの打ち合わせをすることになった。
「それで凛子、プロデューサーとの打ち合わせではどういう流れに決まったんだ?」
暁がそう尋ねると、凛子はスマホを取り出して操作をする。
「はい☆ それじゃあ今一通のメールを送ったので、目を通してください」
暁は凛子から届いたメールを開き、目を通した。
「今回は私がリポーターとして、しおん君と真一君に突撃取材をするという企画になりました!」
「え? そんな企画だったか?」
しおんは首をかしげてそう言った。
「ああ、それなんだが……実は今回のテレビの件を所長にお願いした時、一度は断られたんだよ。でもこの企画なら許可できるってことになってな。何も言わず勝手に企画を変更したことは謝るよ。すまなかった」
暁はそう言ってしおんたちに頭を下げた。
「別に。企画は何でもいいよ。テレビに出られるんだったらさ」
真一は冷静にそう答えた。
「まあ真一がそう言うなら」
しおんは納得してくれたようだった。
「じゃあ話を続けますねえ! 主に取材で使うルートはこの通りです。それからこのタイミングで私が2人の前に突然現れるという設定で、それと――」
凛子は次々と決まった内容を暁たちに説明していく。
「――とまあこんなな感じですけど、何かご意見はありますかあ?」
「いや、意見も何も……これって全部凛子が考えたのか?」
暁は凛子の説明を一通り聞き、あまりのすごさに驚いてきょとんとしていた。
「え、まあ。そうですけど。これくらいできて当たり前ですからね☆」
そう言って、ニコッと微笑む凛子。
「いやいやいや。すごいだろう! な??」
暁は隣にいるしおんにそう言うと、
「は、はい……」
しおんも暁と同様に驚いて、言葉に詰まっているようだった。そんなしおんを見ていた真一も、
「でも、これがプロってことなんだね」
目を見張りながら、そう告げた。
そして驚く3人へ合図するように、凛子はパンっと両手を合わせて鳴らすと、
「じゃあ撮影日まであと2週間ですからね! それまでにしっかりとこの台本と撮影ルートを頭に叩き込んでくださいよ? 真一君は大丈夫だろうけど、しおん君はちょっと心配ですねえ」
そう言って意地悪な笑顔を浮かべた。
「お前! そういう事言わなきゃ、すごいやつだって褒めたかもしれないのに!」
「事実を言ったまでですよお。それにこれくらいのことを覚えられないんじゃ、世界一なんて諦めたほうがいいってことになりますからあ」
「ふん! こんなの余裕だからな!!」
「お前たちは相変わらずだな」
暁はいがみ合う2人をみながら、そう言って笑っていた。
3人の関係性を見ながら、今回の企画でこの3人の未来がどう変わっていくのか、それはとても楽しみだなと暁はそう思ったのだった。
「そういえば、2人のアーティスト名って何て言うんですか?」
「「え??」」
凛子の問いにしおんと真一は目を丸くする。
「え? じゃないですよお! もしかしてそのまま活動するつもりだったんですか?」
「あ、あははは……」
苦笑するしおん。
そんなしおんを見て、凛子はあきれ顔になる。
「はああ。それも当日までに考えておいてくださいねえ」
「わかったよ……」
それからしおんと真一は自室へと戻っていった。
食堂に残った暁は同じく残っている凛子に、
「凛子、いろいろとありがとな」
そう言って微笑んだ。
「いえいえ☆ 前にも言ったと思いますが、しおん君たちには早くここまで来てほしいって思っているんですよお」
「あはは、そうだったな!」
「今回の企画、きっとうまくいきます。そして……」
そう言って遠くを見つめて微笑む凛子。
凛子は2人ならうまくいくって信じているんだな――
そう思いながら、凛子を見る暁。
「2人のこれからが楽しみだな」
「はい☆」
そして暁と凛子は笑いあったのだった。
* * *
しおんと真一は自室に戻る途中、アーティスト名のことを悩んでいた。
「なあ真一。今までアーティスト名なんて考えてこなかったけど、どうする?」
「こればっかりは適当には決められないよね。僕たちの代名詞みたいなものになるわけだからね」
「そうだよなあ」
しおんは頭の後ろで手を組みながらそう答える。
「僕たちらしい名前、か」
「何なんだろうな。俺たちに共通点があるとしたら、音楽くらいだけど」
「確かに。音楽って共通点がなければ、しおんと2人で行動するなんてありえないわけだし……」
淡々とそう告げる真一。
「さらっとひどいこと言うなよ! そんなことないかもしれないだろう!」
しおんはそう言って真一の方を向く。
「さあ。そんなもしもの話はわからない。だって、少なくとも今の僕はしおんと一緒に音楽をやりたいって思っているわけだからさ」
真一は表情を一切変えずにそう言った。
「お、おう」
そう言いながら、照れ顔で鼻をこするしおん。
「とにかくあと2週間で決めないとだね」
「ああ、そうだな!」
そして2人はいつものように歌の練習を始めたのだった。
「それで凛子、プロデューサーとの打ち合わせではどういう流れに決まったんだ?」
暁がそう尋ねると、凛子はスマホを取り出して操作をする。
「はい☆ それじゃあ今一通のメールを送ったので、目を通してください」
暁は凛子から届いたメールを開き、目を通した。
「今回は私がリポーターとして、しおん君と真一君に突撃取材をするという企画になりました!」
「え? そんな企画だったか?」
しおんは首をかしげてそう言った。
「ああ、それなんだが……実は今回のテレビの件を所長にお願いした時、一度は断られたんだよ。でもこの企画なら許可できるってことになってな。何も言わず勝手に企画を変更したことは謝るよ。すまなかった」
暁はそう言ってしおんたちに頭を下げた。
「別に。企画は何でもいいよ。テレビに出られるんだったらさ」
真一は冷静にそう答えた。
「まあ真一がそう言うなら」
しおんは納得してくれたようだった。
「じゃあ話を続けますねえ! 主に取材で使うルートはこの通りです。それからこのタイミングで私が2人の前に突然現れるという設定で、それと――」
凛子は次々と決まった内容を暁たちに説明していく。
「――とまあこんなな感じですけど、何かご意見はありますかあ?」
「いや、意見も何も……これって全部凛子が考えたのか?」
暁は凛子の説明を一通り聞き、あまりのすごさに驚いてきょとんとしていた。
「え、まあ。そうですけど。これくらいできて当たり前ですからね☆」
そう言って、ニコッと微笑む凛子。
「いやいやいや。すごいだろう! な??」
暁は隣にいるしおんにそう言うと、
「は、はい……」
しおんも暁と同様に驚いて、言葉に詰まっているようだった。そんなしおんを見ていた真一も、
「でも、これがプロってことなんだね」
目を見張りながら、そう告げた。
そして驚く3人へ合図するように、凛子はパンっと両手を合わせて鳴らすと、
「じゃあ撮影日まであと2週間ですからね! それまでにしっかりとこの台本と撮影ルートを頭に叩き込んでくださいよ? 真一君は大丈夫だろうけど、しおん君はちょっと心配ですねえ」
そう言って意地悪な笑顔を浮かべた。
「お前! そういう事言わなきゃ、すごいやつだって褒めたかもしれないのに!」
「事実を言ったまでですよお。それにこれくらいのことを覚えられないんじゃ、世界一なんて諦めたほうがいいってことになりますからあ」
「ふん! こんなの余裕だからな!!」
「お前たちは相変わらずだな」
暁はいがみ合う2人をみながら、そう言って笑っていた。
3人の関係性を見ながら、今回の企画でこの3人の未来がどう変わっていくのか、それはとても楽しみだなと暁はそう思ったのだった。
「そういえば、2人のアーティスト名って何て言うんですか?」
「「え??」」
凛子の問いにしおんと真一は目を丸くする。
「え? じゃないですよお! もしかしてそのまま活動するつもりだったんですか?」
「あ、あははは……」
苦笑するしおん。
そんなしおんを見て、凛子はあきれ顔になる。
「はああ。それも当日までに考えておいてくださいねえ」
「わかったよ……」
それからしおんと真一は自室へと戻っていった。
食堂に残った暁は同じく残っている凛子に、
「凛子、いろいろとありがとな」
そう言って微笑んだ。
「いえいえ☆ 前にも言ったと思いますが、しおん君たちには早くここまで来てほしいって思っているんですよお」
「あはは、そうだったな!」
「今回の企画、きっとうまくいきます。そして……」
そう言って遠くを見つめて微笑む凛子。
凛子は2人ならうまくいくって信じているんだな――
そう思いながら、凛子を見る暁。
「2人のこれからが楽しみだな」
「はい☆」
そして暁と凛子は笑いあったのだった。
* * *
しおんと真一は自室に戻る途中、アーティスト名のことを悩んでいた。
「なあ真一。今までアーティスト名なんて考えてこなかったけど、どうする?」
「こればっかりは適当には決められないよね。僕たちの代名詞みたいなものになるわけだからね」
「そうだよなあ」
しおんは頭の後ろで手を組みながらそう答える。
「僕たちらしい名前、か」
「何なんだろうな。俺たちに共通点があるとしたら、音楽くらいだけど」
「確かに。音楽って共通点がなければ、しおんと2人で行動するなんてありえないわけだし……」
淡々とそう告げる真一。
「さらっとひどいこと言うなよ! そんなことないかもしれないだろう!」
しおんはそう言って真一の方を向く。
「さあ。そんなもしもの話はわからない。だって、少なくとも今の僕はしおんと一緒に音楽をやりたいって思っているわけだからさ」
真一は表情を一切変えずにそう言った。
「お、おう」
そう言いながら、照れ顔で鼻をこするしおん。
「とにかくあと2週間で決めないとだね」
「ああ、そうだな!」
そして2人はいつものように歌の練習を始めたのだった。
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