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第4章 過去・今・未来
第28話ー⑤ 繋がる絆
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研究所のカフェ。ゆめかさんは座って待っていた。
「遅れてすみません」
「いや。私も今来たところさ」
ゆめかさんはそう言って優しく微笑んだ。
「それで、キリヤ君。話って何なんだい?」
ゆめかさんは笑顔を崩さず僕に問う。
「……本当は襲撃事件の真実を聞きにしたんですが、その前に一つだけ確認させてください」
「構わないよ。何でも聞いてくれ」
僕は自分が至った答えが真実なのかはわからないけれど、それでも自分で考えて出したことへの答え合わせをしたくなった。
「ゆめかさん……あなたは幼いときにこの場所へ来ているんじゃないですか?」
「まあ私もかつては能力者だったからね。その答えはイエスだよ」
あくまでも僕が真相を言うまでは、自分のことを話さないつもりなのか……。
「では質問を変えますけど、ゆめかさんは『時間渡り』の能力を持っていましたよね?」
「ふふふ……。そうか。自分でよくここまでたどり着いたね。さすが、所長が見込んだだけのことはある!」
ゆめかさんはそうながら、嬉しそうに笑っていた。
「えっと、それはつまり……」
「そうさ。君の言う通り、私は『時間渡り』の能力があった。そして私は20年前、君たちと共にあの施設で過ごしていたよ」
「じゃあやっぱり、ゆめかさんがシロなんですね!!」
「ああ。キリヤ君はどこまで先生から聞いたんだい?」
ゆめかさんはニヤリとしながら、僕にそう問いかける。
「シロの能力と過去から来たってことだけですね」
「そうか。……じゃあ今後のために、襲撃事件での君の見解を教えてもらえるかい?」
僕は自分が知り得た情報から、内容を整理してゆめかさんに話した。
「シロは、あの事件の後に記憶を取り戻していますよね。だとしたら、あの事件はシロにとって必要な出来事だった」
「うんうん」
「だからゆめかさんは、事件の刺激をシロが受けやすいように僕と先生をあの施設から遠ざけた……ってところですか?」
「さすがだね、キリヤ君。正解だよ」
ゆめかさんは笑いながら、僕にそう言った。
僕はその答えを聞き、ほっと胸を撫でおろした。
「よかった……。ゆめかさんが襲撃犯の仲間なんじゃないかってずっと心配だったんですよ。でもやっぱりゆめかさんはゆめかさんだったんですね」
僕は笑顔でゆめかさんにそう言った。
「誤解させてしまってすまなかったね。私が変に動くと歴史が変わってしまうかもしれなかったから、本当のことは言えなかったんだ」
そう言って、頭を下げるゆめかさん。
「いいんですよ! 僕は真実がわかっただけで満足です」
「ふふふ。君は相変わらず優しいね。ありがとう」
そう言って笑うゆめかさん。
そしてその顔はある日のシロと重なって見えた。
やっぱりゆめかさんがシロなんだって、改めて実感した瞬間だった。
「おや? もう話は終わったのかい?」
そう言いながら、カフェに所長がやってきた。
「ちょうど種明かしが終わったところです」
「そうか、そうか」
何かを悟ったように頷く所長。
「所長は知っていたんですか?」
「ああ。すまないね、君たちを出し抜くみたいなことをしてしまって。でもあの事件でけが人が出なかったのは、本当に運が良かったよ。キリヤ君の能力あってのことだ」
「そ、そんな……僕は」
僕がそう言うとゆめかさんは茶化すように、
「実際そうなんだから、ここは喜ぶところだよ?」
そう言いながらニヤニヤしていた。
「は、はい……」
そしてその言葉に僕は恥ずかしくなって俯くと、所長とゆめかさんはそんな僕を見て終始笑っていたのだった。
帰りの車の中、僕はいつものように窓から見える茜色の空を見つめていた。
春になったら施設と研究所の往復で見るこの空とはお別れになる。そして小学生のころからずっといたあの場所も。
「あと5か月、か……」
僕はそんな独り言を漏らしていた。
卒業に対して少し寂しさを感じつつも、僕は4月からの新生活に期待を抱いていた。もしかして奏多もここを卒業するときはこんな気持ちだったのだろうか。
そんなことを思いつつ、窓の外をぼーっと見つめていた。
「キリヤ君、到着しましたよ」
そう言う運転手のお兄さんの声を聞き、ぼーっとしていた僕は車が施設に着いたことを知った。
「今日はありがとうございました!」
運転手のお兄さんにそう告げてから僕は車を降り、施設の敷地内へと向かった。
そしてエントランスゲートに近づくと、そこに人影が見えた。
「誰だろう……」
そう思いつつ、僕がエントランスゲート前に着くと、
「おかえり!」
そう言って、先生が笑顔で迎えてくれた。
「先生? なんでここに?」
「いや。なんとなく、な」
「ふふ。ありがとう。嬉しいよ!」
それから僕は先生と建物の中へ向かって歩き出す。
「先生。僕もシロに会ってきたよ。こんなに近くに答えがあったなんて、正直すごく驚いた」
「はは。そうだろう? 俺も真相を知ったときは驚いたんだよな!」
そう言いながら、先生は笑顔で僕の方を向く。
「でも約束通り、ちゃんとシロにまた会えたね」
「ああ。きっと俺たちは『白雪姫症候群』っていう力で、繋がっていく運命だったのかもしれないな」
繋がっていく運命か……。
それはシロだけじゃなくて、きっと先生と僕もそうなのかもしれない。
「……先生。僕たちがこれからどんな道を歩いて行ったとしても、僕はこれからもずっと先生の生徒だし、仲間で友達で家族だと思っているよ」
「どうしたんだ、いきなり?」
「うーん。なんだろうね!」
僕は先生に笑顔でそう答えた。
僕たちの繋がりは消えることはない。
シロが過去と今を繋いだように、僕たちも今と未来を繋げていけるんじゃないかと僕は思ったんだ。
「遅れてすみません」
「いや。私も今来たところさ」
ゆめかさんはそう言って優しく微笑んだ。
「それで、キリヤ君。話って何なんだい?」
ゆめかさんは笑顔を崩さず僕に問う。
「……本当は襲撃事件の真実を聞きにしたんですが、その前に一つだけ確認させてください」
「構わないよ。何でも聞いてくれ」
僕は自分が至った答えが真実なのかはわからないけれど、それでも自分で考えて出したことへの答え合わせをしたくなった。
「ゆめかさん……あなたは幼いときにこの場所へ来ているんじゃないですか?」
「まあ私もかつては能力者だったからね。その答えはイエスだよ」
あくまでも僕が真相を言うまでは、自分のことを話さないつもりなのか……。
「では質問を変えますけど、ゆめかさんは『時間渡り』の能力を持っていましたよね?」
「ふふふ……。そうか。自分でよくここまでたどり着いたね。さすが、所長が見込んだだけのことはある!」
ゆめかさんはそうながら、嬉しそうに笑っていた。
「えっと、それはつまり……」
「そうさ。君の言う通り、私は『時間渡り』の能力があった。そして私は20年前、君たちと共にあの施設で過ごしていたよ」
「じゃあやっぱり、ゆめかさんがシロなんですね!!」
「ああ。キリヤ君はどこまで先生から聞いたんだい?」
ゆめかさんはニヤリとしながら、僕にそう問いかける。
「シロの能力と過去から来たってことだけですね」
「そうか。……じゃあ今後のために、襲撃事件での君の見解を教えてもらえるかい?」
僕は自分が知り得た情報から、内容を整理してゆめかさんに話した。
「シロは、あの事件の後に記憶を取り戻していますよね。だとしたら、あの事件はシロにとって必要な出来事だった」
「うんうん」
「だからゆめかさんは、事件の刺激をシロが受けやすいように僕と先生をあの施設から遠ざけた……ってところですか?」
「さすがだね、キリヤ君。正解だよ」
ゆめかさんは笑いながら、僕にそう言った。
僕はその答えを聞き、ほっと胸を撫でおろした。
「よかった……。ゆめかさんが襲撃犯の仲間なんじゃないかってずっと心配だったんですよ。でもやっぱりゆめかさんはゆめかさんだったんですね」
僕は笑顔でゆめかさんにそう言った。
「誤解させてしまってすまなかったね。私が変に動くと歴史が変わってしまうかもしれなかったから、本当のことは言えなかったんだ」
そう言って、頭を下げるゆめかさん。
「いいんですよ! 僕は真実がわかっただけで満足です」
「ふふふ。君は相変わらず優しいね。ありがとう」
そう言って笑うゆめかさん。
そしてその顔はある日のシロと重なって見えた。
やっぱりゆめかさんがシロなんだって、改めて実感した瞬間だった。
「おや? もう話は終わったのかい?」
そう言いながら、カフェに所長がやってきた。
「ちょうど種明かしが終わったところです」
「そうか、そうか」
何かを悟ったように頷く所長。
「所長は知っていたんですか?」
「ああ。すまないね、君たちを出し抜くみたいなことをしてしまって。でもあの事件でけが人が出なかったのは、本当に運が良かったよ。キリヤ君の能力あってのことだ」
「そ、そんな……僕は」
僕がそう言うとゆめかさんは茶化すように、
「実際そうなんだから、ここは喜ぶところだよ?」
そう言いながらニヤニヤしていた。
「は、はい……」
そしてその言葉に僕は恥ずかしくなって俯くと、所長とゆめかさんはそんな僕を見て終始笑っていたのだった。
帰りの車の中、僕はいつものように窓から見える茜色の空を見つめていた。
春になったら施設と研究所の往復で見るこの空とはお別れになる。そして小学生のころからずっといたあの場所も。
「あと5か月、か……」
僕はそんな独り言を漏らしていた。
卒業に対して少し寂しさを感じつつも、僕は4月からの新生活に期待を抱いていた。もしかして奏多もここを卒業するときはこんな気持ちだったのだろうか。
そんなことを思いつつ、窓の外をぼーっと見つめていた。
「キリヤ君、到着しましたよ」
そう言う運転手のお兄さんの声を聞き、ぼーっとしていた僕は車が施設に着いたことを知った。
「今日はありがとうございました!」
運転手のお兄さんにそう告げてから僕は車を降り、施設の敷地内へと向かった。
そしてエントランスゲートに近づくと、そこに人影が見えた。
「誰だろう……」
そう思いつつ、僕がエントランスゲート前に着くと、
「おかえり!」
そう言って、先生が笑顔で迎えてくれた。
「先生? なんでここに?」
「いや。なんとなく、な」
「ふふ。ありがとう。嬉しいよ!」
それから僕は先生と建物の中へ向かって歩き出す。
「先生。僕もシロに会ってきたよ。こんなに近くに答えがあったなんて、正直すごく驚いた」
「はは。そうだろう? 俺も真相を知ったときは驚いたんだよな!」
そう言いながら、先生は笑顔で僕の方を向く。
「でも約束通り、ちゃんとシロにまた会えたね」
「ああ。きっと俺たちは『白雪姫症候群』っていう力で、繋がっていく運命だったのかもしれないな」
繋がっていく運命か……。
それはシロだけじゃなくて、きっと先生と僕もそうなのかもしれない。
「……先生。僕たちがこれからどんな道を歩いて行ったとしても、僕はこれからもずっと先生の生徒だし、仲間で友達で家族だと思っているよ」
「どうしたんだ、いきなり?」
「うーん。なんだろうね!」
僕は先生に笑顔でそう答えた。
僕たちの繋がりは消えることはない。
シロが過去と今を繋いだように、僕たちも今と未来を繋げていけるんじゃないかと僕は思ったんだ。
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