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第7章 それぞれのサイカイ
第51話ー⑦ 俺たちの歌
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暁が出て行った教室。
「何もないといいね、真一君」
「なんで僕にそんなことを言うわけ?」
まゆおの問いかけを不機嫌に返す真一。
「だって、2人で世界一のミュージシャンになるって言っていたでしょ?」
「……そうだっけ」
「真一君?」
真一の返答に首をかしげるまゆお。それから真一は何も言わずにノルマを進める。
「何かあった?」
「別に」
「らしくない、かな」
「は?」
そう言って、真一はまゆおの方を見る。
「最近の君らしくないって思っただけ。最近の真一君は音楽に夢中でいつも楽しそうにしていたように見えたから。どうしたの? しおん君の能力が消失してからやっぱりなんだかおかしいような……君も焦ってる?」
「……まゆおには関係ない」
そう言ってまゆおから顔をそらす真一。
「またそんなことを……」
「おせっかいはやめてくれない? 鬱陶しいって前にも言ったよね」
真一はまゆおから顔をそらしたままそう言った。
「そうだけど、でも放っておけないよ! 心配なんだよ、真一君のことが!」
「うるさいなあ。放っておいてって言ってるだろう!!」
勢いよく立ち上がる真一。
「前にも同じことがあったね」
そう言ってまゆおは筆箱からシャープペンを取り出して構える。
「今回は止める人がいないから、どうなるかわからないけど」
真一はそう言ってまゆおを睨みつける。
「ちょ、2人ともこんなところでやめてくだされ!」
「そ、そうよ! こんなところで能力者同士がぶつかったら、けが人が出ます!」
結衣と織姫が2人にそう告げると、真一は2人を睨む。
「私達にできることはなさそうですねえ。ちょっと避難しましょうか」
そう言って凛子は織姫と結衣を連れて、教室を出た。
「いつもいつもまゆおはおせっかいが過ぎるんだよ!! 僕は1人がいいんだ!! 僕のことなんて構うなよ!!」
真一がそう言うと、教室に風が巻き起こる。
「真一君が何を言おうと関係ない。僕にとってここにいるみんなは家族で仲間なんだ。だから放って置くなんてしたくないんだよ!!」
まゆおは真一の方をまっすぐに見てそう告げる。
「うるさいうるさいうるさい! 僕は一人で良いんだよ!! どうせここから出られない。出て行ってもミュージシャンになんてなれるわけない! 僕は憎しみや怒りの感情がなければ、音楽に向き合うこともできないんだ!!」
(まゆおにはわかるはずない。僕が歌う理由も今のこの感情の正体も――)
「何言っているの? 真一君の音楽への情熱は本物だよ! 僕は君の歌からそれを感じた。だから君が歌う歌は憎しみや怒りの感情だけなんかじゃない!」
(またわかったようなことを――)
そう思いながら、奥歯を噛みしめる真一。
「知った風なこと言うな!! 僕はこの感情がなったら、もう歌う理由がなくなるんだよ! しおんの隣に立つ資格がなくなるんだよっ!!」
「そんなこと――」
「僕はあいつの音楽に対する気持ちに追いつけないんだ! だって……僕が歌うのはは両親と僕を捨てた親戚への復讐のため、なんだから」
そう言って俯きながら拳を握りしめる真一。
「復讐……」
真一の言った言葉に驚きながら、そう呟くまゆお。
(ははは。そりゃ、驚くよね。僕がこんな不純な気持ちで音楽をやっていたって知ったらさ)
「ああ、そうさ。僕はしおんみたいに純粋な気持ちで音楽をやっているわけじゃない。僕の歌は復讐の歌だ。音楽への愛情も好きって気持ちもないんだよ!!」
真一がそう言って顔を上げると、
「そんなことあるわけない!」
廊下の方からそう言う声が聞こえた。
そして急に聞えたその声の方をみるまゆおと真一。そこには暁と共に立つしおんの姿があった。
「何もないといいね、真一君」
「なんで僕にそんなことを言うわけ?」
まゆおの問いかけを不機嫌に返す真一。
「だって、2人で世界一のミュージシャンになるって言っていたでしょ?」
「……そうだっけ」
「真一君?」
真一の返答に首をかしげるまゆお。それから真一は何も言わずにノルマを進める。
「何かあった?」
「別に」
「らしくない、かな」
「は?」
そう言って、真一はまゆおの方を見る。
「最近の君らしくないって思っただけ。最近の真一君は音楽に夢中でいつも楽しそうにしていたように見えたから。どうしたの? しおん君の能力が消失してからやっぱりなんだかおかしいような……君も焦ってる?」
「……まゆおには関係ない」
そう言ってまゆおから顔をそらす真一。
「またそんなことを……」
「おせっかいはやめてくれない? 鬱陶しいって前にも言ったよね」
真一はまゆおから顔をそらしたままそう言った。
「そうだけど、でも放っておけないよ! 心配なんだよ、真一君のことが!」
「うるさいなあ。放っておいてって言ってるだろう!!」
勢いよく立ち上がる真一。
「前にも同じことがあったね」
そう言ってまゆおは筆箱からシャープペンを取り出して構える。
「今回は止める人がいないから、どうなるかわからないけど」
真一はそう言ってまゆおを睨みつける。
「ちょ、2人ともこんなところでやめてくだされ!」
「そ、そうよ! こんなところで能力者同士がぶつかったら、けが人が出ます!」
結衣と織姫が2人にそう告げると、真一は2人を睨む。
「私達にできることはなさそうですねえ。ちょっと避難しましょうか」
そう言って凛子は織姫と結衣を連れて、教室を出た。
「いつもいつもまゆおはおせっかいが過ぎるんだよ!! 僕は1人がいいんだ!! 僕のことなんて構うなよ!!」
真一がそう言うと、教室に風が巻き起こる。
「真一君が何を言おうと関係ない。僕にとってここにいるみんなは家族で仲間なんだ。だから放って置くなんてしたくないんだよ!!」
まゆおは真一の方をまっすぐに見てそう告げる。
「うるさいうるさいうるさい! 僕は一人で良いんだよ!! どうせここから出られない。出て行ってもミュージシャンになんてなれるわけない! 僕は憎しみや怒りの感情がなければ、音楽に向き合うこともできないんだ!!」
(まゆおにはわかるはずない。僕が歌う理由も今のこの感情の正体も――)
「何言っているの? 真一君の音楽への情熱は本物だよ! 僕は君の歌からそれを感じた。だから君が歌う歌は憎しみや怒りの感情だけなんかじゃない!」
(またわかったようなことを――)
そう思いながら、奥歯を噛みしめる真一。
「知った風なこと言うな!! 僕はこの感情がなったら、もう歌う理由がなくなるんだよ! しおんの隣に立つ資格がなくなるんだよっ!!」
「そんなこと――」
「僕はあいつの音楽に対する気持ちに追いつけないんだ! だって……僕が歌うのはは両親と僕を捨てた親戚への復讐のため、なんだから」
そう言って俯きながら拳を握りしめる真一。
「復讐……」
真一の言った言葉に驚きながら、そう呟くまゆお。
(ははは。そりゃ、驚くよね。僕がこんな不純な気持ちで音楽をやっていたって知ったらさ)
「ああ、そうさ。僕はしおんみたいに純粋な気持ちで音楽をやっているわけじゃない。僕の歌は復讐の歌だ。音楽への愛情も好きって気持ちもないんだよ!!」
真一がそう言って顔を上げると、
「そんなことあるわけない!」
廊下の方からそう言う声が聞こえた。
そして急に聞えたその声の方をみるまゆおと真一。そこには暁と共に立つしおんの姿があった。
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