175 / 501
第5章 新しい出会い
第33話ー⑦ 仲間
しおりを挟む
暁とマリアは職員室に着くと、その辺にあるの椅子に腰を掛けた。
「なんだかここで二人きりだと、マリアが過去のことを打ち明けてくれた日のことを思い出すな」
「そうだね」
あの時のマリアは、自分の能力とその能力のせいで不幸になるキリヤのことで悩んでいた。あれから1年半くらい経つ。本当にときの流れは早いものだ。
そんなことを思い出しながら、暁は微笑んでいた。
「それで、話ってなんだ? やっぱりさっきのことか?」
マリアはコクンと頷く。
「そうか」
それは先ほどまで行われていたレクリエーションのこと。マリアはしおんに触れられたはずなのに、フェロモンの能力が発動しなかった――。
「私、能力が消失したのかなって」
「そう、かもな。年齢的に考えてもおかしな話じゃない。……どうする? 一応検査してみるか?」
マリアは少し考えたのち、小さく頷いた。
「じゃあ今度の週末、俺と研究所に行こうか。ついでに剛と、会えたらキリヤたちの顔を見に行こうか」
「うん」
そして暁とマリアは、今週末に研究所に行くことになったのだった。
その日の晩。暁は自室のベッドで寝転びながら一日を振り返っていた。
「今日はいろんなことがあったなあ」
まずはまゆおと真一の関係性の変化。まさか2人が肩を並べる日が来るなんてな。去年の2人からは想像もできなかったな。
そんなことを思いながら、暁はくすっと笑っていた。
「やっぱり生徒たちの成長を直に感じられるのは嬉しいな。教師になって、本当に良かったよ」
そして3人の転入生のそれぞれの能力と危なっかしさをふと思い出し、
「3人とも表面には出さないけれど、何かを秘めているように思うんだよな……。バトルをしているとき、別人格のような雰囲気があったし」
不安な表情を浮かべてそう呟いていた。
しおんはごく普通の高校生の雰囲気を持っているけれど、なぜか凛子にだけ食って掛かるところがある。なんだかむきになっているような……。
そしてその凛子もしおんにだけは、なんだかあたりがきついようにも思うし。
犬猿の仲ってやつなのかな? でもなんだかんだ2人はうまくやっていけるような気がする、と暁は思った。
「一番の問題は、織姫か……」
結果的にレクリエーションには参加してくれたし、楽しんでいるようにも見えた。けどやっぱり俺に対しての不満はぬぐえないみたいだな――。
そんなことを思い、「はあ」と小さくため息をつく。
「まあ気長に距離を詰めていくしかないか……。誤解も解かなくちゃならないし」
そして暁が最後に思ったのはマリアの一件。
長年マリアを苦しめてきた能力の消失の可能性が見えた。まだ確かなことはわからないけれど、もし能力の消失だとしたら、きっとマリアは今まで抱えてきたことすべてから解放されるんだろう――。
「マリアの能力がなくなっているといいな」
暁はそんなことを願いながら、気が付いたら眠りに落ちていたのだった。
「なんだかここで二人きりだと、マリアが過去のことを打ち明けてくれた日のことを思い出すな」
「そうだね」
あの時のマリアは、自分の能力とその能力のせいで不幸になるキリヤのことで悩んでいた。あれから1年半くらい経つ。本当にときの流れは早いものだ。
そんなことを思い出しながら、暁は微笑んでいた。
「それで、話ってなんだ? やっぱりさっきのことか?」
マリアはコクンと頷く。
「そうか」
それは先ほどまで行われていたレクリエーションのこと。マリアはしおんに触れられたはずなのに、フェロモンの能力が発動しなかった――。
「私、能力が消失したのかなって」
「そう、かもな。年齢的に考えてもおかしな話じゃない。……どうする? 一応検査してみるか?」
マリアは少し考えたのち、小さく頷いた。
「じゃあ今度の週末、俺と研究所に行こうか。ついでに剛と、会えたらキリヤたちの顔を見に行こうか」
「うん」
そして暁とマリアは、今週末に研究所に行くことになったのだった。
その日の晩。暁は自室のベッドで寝転びながら一日を振り返っていた。
「今日はいろんなことがあったなあ」
まずはまゆおと真一の関係性の変化。まさか2人が肩を並べる日が来るなんてな。去年の2人からは想像もできなかったな。
そんなことを思いながら、暁はくすっと笑っていた。
「やっぱり生徒たちの成長を直に感じられるのは嬉しいな。教師になって、本当に良かったよ」
そして3人の転入生のそれぞれの能力と危なっかしさをふと思い出し、
「3人とも表面には出さないけれど、何かを秘めているように思うんだよな……。バトルをしているとき、別人格のような雰囲気があったし」
不安な表情を浮かべてそう呟いていた。
しおんはごく普通の高校生の雰囲気を持っているけれど、なぜか凛子にだけ食って掛かるところがある。なんだかむきになっているような……。
そしてその凛子もしおんにだけは、なんだかあたりがきついようにも思うし。
犬猿の仲ってやつなのかな? でもなんだかんだ2人はうまくやっていけるような気がする、と暁は思った。
「一番の問題は、織姫か……」
結果的にレクリエーションには参加してくれたし、楽しんでいるようにも見えた。けどやっぱり俺に対しての不満はぬぐえないみたいだな――。
そんなことを思い、「はあ」と小さくため息をつく。
「まあ気長に距離を詰めていくしかないか……。誤解も解かなくちゃならないし」
そして暁が最後に思ったのはマリアの一件。
長年マリアを苦しめてきた能力の消失の可能性が見えた。まだ確かなことはわからないけれど、もし能力の消失だとしたら、きっとマリアは今まで抱えてきたことすべてから解放されるんだろう――。
「マリアの能力がなくなっているといいな」
暁はそんなことを願いながら、気が付いたら眠りに落ちていたのだった。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる