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第6章 家族
第44話ー⑧ 変わらない関係
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「もしもし? ありがとうな、いろは」
『いいってことよ! アタシこそ、またまゆおと話すチャンスをくれてあんがとね、センセー!』
それから暁はまゆおの部屋の時計に目を移すと、
「いろいろと話したいところだが、そろそろ時間だな」
そう言って残念そうな表情をした。
『そうだねー。角田さんも時計を指さしてニコニコしてるから、この辺で終わりだね』
「ははは! じゃあ元気でやるんだぞ! また会おうな!」
『うん! じゃーねー』
そう言って電話を切るいろは。そして暁はまゆおに視線を向ける。
するとまゆおの先ほどのまでの暗い表情は消えていた。
「先生、ありがとうございます。僕あのままじゃ、どうなっていたか」
「いいや、いいんだよ。俺はまゆおが無事だっただけでそれで……それにいろはに連絡を取るよう言ってきたのは真一なんだ」
それを聞くと、まゆおは目を見開いて驚いていた。
「え、真一君が!?」
「いつものまゆおじゃなくて、なんだか腹が立つ! とか言ってたな。それと、歌に影響が出る! とかも」
「そ、そうなんですね……あとで謝らないとな」
そう言って苦笑いをするまゆお。
「そうしてやってくれ。じゃあ俺は部屋に戻るよ」
「あ、はい! 先生! 今日はありがとうございました」
暁はまゆおのその言葉に申し訳なさそうな表情をする。
「今回も俺は何もしてないさ。全部、いろはと真一のおかげだよ」
「そんなことはないです。先生がいてくれたから、僕はまたいろはちゃんとお話できました。真一君の行動を知ることができました。いつも僕たちのために行動してくれて、本当にありがとうございます!」
そう言って深々と頭を下げるまゆお。
「や、やめてくれよ! 俺はそんな!」
暁は恥ずかしくなって、慌てながらまゆおにそう言った。
そしてまゆおは顔を上げて無邪気に微笑んでいた。
「ありがとうな、まゆお! そんなに言ってくれて嬉しいよ」
それから暁はまゆおの部屋を後にした。
その日の夕食時。食堂にて。
まゆおは食べるものを皿にのせると、真一の前まで行って目の前に座った。
「……何?」
真一は顔を全く動かさず、まゆおにそう告げた。
「お礼を言わなくちゃって思って。さっき部屋に行ったら出てきてくれなかったから」
「聞えなかっただけ」
そう言って表情一つ変えずに食事をする真一を見て、まゆおはくすっと笑った。
「そうかなって思ったよ。……真一君、いろいろとありがとう。先生にいろはちゃんと話すことを提案してくれたんだよね」
「別に、自分のためにそうしただけ」
「それでも嬉しいよ。本当にありがとう」
まゆおはそう言いながら、真一に笑顔を向けた。
「……やっといつものまゆおに戻ったね。初めからそうやって笑っていればいいんだよ」
そう言って真一は立ち上がり、食器を片付けて食堂を出て行った。
「いろはちゃんの言う通りなのかもしれない。これからはちゃんと笑顔でいよう」
そう言ってから、まゆおは夕食を摂った。
僕と本当の家族との関係は何も変わらなかったけれど、きっとそれでいいんだと思った。だって僕は大切なことに気が付けたんだから。
辛いときはお互いが支え合って、楽しい時は思いっきり笑いあって。そしてたまに本気で喧嘩をしたり、その後には不器用ながらもちゃんと仲直りをしたり――。
僕が本当の家族でどれだけ求めても許されなかった家族の温かさがここにはある。
今の僕にとって、ここで過ごすみんなが家族なんだ。だからここにいる時間を大切にしていこうって僕はそう思ったよ――。
『いいってことよ! アタシこそ、またまゆおと話すチャンスをくれてあんがとね、センセー!』
それから暁はまゆおの部屋の時計に目を移すと、
「いろいろと話したいところだが、そろそろ時間だな」
そう言って残念そうな表情をした。
『そうだねー。角田さんも時計を指さしてニコニコしてるから、この辺で終わりだね』
「ははは! じゃあ元気でやるんだぞ! また会おうな!」
『うん! じゃーねー』
そう言って電話を切るいろは。そして暁はまゆおに視線を向ける。
するとまゆおの先ほどのまでの暗い表情は消えていた。
「先生、ありがとうございます。僕あのままじゃ、どうなっていたか」
「いいや、いいんだよ。俺はまゆおが無事だっただけでそれで……それにいろはに連絡を取るよう言ってきたのは真一なんだ」
それを聞くと、まゆおは目を見開いて驚いていた。
「え、真一君が!?」
「いつものまゆおじゃなくて、なんだか腹が立つ! とか言ってたな。それと、歌に影響が出る! とかも」
「そ、そうなんですね……あとで謝らないとな」
そう言って苦笑いをするまゆお。
「そうしてやってくれ。じゃあ俺は部屋に戻るよ」
「あ、はい! 先生! 今日はありがとうございました」
暁はまゆおのその言葉に申し訳なさそうな表情をする。
「今回も俺は何もしてないさ。全部、いろはと真一のおかげだよ」
「そんなことはないです。先生がいてくれたから、僕はまたいろはちゃんとお話できました。真一君の行動を知ることができました。いつも僕たちのために行動してくれて、本当にありがとうございます!」
そう言って深々と頭を下げるまゆお。
「や、やめてくれよ! 俺はそんな!」
暁は恥ずかしくなって、慌てながらまゆおにそう言った。
そしてまゆおは顔を上げて無邪気に微笑んでいた。
「ありがとうな、まゆお! そんなに言ってくれて嬉しいよ」
それから暁はまゆおの部屋を後にした。
その日の夕食時。食堂にて。
まゆおは食べるものを皿にのせると、真一の前まで行って目の前に座った。
「……何?」
真一は顔を全く動かさず、まゆおにそう告げた。
「お礼を言わなくちゃって思って。さっき部屋に行ったら出てきてくれなかったから」
「聞えなかっただけ」
そう言って表情一つ変えずに食事をする真一を見て、まゆおはくすっと笑った。
「そうかなって思ったよ。……真一君、いろいろとありがとう。先生にいろはちゃんと話すことを提案してくれたんだよね」
「別に、自分のためにそうしただけ」
「それでも嬉しいよ。本当にありがとう」
まゆおはそう言いながら、真一に笑顔を向けた。
「……やっといつものまゆおに戻ったね。初めからそうやって笑っていればいいんだよ」
そう言って真一は立ち上がり、食器を片付けて食堂を出て行った。
「いろはちゃんの言う通りなのかもしれない。これからはちゃんと笑顔でいよう」
そう言ってから、まゆおは夕食を摂った。
僕と本当の家族との関係は何も変わらなかったけれど、きっとそれでいいんだと思った。だって僕は大切なことに気が付けたんだから。
辛いときはお互いが支え合って、楽しい時は思いっきり笑いあって。そしてたまに本気で喧嘩をしたり、その後には不器用ながらもちゃんと仲直りをしたり――。
僕が本当の家族でどれだけ求めても許されなかった家族の温かさがここにはある。
今の僕にとって、ここで過ごすみんなが家族なんだ。だからここにいる時間を大切にしていこうって僕はそう思ったよ――。
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