226 / 501
第6章 家族
第45話ー① 少女たちの出会いの物語
しおりを挟む
今日も暁はいつものように生徒たちが勉強する姿を見守っていた。
そして終業チャイムが鳴る時間になる頃、教室にはマリアとまゆおの2人が残っていた。
「2人とも今日の分は終わったか?」
「はい。ギリギリですけど、何とか……」
そう言いながら、まゆおは机に突っ伏す。
「私はもう終わってる。今日は試験範囲の予習をしていたの」
「そうか。2人ともお疲れさん! マリアはあんまり根詰めすぎるなよ」
「うん。わかった」
そう言って微笑むマリア。
しっかりしているマリアだから心配はしていないが、なるべく注意して見守っていないとな。また剛の時みたいになってほしくないから――。
暁はそんなことを思いつつ、微笑むマリアの顔を見つめたのだった。
それからしばらくしてチャイムが鳴ると、まゆおとマリアはそれぞれ荷物をまとめて教室を出て行った。
そして一人残った暁も荷物をまとめてから、教室を後にする。
それから職員室に向かう途中、暁は廊下で久しぶりの光景を目にした。
「最近見ないと思っていたから、今は違う作品を研究しているのかと思っていたよ、結衣」
廊下に一人で寝そべる結衣。
「ははは。たまには初心に帰ることも必要かなと思いましてな」
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
「じゃあ、これを……」
そして例のごとく、結衣は暁に一枚のメモ用紙を差し出す。
「えっと……『お前にばかり無理をさせてしまって悪かったな。そんなにお前が傷ついていたなんて、気が付かなかったよ』ふふふ……」
今日のセリフ読みも安定の棒読みで、暁は演技の才能のなさに笑いがこみ上げていた。
「いえ、全ては私の弱さが引き起こしたことです。あなたが自分を責める必要はありません……」
(結衣、今日はやけに気合が入ってるな)
そんなことを思いながら、続きのセリフを読む暁。
「『すまない、ありがとう。そしてこんな状況で悪いが、お前の力を少しだけ貸してはくれないか』」
「もちろんです。私はこの世界を救うためにここへ来たのですから」
そう言って微笑む結衣。
「あ……」
その圧巻の芝居に暁は心を奪われ、セリフを言わなければならないことを忘れていた。
「はい、カーット! 先生! セリフ!!」
「あ、悪い!! つい感動して……それにしても、結衣は演技が上手になったな! 驚いたよ!」
暁がそう言うと、結衣は腰に手を当てて得意げな顔を見せる。
「りんりんから芝居の稽古をつけてもらってますからな! やっぱり天才子役と呼ばれて一世を風靡した役者さんは格が違いますです!」
「そういうことか」
凛子のことはしおんや結衣の話で知っていたが、本当にすごい子役だったんだなと結衣の上達具合を見て暁はそう思った。
「結衣は着実に夢へと近づいているんだな」
「そうでしょうか! もしそうだとしたら嬉しいですな! マリアちゃんが頑張っている姿を見て、私も触発された感じはありますがね」
そう言って笑う結衣。
「そういえば、結衣とマリアってだいぶタイプが違うけど、どうやってそんなに仲良くなったんだ?」
「あー、それ。聞いちゃいますか? 我々の百合百合なお話、聞きたいですか?」
「ゆ、百合百合なお話……? ま、まあ興味はあるかもしれないな」
「ふふふ! じゃあ教えてあげましょう。あれは私が初めて施設に来た日のことです――」
そして結衣はマリアとの過去を語り始める――。
そして終業チャイムが鳴る時間になる頃、教室にはマリアとまゆおの2人が残っていた。
「2人とも今日の分は終わったか?」
「はい。ギリギリですけど、何とか……」
そう言いながら、まゆおは机に突っ伏す。
「私はもう終わってる。今日は試験範囲の予習をしていたの」
「そうか。2人ともお疲れさん! マリアはあんまり根詰めすぎるなよ」
「うん。わかった」
そう言って微笑むマリア。
しっかりしているマリアだから心配はしていないが、なるべく注意して見守っていないとな。また剛の時みたいになってほしくないから――。
暁はそんなことを思いつつ、微笑むマリアの顔を見つめたのだった。
それからしばらくしてチャイムが鳴ると、まゆおとマリアはそれぞれ荷物をまとめて教室を出て行った。
そして一人残った暁も荷物をまとめてから、教室を後にする。
それから職員室に向かう途中、暁は廊下で久しぶりの光景を目にした。
「最近見ないと思っていたから、今は違う作品を研究しているのかと思っていたよ、結衣」
廊下に一人で寝そべる結衣。
「ははは。たまには初心に帰ることも必要かなと思いましてな」
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
「じゃあ、これを……」
そして例のごとく、結衣は暁に一枚のメモ用紙を差し出す。
「えっと……『お前にばかり無理をさせてしまって悪かったな。そんなにお前が傷ついていたなんて、気が付かなかったよ』ふふふ……」
今日のセリフ読みも安定の棒読みで、暁は演技の才能のなさに笑いがこみ上げていた。
「いえ、全ては私の弱さが引き起こしたことです。あなたが自分を責める必要はありません……」
(結衣、今日はやけに気合が入ってるな)
そんなことを思いながら、続きのセリフを読む暁。
「『すまない、ありがとう。そしてこんな状況で悪いが、お前の力を少しだけ貸してはくれないか』」
「もちろんです。私はこの世界を救うためにここへ来たのですから」
そう言って微笑む結衣。
「あ……」
その圧巻の芝居に暁は心を奪われ、セリフを言わなければならないことを忘れていた。
「はい、カーット! 先生! セリフ!!」
「あ、悪い!! つい感動して……それにしても、結衣は演技が上手になったな! 驚いたよ!」
暁がそう言うと、結衣は腰に手を当てて得意げな顔を見せる。
「りんりんから芝居の稽古をつけてもらってますからな! やっぱり天才子役と呼ばれて一世を風靡した役者さんは格が違いますです!」
「そういうことか」
凛子のことはしおんや結衣の話で知っていたが、本当にすごい子役だったんだなと結衣の上達具合を見て暁はそう思った。
「結衣は着実に夢へと近づいているんだな」
「そうでしょうか! もしそうだとしたら嬉しいですな! マリアちゃんが頑張っている姿を見て、私も触発された感じはありますがね」
そう言って笑う結衣。
「そういえば、結衣とマリアってだいぶタイプが違うけど、どうやってそんなに仲良くなったんだ?」
「あー、それ。聞いちゃいますか? 我々の百合百合なお話、聞きたいですか?」
「ゆ、百合百合なお話……? ま、まあ興味はあるかもしれないな」
「ふふふ! じゃあ教えてあげましょう。あれは私が初めて施設に来た日のことです――」
そして結衣はマリアとの過去を語り始める――。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記
ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。
これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。
1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
貴方の傍に幸せがないのなら
なか
恋愛
「みすぼらしいな……」
戦地に向かった騎士でもある夫––ルーベル。
彼の帰りを待ち続けた私––ナディアだが、帰還した彼が発した言葉はその一言だった。
彼を支えるために、寝る間も惜しんで働き続けた三年。
望むままに支援金を送って、自らの生活さえ切り崩してでも支えてきたのは……また彼に会うためだったのに。
なのに、なのに貴方は……私を遠ざけるだけではなく。
妻帯者でありながら、この王国の姫と逢瀬を交わし、彼女を愛していた。
そこにはもう、私の居場所はない。
なら、それならば。
貴方の傍に幸せがないのなら、私の選択はただ一つだ。
◇◇◇◇◇◇
設定ゆるめです。
よろしければ、読んでくださると嬉しいです。
うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。
藍染 迅
ファンタジー
AIが突然覚醒した? AIアリスは東明(あずまあきら)60歳を異世界転生させ、成仏への近道を辿らせるという。
ナノマシンに助けられつつ、20代の体に転生したあきらは冒険者トーメーとして新たな人生を歩み始める。
不老不死、自動回復など、ハイスペックてんこ盛り? 3つの下僕(しもべ)まで現れて、火炎放射だ、電撃だ。レールガンに超音波砲まで飛び出した。
なのに目指すは飾職兼養蜂業者? お気楽冒険譚の始まりだ!
デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします
古森真朝
ファンタジー
乙女ゲームなのに、大河ドラマも真っ青の重厚シナリオが話題の『エトワール・クロニクル』(通称エトクロ)。友人から勧められてあっさりハマった『わたし』は、気の毒すぎるライバル令嬢が救われるエンディングを探して延々とやり込みを続けていた……が、なぜか気が付いたらキャラクター本人に憑依トリップしてしまう。
しかも時間軸は、ライバルが婚約破棄&追放&死亡というエンディングを迎えた後。馬車ごと崖から落ちたところを、たまたま通りがかった冒険者たちに助けられたらしい。家なし、資金なし、ついでに得意だったはずの魔法はほぼすべて使用不可能。そんな状況を見かねた若手冒険者チームのリーダー・ショウに勧められ、ひとまず名前をイブマリーと改めて近くの町まで行ってみることになる。
しかしそんな中、道すがらに出くわしたモンスターとの戦闘にて、唯一残っていた生得魔法【ギフト】が思いがけない万能っぷりを発揮。ついでに神話級のレア幻獣になつかれたり、解けないはずの呪いを解いてしまったりと珍道中を続ける中、追放されてきた実家の方から何やら陰謀の気配が漂ってきて――
「もうわたし、理不尽はコリゴリだから! 楽しい余生のジャマするんなら、覚悟してもらいましょうか!!」
長すぎる余生、というか異世界ライフを、自由に楽しく過ごせるか。元・負け犬令嬢第二の人生の幕が、いま切って落とされた!
※エブリスタ様、カクヨム様、小説になろう様で並行連載中です。皆様の応援のおかげで第一部を書き切り、第二部に突入いたしました!
引き続き楽しんでいただけるように努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる