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第6章 家族
第44話ー④ 変わらない関係
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職員室。まゆおと別れた暁は、本日分の報告書の作成をしていた。
「まゆおは兄さんと仲直りできたかな……」
暁は食堂にいるまゆおたちを思い出して、そんなことをふと呟いていた。
そういえば、別れる時のまゆおは少し様子がおかしかったような気がする。何か不安を感じているような――暁は顎に手を当てながら、そう思っていた。
(でも久しぶりに会う家族と、どんな会話をしていいのか不安になる気持ちは俺にもわかる。この間の俺がそうだったからな)
暁は「ふっ」と笑うと、
「きっとまゆおたちもうまくいく。きっといい方向に変わっていけるはずだ」
そう呟いて報告書の作成を再開したのだった。
それから数分後のこと、廊下からバタバタとする足音が聞こえた暁は、
「ん……? 誰の足音だ?」
そう言って廊下の方に目を向けた。すると、職員室の扉が勢いよく開き、
「先生! すぐ食堂に来てください! 兄さんが!」
まゆおが息を切らしながら職員室にやってきた。
(随分、慌ててるけど、何かあったのか)
そう思いながら、まゆおの顔を見る暁。そして暁はまゆおの頬の傷に気が付く。
「何があったんだ? それに、その頬の傷は――」
暁の問いにまゆおは、
「あとで説明します! だから、今は来てください!」
そう言って暁に迫った。
暁はそんなまゆおの勢いに圧倒されて、
「わ、わかった……」
そう言って、まゆおと共に職員室を出たのだった。
暁とまゆおが食堂に着くと、中央で横たわっている武雄の姿があった。
「これは……」
倒れているまゆおの兄、そしてまゆおの頬の傷――
そして暁は散乱するテーブルや椅子を見て、この場所で何かが起こったことを察した。
「それよりも、兄さんが! もしかしたら『ポイズン・アップル』のせいで心が崩壊してしまったかもしれないんです」
まゆおは暁から目を背けて、悲しそうな声でそう告げた。
「『ポイズン・アップル』……? どういうことだ!?」
「さっき兄さんが言っていたんです。毒リンゴの力を借りたって……」
「なんだって!?」
まさかそんなことになっているなんて――暁はそう思いながら、唇を噛んだ。
「とりあえず今は研究所へ行こう。所長たちなら、どうにかする方法を知っているかもしれない!」
「はい……」
それから暁は所長に連絡を取った。
『ポイズン・アップル』が原因でまゆおの兄が倒れた可能性を伝えると、所長はとても驚いたようですぐに迎えの車を施設に向かわせたのだった。
――数分後。研究所から迎えの車が来た。
暁はマリアに施設のことを頼み、まゆおと武雄を連れて研究所へ向かった。
研究所に向かう途中の車内は、静寂の時が流れていた。そしてその静寂を破るように、暁はまゆおへ問いかける。
「まゆお、兄さんと一体何があったんだ。なんでこんな状況になった?」
まゆおは暁の問いに深刻な表情をすると、悄然として答える。
「仲直りできると思ったんです……でも兄さんは僕のことを憎んでいました」
そう言ったまゆおは、両手の拳をぎゅっと握りしめた。
「そんな……」
まゆおの話を聞き、暁は愕然とした。
もしかして2人で話す前にまゆおの様子がおかしかったのは、兄さんからの感情を察していたからだったのか――
暁はそう思い、顔が険しくなる。
「やっぱり僕と関わると、みんな不幸になるんだ……」
そう言って、まゆおは肩を落とした。
「そんなことはない! 俺はまゆおと関わって自分が不幸だなんて思っていないぞ! だから――」
「先生だってわからないじゃないですか! もしかしたらこれから先に不幸が待っているかもしれない!! 僕と関わり続ける限り、ずっと不幸と隣合わせなんですよ……」
まゆおは暁の言葉に被せるようそう言った。
まゆおは俯きながら両手の拳を握ったままで、それ以上は何も発することはなかった。
「まゆお……」
そんなことはない! と今のまゆおに言ってもきっと届かないだろう――そう思いながら、掛ける言葉を探した暁だったが、まゆおにとって今一番必要な言葉がわからずに目を伏せた。
(俺じゃ、今のまゆおは救えない、のか――)
そう思いながら暁は俯くまゆおを悲痛な表情で見つめるだけで、何も言うことができなかった。
そんな自分を情けなく思い、そしてまた生徒のために何もしてやれなかった自分を暁は責めたのだった――。
「まゆおは兄さんと仲直りできたかな……」
暁は食堂にいるまゆおたちを思い出して、そんなことをふと呟いていた。
そういえば、別れる時のまゆおは少し様子がおかしかったような気がする。何か不安を感じているような――暁は顎に手を当てながら、そう思っていた。
(でも久しぶりに会う家族と、どんな会話をしていいのか不安になる気持ちは俺にもわかる。この間の俺がそうだったからな)
暁は「ふっ」と笑うと、
「きっとまゆおたちもうまくいく。きっといい方向に変わっていけるはずだ」
そう呟いて報告書の作成を再開したのだった。
それから数分後のこと、廊下からバタバタとする足音が聞こえた暁は、
「ん……? 誰の足音だ?」
そう言って廊下の方に目を向けた。すると、職員室の扉が勢いよく開き、
「先生! すぐ食堂に来てください! 兄さんが!」
まゆおが息を切らしながら職員室にやってきた。
(随分、慌ててるけど、何かあったのか)
そう思いながら、まゆおの顔を見る暁。そして暁はまゆおの頬の傷に気が付く。
「何があったんだ? それに、その頬の傷は――」
暁の問いにまゆおは、
「あとで説明します! だから、今は来てください!」
そう言って暁に迫った。
暁はそんなまゆおの勢いに圧倒されて、
「わ、わかった……」
そう言って、まゆおと共に職員室を出たのだった。
暁とまゆおが食堂に着くと、中央で横たわっている武雄の姿があった。
「これは……」
倒れているまゆおの兄、そしてまゆおの頬の傷――
そして暁は散乱するテーブルや椅子を見て、この場所で何かが起こったことを察した。
「それよりも、兄さんが! もしかしたら『ポイズン・アップル』のせいで心が崩壊してしまったかもしれないんです」
まゆおは暁から目を背けて、悲しそうな声でそう告げた。
「『ポイズン・アップル』……? どういうことだ!?」
「さっき兄さんが言っていたんです。毒リンゴの力を借りたって……」
「なんだって!?」
まさかそんなことになっているなんて――暁はそう思いながら、唇を噛んだ。
「とりあえず今は研究所へ行こう。所長たちなら、どうにかする方法を知っているかもしれない!」
「はい……」
それから暁は所長に連絡を取った。
『ポイズン・アップル』が原因でまゆおの兄が倒れた可能性を伝えると、所長はとても驚いたようですぐに迎えの車を施設に向かわせたのだった。
――数分後。研究所から迎えの車が来た。
暁はマリアに施設のことを頼み、まゆおと武雄を連れて研究所へ向かった。
研究所に向かう途中の車内は、静寂の時が流れていた。そしてその静寂を破るように、暁はまゆおへ問いかける。
「まゆお、兄さんと一体何があったんだ。なんでこんな状況になった?」
まゆおは暁の問いに深刻な表情をすると、悄然として答える。
「仲直りできると思ったんです……でも兄さんは僕のことを憎んでいました」
そう言ったまゆおは、両手の拳をぎゅっと握りしめた。
「そんな……」
まゆおの話を聞き、暁は愕然とした。
もしかして2人で話す前にまゆおの様子がおかしかったのは、兄さんからの感情を察していたからだったのか――
暁はそう思い、顔が険しくなる。
「やっぱり僕と関わると、みんな不幸になるんだ……」
そう言って、まゆおは肩を落とした。
「そんなことはない! 俺はまゆおと関わって自分が不幸だなんて思っていないぞ! だから――」
「先生だってわからないじゃないですか! もしかしたらこれから先に不幸が待っているかもしれない!! 僕と関わり続ける限り、ずっと不幸と隣合わせなんですよ……」
まゆおは暁の言葉に被せるようそう言った。
まゆおは俯きながら両手の拳を握ったままで、それ以上は何も発することはなかった。
「まゆお……」
そんなことはない! と今のまゆおに言ってもきっと届かないだろう――そう思いながら、掛ける言葉を探した暁だったが、まゆおにとって今一番必要な言葉がわからずに目を伏せた。
(俺じゃ、今のまゆおは救えない、のか――)
そう思いながら暁は俯くまゆおを悲痛な表情で見つめるだけで、何も言うことができなかった。
そんな自分を情けなく思い、そしてまた生徒のために何もしてやれなかった自分を暁は責めたのだった――。
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