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第7章 それぞれのサイカイ
第51話ー⑤ 俺たちの歌
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自室に戻ったしおんは新曲の練習を1人で黙々と続けていた。
「あああ。まただ……はあ。やっぱり1人じゃ捗らないな」
やっぱりあいつと……真一と一緒がいいな。俺のダメなところをすぐに見つけて指摘してくれてたもんな――。
しおんはそう思いながら、床に寝転がる。
「はあ」
あんなに音楽にまっすぐで純粋に好きでいられる真一を俺は凄いっていつも思っていた。俺もそれくらい音楽を好きになりたいって、あいつを見ていつもそう思っていたんだけど――
『今日は気が乗らないから、やめておくって言ったんだよ』
しおんはそう言った真一のことが気になった。
さっきの真一からはいつもの熱量みたいなものを感じられなかったから。
「いったい、どうしたんだろう。もしかして俺の能力が無くなったことと何か関係があるんじゃ……」
今までの真一の言動でおかしいところはなかったか――? しおんはこの数日間の真一のことを思い出す。
しかししおんが見ていた真一はいつもと変わらず、歌う時以外はずっと無関心な態度で全く心当たりがなかった。
「ダメだ、全然わからん……」
こういう時、あやめはどうするんだろう――しおんはそう思い、スマホを手に取っていた。
きっとメンバー内で喧嘩とかするよな。そんな時、どうしているんだろう。
そしてしおんは無意識のままメッセージアプリであやめにメッセージを送っていた。
『あやめはメンバーのことがわからなくなった時、どうしてる?』
「って、俺何を聞いてんだよ! でももう送っちまったし、とりあえず返信を待つか――!?」
――着信 あやめ
「って反応早いな!! あー、もしもし?」
『兄さん!! 僕は……僕は嬉しいよっ! まさか兄さんから僕に相談を持ち掛けてくれるなんて!!』
少々テンションの高いあやめに少し引きつつ、しおんはさきほどの件での悩みを相談する。
『――なるほど……急にそんな態度か』
「あやめたちもそういうメンバー間での問題ってないのか?」
『あったりしたかな。本当に最初の方だけどね! みんなの目標がまだ定まっていない時、僕たちはまだバラバラだったんだ』
そう言うあやめに驚くしおん。
「バラバラって……今の『ASTER』からは考えられないな」
『はは。そうだね。昔は僕たちもいろいろあったからね。でもさ、そんな時に僕たちは音楽で繋がったんだよ』
「音楽で?」
どういう事だろうと首をひねるしおん。
『うん。結局、僕たちはミュージシャンだから、話し合うよりも音楽でわかりあったって感じかな!
お互いの音をぶつけあって、それが楽しくなっちゃってさ! この個性的なメンバーの個性的な音をまとめたら、僕たちは日本一になれるんじゃない? ってことになって、気が付いたら僕たちはみんなで同じ一番を目指してた』
初めから順風満帆ってわけじゃなかったんだな――と自分が知らないところであやめが苦労していたことを知ったしおん。
「そんなことがあったんだな」
『そう。一番を……てっぺんを目指すなら、誰もが通る道なのかもしれないね。音楽で分かり合うことができれば、きっとこれから先もずっとうまくいく。どんな困難が待っていてもね』
これから先もずっとうまくいく、か――。
あやめの言葉から力をもらったしおんは小さく微笑むと、
「そうか……わかった。ありがとうな、あやめ! 俺も真一に俺の音を思いっきりぶつけてみるよ。こうなったら、ガチンコだな!」
そう答えたのだった。
『ふふっ。うまくいくことを祈ってるよ。それと僕は待っているからね。2人が僕たちへ挑戦してくる日を』
「ああ! 今のうちにその場所を堪能しておけよ! 俺たちがすぐに追い抜かして、世界一になるんだからなっ!」
しおんが意気揚々とそう告げると、
『兄さんたちこそ! 簡単に僕たちの音楽に勝てると思わないでよ?』
あやめも煽るようにそう言った。
「ははは! 楽しみだな!」
『うん。そうだね! じゃあ兄さん。僕、仕事だから切るよ? またいい報告があれば、連絡待っているね。バイバイ』
そう言って電話を切るあやめ。
「いい報告か。そうだな。待ってろよ!」
そしてしおんは持っていたスマホを机に置き、ギターを手に取った。
「俺の音をぶつけるか……」
ただギターを弾くだけじゃダメだ。もっと真一に伝える方法――。
「歌だ! 歌を作ろう!! 真一の為の歌を作って、俺がその歌を真一にぶつけてやるんだ! よっしゃ! そうと決まればさっそく作曲するぜ」
それから数時間、しおんは曲作りをしていた。
真一への想いを音に変え、そしていつもは恥ずかしくて言えない言葉を詞に乗せる。
届くかなんてわからない。でも俺の想いを、音楽を真一に思いっきりぶつける。ただそれだけだ――!
そして数時間後。真っ暗だったはずの空は明るくなっていた。
「やったああああ! ついに、できたぞおおお!」
そう言った後、しおんの意識は途切れたのだった。
「あああ。まただ……はあ。やっぱり1人じゃ捗らないな」
やっぱりあいつと……真一と一緒がいいな。俺のダメなところをすぐに見つけて指摘してくれてたもんな――。
しおんはそう思いながら、床に寝転がる。
「はあ」
あんなに音楽にまっすぐで純粋に好きでいられる真一を俺は凄いっていつも思っていた。俺もそれくらい音楽を好きになりたいって、あいつを見ていつもそう思っていたんだけど――
『今日は気が乗らないから、やめておくって言ったんだよ』
しおんはそう言った真一のことが気になった。
さっきの真一からはいつもの熱量みたいなものを感じられなかったから。
「いったい、どうしたんだろう。もしかして俺の能力が無くなったことと何か関係があるんじゃ……」
今までの真一の言動でおかしいところはなかったか――? しおんはこの数日間の真一のことを思い出す。
しかししおんが見ていた真一はいつもと変わらず、歌う時以外はずっと無関心な態度で全く心当たりがなかった。
「ダメだ、全然わからん……」
こういう時、あやめはどうするんだろう――しおんはそう思い、スマホを手に取っていた。
きっとメンバー内で喧嘩とかするよな。そんな時、どうしているんだろう。
そしてしおんは無意識のままメッセージアプリであやめにメッセージを送っていた。
『あやめはメンバーのことがわからなくなった時、どうしてる?』
「って、俺何を聞いてんだよ! でももう送っちまったし、とりあえず返信を待つか――!?」
――着信 あやめ
「って反応早いな!! あー、もしもし?」
『兄さん!! 僕は……僕は嬉しいよっ! まさか兄さんから僕に相談を持ち掛けてくれるなんて!!』
少々テンションの高いあやめに少し引きつつ、しおんはさきほどの件での悩みを相談する。
『――なるほど……急にそんな態度か』
「あやめたちもそういうメンバー間での問題ってないのか?」
『あったりしたかな。本当に最初の方だけどね! みんなの目標がまだ定まっていない時、僕たちはまだバラバラだったんだ』
そう言うあやめに驚くしおん。
「バラバラって……今の『ASTER』からは考えられないな」
『はは。そうだね。昔は僕たちもいろいろあったからね。でもさ、そんな時に僕たちは音楽で繋がったんだよ』
「音楽で?」
どういう事だろうと首をひねるしおん。
『うん。結局、僕たちはミュージシャンだから、話し合うよりも音楽でわかりあったって感じかな!
お互いの音をぶつけあって、それが楽しくなっちゃってさ! この個性的なメンバーの個性的な音をまとめたら、僕たちは日本一になれるんじゃない? ってことになって、気が付いたら僕たちはみんなで同じ一番を目指してた』
初めから順風満帆ってわけじゃなかったんだな――と自分が知らないところであやめが苦労していたことを知ったしおん。
「そんなことがあったんだな」
『そう。一番を……てっぺんを目指すなら、誰もが通る道なのかもしれないね。音楽で分かり合うことができれば、きっとこれから先もずっとうまくいく。どんな困難が待っていてもね』
これから先もずっとうまくいく、か――。
あやめの言葉から力をもらったしおんは小さく微笑むと、
「そうか……わかった。ありがとうな、あやめ! 俺も真一に俺の音を思いっきりぶつけてみるよ。こうなったら、ガチンコだな!」
そう答えたのだった。
『ふふっ。うまくいくことを祈ってるよ。それと僕は待っているからね。2人が僕たちへ挑戦してくる日を』
「ああ! 今のうちにその場所を堪能しておけよ! 俺たちがすぐに追い抜かして、世界一になるんだからなっ!」
しおんが意気揚々とそう告げると、
『兄さんたちこそ! 簡単に僕たちの音楽に勝てると思わないでよ?』
あやめも煽るようにそう言った。
「ははは! 楽しみだな!」
『うん。そうだね! じゃあ兄さん。僕、仕事だから切るよ? またいい報告があれば、連絡待っているね。バイバイ』
そう言って電話を切るあやめ。
「いい報告か。そうだな。待ってろよ!」
そしてしおんは持っていたスマホを机に置き、ギターを手に取った。
「俺の音をぶつけるか……」
ただギターを弾くだけじゃダメだ。もっと真一に伝える方法――。
「歌だ! 歌を作ろう!! 真一の為の歌を作って、俺がその歌を真一にぶつけてやるんだ! よっしゃ! そうと決まればさっそく作曲するぜ」
それから数時間、しおんは曲作りをしていた。
真一への想いを音に変え、そしていつもは恥ずかしくて言えない言葉を詞に乗せる。
届くかなんてわからない。でも俺の想いを、音楽を真一に思いっきりぶつける。ただそれだけだ――!
そして数時間後。真っ暗だったはずの空は明るくなっていた。
「やったああああ! ついに、できたぞおおお!」
そう言った後、しおんの意識は途切れたのだった。
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