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第7章 それぞれのサイカイ

第50.5話ー① それぞれの休日

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 朝食を摂り終えたまゆおは竹刀を手に持ち、屋上に向かっていた。そして屋上へ着くと、

「最近は早朝のランニングも始めたから、前より体力がついた気がするなあ」

 そんなことを呟きながら竹刀を袋から取り出して構え、それからいつものように素振りを始めた。

(そろそろ誰かと手合わせを、と思うけど……でもここの生徒たちじゃ、本気で打ち合うことは出来ないだろうな)

 そんなことを思いながら、まゆおは素振りを続けた。 

 ――それから数時間後。

「ふう。今日の素振りはこの辺で終わりにしよう。休憩をはさんで、次は筋トレをしようかな」

 まゆおはその場に腰を下ろすと、そのままそこに寝転んだ。

「いい天気だな。いろはちゃん、今どこで何をしているんだろう。同じ空を見ていたらいいな」

 そう言ってまゆおは微笑んだ。

「大学に行って、また剣道で有名になれば、いろはちゃんは僕を見つけてくれるかな……ううん。きっと見つけてくれる。僕たちは必ずまた会えるって僕は信じているから」

 それからまゆおは身体を起こし、両手を上にあげて背伸びをしてから腹筋を始めた。

(頑張ろう。今はただがむしゃらに)

 まゆおはいろはにまた会うため、今日も剣道に励むのだった。


 * * *


 昼間のバラエティ番組。

 そのテレビ番組に映るのは、司会の男性アナウンサーとモニターに映る凛子だった。

「はーい。それでは本日のゲストは!! 知立凛子ちゃんです!」
『皆さん! こんにちは! 『りんりん』こと知立凛子です☆ 今日はよろしくお願いしますぅ』
「よろしくお願いします! それではさっそくこのコーナー行ってみましょう!」

 そう言って司会のアナウンサーがスムーズに次々とコーナーを進めていく。

 そして終盤のコーナーでは、凛子が描いているアイドル像を語る時間となった。

「じゃあ凛子ちゃんはどんなアイドルでいたいって思っているの?」

 アナウンサーのその問いに、凛子は頬に指を添えて少し考えると、

『実は私、理想のアイドル像とかないんですよぉ』

 ときっぱり答えた。

 その答えが面白いと思ったのか、アナウンサーは次の質問を凛子に投げかける。

「確か凛子ちゃんは元子役でしたよね? やっぱり女優になるための足掛かりとしてアイドルをやっているのでしょうか?」

 凛子はその問いに少し考えてから、

『巷ではそんな噂があるから、皆さんがそう思うこともおかしくはないですよねえ。お昼のバラエティでこんな話をしていいかわからないですが、私がこの業界に居続ける理由を話していきますねぇ』

 笑顔でそう答えた。

「あはは! それはなんだか興味深いですなあ」

『そうですかあ? えっとじゃあさっきの問いの答えですけど、以前の私にとってアイドル活動は確かに女優に戻るための『足掛かり』でした』

「……以前の私??」

 アナウンサーはそう呟き、凛子の話に耳を傾ける。

『はい! 今はアイドル活動も楽しいんですよ? 知らない私に出会えるし、ビッグステージを夢見て頑張る子たちの熱を近くで感じられますし』
「へえ、なるほど」
『それに歌も芝居もできるって芸能活動の幅が広がると思うのです。だからアイドル活動も無駄な時間なんかじゃなくて、私が成長するために必要なことなんだなって思っています!』

 凛子が笑顔でそう答えるとアナウンサーは頷きながら、

「……すごく素敵なお話をありがとうございます! それで何ですが、そう思うに至ったきっかけも聞かせてもらえたらと思います」

 そう言って話を広げていく。

『きっかけですか……出会いですかね。まっすぐな人に出会ったんです。叶うかもわからない大きな夢を掲げて、馬鹿みたいに突っ走って。私もそんな生き方をしてみたいなとそう思ったからですかね!』

「そうなんですね。確かにたった一人との出会いが自分の人生を大きく変えるなんてこともありますからね。凛子ちゃんにとって、その人との出会いは必然的なものだったのかもしれませんね!」

『うーん、そうなんですかね? でもありがとうございます!』

 そう言って最後にとびっきりの笑顔を見せる凛子。

「さて、それではそろそろ終わりのお時間が近づいてきました。凛子ちゃん、今日は素敵なお話をたくさんしていただきありがとうございました!」

『こちらこそ、番組に呼んでいただきありがとうございました! またいつでも呼んでくれるとうれしいです☆』

「はい! またぜひ!! それでは今日はこの辺で! せーのっ」

「『ばいばーい』」

 番組終了後。

「凛子ちゃん、今日は本当にありがとうね! すごくよかったよ!」

 番組プロデューサーは画面越しに凛子のトークを絶賛していた。

『そう言っていただき、ありがとうございます』
「中学生なのに仕事は一人でもちゃんとこなせるし、礼儀正しいし。本当にできた子だなあ」
『恐縮です! そんなことを言っていただけるなんて、とても嬉しいです!』

 凛子はそう言って頭を下げた。

「またぜひ出演してね!」
『もちろんです!!』
「ああ、そうだ! もう一つ凛子ちゃんに聞きたかったんだけどさ」
『はい?』
「ちょっと前にバズった2人組のミュージシャンがいたでしょ? そこの発信元が凛子ちゃんだったから、彼らのことを何か知っていると思ってね」

 プロデューサーからの言葉を聞き、そんなこともあったなあと思い出す凛子。そしてプロデューサーがなぜ彼らのことを気にするのかと疑問を持った。

『何か、あったんですか?』
「あ、えっとね。今度その子たちのドキュメンタリーを録りたいって思うんだけど……どこの誰なのかってわかるかと思って」

 ドキュメンタリー!? 無名な2人にそんなチャンスが回って来るなんて――凛子はそう思い、それから少し考え込む。

(2人にとってチャンスではあるけど、でも私が勝手に決めることでもない、か)

『なるほど……確かに私は彼らを知っていますが、彼らにそのことを聞いてみてから情報の開示をするってことでもいいですか? 少し訳ありなので』
「もちろんだよ! じゃあいい返事を期待して待っているね!」

 笑顔でそう答えるプロデューサー。

『はい!!』
「じゃあお疲れ様~」
『お疲れさまでした!』

 凛子はそう言って頭を下げると、そこで凛子が見ていた画面が切れた。



「さて、どうしたものか……」

 凛子は頬杖をつきながら、そんなことを呟く。

「とりあえず次のライブの振りを復習してから考えよう」

 そう言って凛子はダンスの練習を始めた。

 凛子の休日はまだ始まったばかりである。
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