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第4章 過去・今・未来
第28話ー④ 繋がる絆
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その日の夕食時。先生は施設に戻ってきた。
「シロは大丈夫だった?」
マリアは不安な表情で先生にシロのことを聞いているようだった。
その問いに先生は笑顔で答える。
「ああ。幸せそうだったよ。それに、また必ず会えるように頑張るって言っていたよ」
「よかった……」
先生の言葉にマリアは安心しているようだった。
それから僕は先生に後から話したいことがあると伝えてから、夕食を終えた。
夕食後、僕は職員室へ。
優香が僕を心配して、着いていこうかと言ってくれたけれど、僕は一人で先生と話すことにした。
職員室に入ると、先生はデスクのPCに向かって作業をしていた。
「おう、来たか」
そして僕は先生のデスクの隣の席に腰を掛けた。
「話ってなんだ? また進路のことで悩みがあるのか?」
先生はそう言いながら、優しく笑う。
「ううん。違うんだ。……その、シロのことで心配ごとと言うか」
「シロのこと、か」
「うん。この間、襲撃事件があったでしょ? 狙いがシロだったのなら、シロを施設の外に出すのは危険なんじゃないかって思って。それにシロの家族も……」
先生は腕を組み、少し考えてから口を開いた。
「そう、だよな。ごめんな、キリヤには真実を話しておくべきだったかもしれない」
「真実……?」
「ああ。実は、この時代にシロの家族なんかいないんだ」
「は?」
先生が何を言っているのか、わからなかった。
この時代に家族はいない……? それってどういうこと?
「それじゃ、まるで……シロがこの時代の人間じゃないみたいな言い方じゃない?」
「ああ。そうだ。シロはこの時代の人間じゃない。シロは20年前から来た」
「え……!? それって、どういう……」
20年前……? 先生は何を言っているんだろう。
僕はそう思いながら、顎に手を当てて考える。
「シロの能力さ。『時間渡り』って言って、違う時代に飛ぶことができる能力」
「『時間渡り』……」
僕は先生から聞いた真実に驚愕していた。
シロにそんな能力があったなんて、と……。
「ああ。そしてシロは元々その力でこの時代に来てしまって、その時の能力の暴走がきっかけで記憶喪失になっていたみたいなんだ」
「それでシロは記憶喪失になっていたんだね」
「ああ。だから、すべてを思い出したシロは自分の能力で元の時代に戻っていったんだ」
そう言って微笑む先生。
しかし、僕は不安だった。
「でも、本当に戻れたかどうかなんてわからないでしょ!? もしもうまく戻れなくて、どこかの時空を彷徨っていたら……」
そう言って僕はその不安な感情を先生にぶつけた。
僕たちにはシロが無事かどうか確認する術がない。それなのになんで先生はこんなに冷静なんだろう。シロのことを心配していないのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
「大丈夫だ。ちゃんとシロは帰れた。そして今もちゃんと生きているよ」
先生は僕を安心させるように、優しい笑顔でそう答える。
「もしかして、シロと会ったの?」
僕がそう言うと、先生はニコニコするだけでそれ以上は何も答えてはくれなかった。
しかしその笑顔は、先生がこの時代のシロに会ったことを物語っていた。
優香の言う通り、先生の行動には意味があったってことはわかったけど……先日から、ゆめかさんも先生も僕に直接真実を教えてくれない。
僕だってもう子供じゃない。だから知る権利はあるはずなのに……。なぜ二人は僕に何も教えてくれないのだろう。
「先生。シロとはどこであったの?」
「……俺の口からは言えない。でもキリヤもすぐにわかるさ」
「そんな、曖昧な答え……」
「キリヤももう子供じゃないんだろう? じゃあ答えを求めるばかりじゃなくて、自分で導き出すことも覚えて行かないとな」
そう言って、先生はPCに向かう。
「自分で導き出す、か……」
そして僕はトボトボと職員室を後にした。
先生の言う通りかもしれない。僕は先生に聞けば、何でも答えが返ってくると勘違いしていた。
この先、研究所で過ごすようになれば、先生の力を借りていくことはなくなる。
それなのに僕が今のままじゃ、きっとこれからの人生で道に迷うことになる。
僕自身の考えで真実にたどり着くこと。
「……これじゃ、ゆめかさんに会っても、きっと事件の真相は聞けそうにないな」
僕はそんなことを考えて、自室に戻っていった。
翌日曜日。僕は研究所に来ていた。
ゆめかさんと約束の時間まで少し余裕があった僕は、剛の個室に向かった。
部屋に入ると、剛は相変わらずたくさんの機械に繋がれたまま、スヤスヤと眠っていた。
「剛、少し痩せたんじゃないか」
僕は寝たきりで筋肉が落ちている剛の身体を見て、そう言った。
もしこのタイミングで目を覚ましたら、喧嘩を売られそうだな。
そう思った僕は笑っていた。
それから僕は眠ったままの剛に話しかける。
「先生と話した後、またシロのことやゆめかさんのことを考えたんだ。でも結局、僕は真実にはたどり着けなかったんだよ」
「……」
「シロが今、生きているのなら、たぶん28から30歳ぐらいなんだろうけど、そんな女性は世の中にたくさんいると思わない?」
「……」
僕は顎に手を当てながら、少し考えつつ話を続けた。
「その中から、シロをどうやって先生は見つけたんだろうね。そもそも先生の行動範囲なんて、施設と研究所の往復くらいし、か……??」
そして僕ははっとした。
そうか。先生はあの日、研究所に行くって言っていたはず。じゃあ、この施設にいる誰かがシロってことだ!! でも一体誰なんだ……。
考え事に集中しすぎて、約束のことをすっかり忘れていた僕は目に入った時計の時刻を見て驚く。
「あ、やばい! 約束の時間が!!」
僕は急いでゆめかさんの元に向かった。
「シロは大丈夫だった?」
マリアは不安な表情で先生にシロのことを聞いているようだった。
その問いに先生は笑顔で答える。
「ああ。幸せそうだったよ。それに、また必ず会えるように頑張るって言っていたよ」
「よかった……」
先生の言葉にマリアは安心しているようだった。
それから僕は先生に後から話したいことがあると伝えてから、夕食を終えた。
夕食後、僕は職員室へ。
優香が僕を心配して、着いていこうかと言ってくれたけれど、僕は一人で先生と話すことにした。
職員室に入ると、先生はデスクのPCに向かって作業をしていた。
「おう、来たか」
そして僕は先生のデスクの隣の席に腰を掛けた。
「話ってなんだ? また進路のことで悩みがあるのか?」
先生はそう言いながら、優しく笑う。
「ううん。違うんだ。……その、シロのことで心配ごとと言うか」
「シロのこと、か」
「うん。この間、襲撃事件があったでしょ? 狙いがシロだったのなら、シロを施設の外に出すのは危険なんじゃないかって思って。それにシロの家族も……」
先生は腕を組み、少し考えてから口を開いた。
「そう、だよな。ごめんな、キリヤには真実を話しておくべきだったかもしれない」
「真実……?」
「ああ。実は、この時代にシロの家族なんかいないんだ」
「は?」
先生が何を言っているのか、わからなかった。
この時代に家族はいない……? それってどういうこと?
「それじゃ、まるで……シロがこの時代の人間じゃないみたいな言い方じゃない?」
「ああ。そうだ。シロはこの時代の人間じゃない。シロは20年前から来た」
「え……!? それって、どういう……」
20年前……? 先生は何を言っているんだろう。
僕はそう思いながら、顎に手を当てて考える。
「シロの能力さ。『時間渡り』って言って、違う時代に飛ぶことができる能力」
「『時間渡り』……」
僕は先生から聞いた真実に驚愕していた。
シロにそんな能力があったなんて、と……。
「ああ。そしてシロは元々その力でこの時代に来てしまって、その時の能力の暴走がきっかけで記憶喪失になっていたみたいなんだ」
「それでシロは記憶喪失になっていたんだね」
「ああ。だから、すべてを思い出したシロは自分の能力で元の時代に戻っていったんだ」
そう言って微笑む先生。
しかし、僕は不安だった。
「でも、本当に戻れたかどうかなんてわからないでしょ!? もしもうまく戻れなくて、どこかの時空を彷徨っていたら……」
そう言って僕はその不安な感情を先生にぶつけた。
僕たちにはシロが無事かどうか確認する術がない。それなのになんで先生はこんなに冷静なんだろう。シロのことを心配していないのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
「大丈夫だ。ちゃんとシロは帰れた。そして今もちゃんと生きているよ」
先生は僕を安心させるように、優しい笑顔でそう答える。
「もしかして、シロと会ったの?」
僕がそう言うと、先生はニコニコするだけでそれ以上は何も答えてはくれなかった。
しかしその笑顔は、先生がこの時代のシロに会ったことを物語っていた。
優香の言う通り、先生の行動には意味があったってことはわかったけど……先日から、ゆめかさんも先生も僕に直接真実を教えてくれない。
僕だってもう子供じゃない。だから知る権利はあるはずなのに……。なぜ二人は僕に何も教えてくれないのだろう。
「先生。シロとはどこであったの?」
「……俺の口からは言えない。でもキリヤもすぐにわかるさ」
「そんな、曖昧な答え……」
「キリヤももう子供じゃないんだろう? じゃあ答えを求めるばかりじゃなくて、自分で導き出すことも覚えて行かないとな」
そう言って、先生はPCに向かう。
「自分で導き出す、か……」
そして僕はトボトボと職員室を後にした。
先生の言う通りかもしれない。僕は先生に聞けば、何でも答えが返ってくると勘違いしていた。
この先、研究所で過ごすようになれば、先生の力を借りていくことはなくなる。
それなのに僕が今のままじゃ、きっとこれからの人生で道に迷うことになる。
僕自身の考えで真実にたどり着くこと。
「……これじゃ、ゆめかさんに会っても、きっと事件の真相は聞けそうにないな」
僕はそんなことを考えて、自室に戻っていった。
翌日曜日。僕は研究所に来ていた。
ゆめかさんと約束の時間まで少し余裕があった僕は、剛の個室に向かった。
部屋に入ると、剛は相変わらずたくさんの機械に繋がれたまま、スヤスヤと眠っていた。
「剛、少し痩せたんじゃないか」
僕は寝たきりで筋肉が落ちている剛の身体を見て、そう言った。
もしこのタイミングで目を覚ましたら、喧嘩を売られそうだな。
そう思った僕は笑っていた。
それから僕は眠ったままの剛に話しかける。
「先生と話した後、またシロのことやゆめかさんのことを考えたんだ。でも結局、僕は真実にはたどり着けなかったんだよ」
「……」
「シロが今、生きているのなら、たぶん28から30歳ぐらいなんだろうけど、そんな女性は世の中にたくさんいると思わない?」
「……」
僕は顎に手を当てながら、少し考えつつ話を続けた。
「その中から、シロをどうやって先生は見つけたんだろうね。そもそも先生の行動範囲なんて、施設と研究所の往復くらいし、か……??」
そして僕ははっとした。
そうか。先生はあの日、研究所に行くって言っていたはず。じゃあ、この施設にいる誰かがシロってことだ!! でも一体誰なんだ……。
考え事に集中しすぎて、約束のことをすっかり忘れていた僕は目に入った時計の時刻を見て驚く。
「あ、やばい! 約束の時間が!!」
僕は急いでゆめかさんの元に向かった。
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