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第5章 新しい出会い
第36話ー③ 追憶とセレンディピティ
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自室に戻ったしおんはさっそくアコースティックギターを片手に持ち、真一を探した。
「絶対に真一となら、俺はてっぺんを目指せる……『あいつ』なんかに負けないミュージシャンになれるんだ……」
しおんは走りながら、そんなことを呟いていた。
そして数分間。施設内をくまなく探し回ったものの、しおんは真一を見つけ出すことはできなかった。
「ったく……どこにいるんだよ……。建物の中にいないんじゃ、もう外しか」
しおんは膝に手を当てて息を切らしていると、そこへまゆおがやってきた。
「あれ、しおん君? どうしたの?? そんなに息を切らして……」
息を切らしているしおんを不思議に思ったまゆおは、しおんにそう尋ねた。
「じ、実は……。真一を、探しているんだけど……全然、見当たらなくて……」
「あー。なるほど……」
そしてまゆおは窓の外から空を見上げながら、目を細める。
「今日は天気もいいし、たぶん……」
「? 心あたりがあるのか?」
「まあ、一応ね。ほら、あの木の陰……」
しおんはまゆおが指をさした方を見つめると、そこには木の陰で寝転んでいる真一がいた。
「天気がいいときは、たまにあそこで音楽を聴いているみたいなんだ。風でも感じているんじゃないのかな」
「そうなのか……」
「もしかして、そのギターで何かしようって思っているの?」
しおんが右手に持つギターを見ながら、まゆおはそう言った。
「ああ。一緒に音楽をやりたいなって思っていたんだけど……なかなか頷いてもらえなくて」
「真一君と一緒に何かをしようって思ったら、結構な覚悟がいるからね」
笑いながら、そう答えるまゆお。
「まゆおもそういうことがあったのか……?」
「自分から何かをしようって提案したわけじゃないんだけど、何度かね。その度に、ぶつかって……そして少しずつお互いのことをわかるようになってきたのかもしれない」
まゆおはしみじみとそう言った。
自分の知らないところで、まゆおと真一の二人はきっといろんなことがあったんだろうなとまゆおの顔を見てしおんはそう思った。
それに比べて俺はまだ真一のことを何も知らないし、わかってもいない。
そんな人間に自分の夢を簡単に預けるはずがない、よな……本気なら、なおさら――。
そう思ったしおんは、
「やっぱり俺、真一と組むのはやめておくよ。あいつの夢の邪魔をしたくはない……俺みたいな中途半端な奴じゃ、あいつの才能を無駄にしてしまいそうだしな……」
俯きながらまゆおにそう告げた。
そしてしおんの言葉を聞いたまゆおは、
「そっか。しおん君の音楽に対する想いがその程度なんだね」
淡々としおんにそう言った。
「う……」
「そういうところを見透かされているから、真一君は頷かないんだと思うよ。君は真一君の才能を潰さない為じゃなく、ただ不安なんでしょ? どうせ自分にはギターの才能がないんだ! って」
「……」
「しおん君がやりたいことをやればいいと僕は思う。それじゃ、頑張って!」
そう言ってまゆおはどこかへ行ってしまった。
「俺は何のために、音楽をやりたいんだよ……」
しおんはただ茫然とその場に立ち尽くした。
「はあ」
大きなため息をつきながら、腰に手をあてて顔を上げるしおん。
まゆおは優しそうなイメージがあったのに、結構はっきりものを言うんだな――
しおんはそんなことを思いながら、窓の方へ向かった。
そしてしおんはギターケースを壁に立てかけてから窓の枠に肘をつき、そこから真一を見ていた。
何かするわけでもなく、ただ寝転びヘッドホンで音楽を聴いている真一。
「あいつ、本当に音楽が好きなんだな……ずっとあのまま聴き続けてる」
そういえば、俺はいつから音楽が好きになったんだっけ――
そんなことを考えて、しおんはボーっと真一を見つめながら、ふと昔のことを思い出していた。
そうだ。小4の時に初めてアコギをもらって、それでなんとなく練習していたら、ばあちゃんが喜んでくれたんだよな――
幼いしおんが祖母の前でギターを弾いてみせていた。
『しーちゃんは本当にギターが上手ねぇ。おばあちゃん、聞いているとワクワクするわ』
しおんの祖母は笑顔でしおんにそう伝えた。
『でもまだまだへたっぴだし……人に聴かせられるレベルじゃないよ』
しおんが口をとがらせてそう言うと、
『大事なのは上手い下手じゃないのよ。そこに愛があるかどうかなの。しーちゃんのギターからは愛の音が聞こえる。だからおばあちゃんは、しーちゃんのギターが好きなのよ』
そう言って優しくしおんの頭を撫でるしおんの祖母。
そんな祖母の優しさにしおんは笑顔になり、
『ありがとう。ばあちゃん! 俺、いつかみんなを笑顔にできるすごいギタリストになるからな!!』
そう答えたのだった――。
それから毎日ばあちゃんのために演奏したっけ――。
幼い頃の記憶を思い出したしおんは、覚悟を決めて頷く。
「上手い下手じゃないんだよな……よし、決めた! 俺のロックへの熱い気持ちを真一に届けりゃいいんだ!!」
そしてしおんは両手をぐっと握りしめてから、ギターケースを持って走り出した。
待ってろよ、真一!! お前から俺と組みたいって言わせてやるからな――!
「絶対に真一となら、俺はてっぺんを目指せる……『あいつ』なんかに負けないミュージシャンになれるんだ……」
しおんは走りながら、そんなことを呟いていた。
そして数分間。施設内をくまなく探し回ったものの、しおんは真一を見つけ出すことはできなかった。
「ったく……どこにいるんだよ……。建物の中にいないんじゃ、もう外しか」
しおんは膝に手を当てて息を切らしていると、そこへまゆおがやってきた。
「あれ、しおん君? どうしたの?? そんなに息を切らして……」
息を切らしているしおんを不思議に思ったまゆおは、しおんにそう尋ねた。
「じ、実は……。真一を、探しているんだけど……全然、見当たらなくて……」
「あー。なるほど……」
そしてまゆおは窓の外から空を見上げながら、目を細める。
「今日は天気もいいし、たぶん……」
「? 心あたりがあるのか?」
「まあ、一応ね。ほら、あの木の陰……」
しおんはまゆおが指をさした方を見つめると、そこには木の陰で寝転んでいる真一がいた。
「天気がいいときは、たまにあそこで音楽を聴いているみたいなんだ。風でも感じているんじゃないのかな」
「そうなのか……」
「もしかして、そのギターで何かしようって思っているの?」
しおんが右手に持つギターを見ながら、まゆおはそう言った。
「ああ。一緒に音楽をやりたいなって思っていたんだけど……なかなか頷いてもらえなくて」
「真一君と一緒に何かをしようって思ったら、結構な覚悟がいるからね」
笑いながら、そう答えるまゆお。
「まゆおもそういうことがあったのか……?」
「自分から何かをしようって提案したわけじゃないんだけど、何度かね。その度に、ぶつかって……そして少しずつお互いのことをわかるようになってきたのかもしれない」
まゆおはしみじみとそう言った。
自分の知らないところで、まゆおと真一の二人はきっといろんなことがあったんだろうなとまゆおの顔を見てしおんはそう思った。
それに比べて俺はまだ真一のことを何も知らないし、わかってもいない。
そんな人間に自分の夢を簡単に預けるはずがない、よな……本気なら、なおさら――。
そう思ったしおんは、
「やっぱり俺、真一と組むのはやめておくよ。あいつの夢の邪魔をしたくはない……俺みたいな中途半端な奴じゃ、あいつの才能を無駄にしてしまいそうだしな……」
俯きながらまゆおにそう告げた。
そしてしおんの言葉を聞いたまゆおは、
「そっか。しおん君の音楽に対する想いがその程度なんだね」
淡々としおんにそう言った。
「う……」
「そういうところを見透かされているから、真一君は頷かないんだと思うよ。君は真一君の才能を潰さない為じゃなく、ただ不安なんでしょ? どうせ自分にはギターの才能がないんだ! って」
「……」
「しおん君がやりたいことをやればいいと僕は思う。それじゃ、頑張って!」
そう言ってまゆおはどこかへ行ってしまった。
「俺は何のために、音楽をやりたいんだよ……」
しおんはただ茫然とその場に立ち尽くした。
「はあ」
大きなため息をつきながら、腰に手をあてて顔を上げるしおん。
まゆおは優しそうなイメージがあったのに、結構はっきりものを言うんだな――
しおんはそんなことを思いながら、窓の方へ向かった。
そしてしおんはギターケースを壁に立てかけてから窓の枠に肘をつき、そこから真一を見ていた。
何かするわけでもなく、ただ寝転びヘッドホンで音楽を聴いている真一。
「あいつ、本当に音楽が好きなんだな……ずっとあのまま聴き続けてる」
そういえば、俺はいつから音楽が好きになったんだっけ――
そんなことを考えて、しおんはボーっと真一を見つめながら、ふと昔のことを思い出していた。
そうだ。小4の時に初めてアコギをもらって、それでなんとなく練習していたら、ばあちゃんが喜んでくれたんだよな――
幼いしおんが祖母の前でギターを弾いてみせていた。
『しーちゃんは本当にギターが上手ねぇ。おばあちゃん、聞いているとワクワクするわ』
しおんの祖母は笑顔でしおんにそう伝えた。
『でもまだまだへたっぴだし……人に聴かせられるレベルじゃないよ』
しおんが口をとがらせてそう言うと、
『大事なのは上手い下手じゃないのよ。そこに愛があるかどうかなの。しーちゃんのギターからは愛の音が聞こえる。だからおばあちゃんは、しーちゃんのギターが好きなのよ』
そう言って優しくしおんの頭を撫でるしおんの祖母。
そんな祖母の優しさにしおんは笑顔になり、
『ありがとう。ばあちゃん! 俺、いつかみんなを笑顔にできるすごいギタリストになるからな!!』
そう答えたのだった――。
それから毎日ばあちゃんのために演奏したっけ――。
幼い頃の記憶を思い出したしおんは、覚悟を決めて頷く。
「上手い下手じゃないんだよな……よし、決めた! 俺のロックへの熱い気持ちを真一に届けりゃいいんだ!!」
そしてしおんは両手をぐっと握りしめてから、ギターケースを持って走り出した。
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