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第4章 過去・今・未来
第28話ー② 繋がる絆
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私は元の時代に戻った私は、記憶を頼りに研究所を目指した。
「ここ、だよね……」
そしてその場所はまだ何もない空き地にだった。
ここに研究所ができるなんて、嘘みたいだよね。
私はそんなことをふと考える。
「そうだ。今はそんなこと考えている場合じゃなかった。探さなくちゃ……」
私はその空き地から少し歩いた場所にあった、とある一軒家の前に到着する。
そしてその看板には、『櫻井』と書かれていた。
「ここだ……」
私はインターホンを押そうと手を伸ばしたが、はっとして伸ばした手を引っ込めた。
見知らぬ子どもがいきなりインターホンを鳴らし、自分には不思議な力がある! なんて話をして、信じてもらえるのかなと。
「どうしたら、所長さんに会えるのかな」
そんなことを考えつつ、時間は過ぎていった。
「えっと、君は誰だい?」
私がインターホンの前で立ち尽くしていると、後ろから聞きなれた声がした。
振り返ると、そこには私の知っている顔よりもかなり若返った櫻井所長の姿があった。
「あ、あの……」
「あ! もしかして迷子、とか? じゃあ交番に連れて行かなくちゃな……」
そう言いながら、首をひねって考える櫻井さん。
交番に連れていかれるのはまずい。せっかく黒服の施設から抜けだせたのに、逆戻りになってしまう。それだけは回避しないと!
そう思った私は櫻井さんに嘘をつくことに。
「あ、あの! 私、実はお父さんとお母さんがいなくなってしまって……独りぼっちになってしまったんです。だから一緒に暮らしてくれるお家を探していて……」
「そうなんだ……うん。わかった! そう言う事なら、母さんに相談してみるよ!!」
私の嘘を真に受けたのか、櫻井さんは笑顔で私を家に招いてくれた。
「いらっしゃい。ようこそ、櫻井家へ」
「お邪魔します! ……わあぁ!」
櫻井さんの家は代々研究者の家系で、家にはいろんな検査セットがあった。
「ごめんね、僕の家ちょっと変わってるでしょ?」
そう言いながら、苦笑いをする櫻井さん。
「いいえ。理科室みたいで面白いですね」
「そ、そうかな! ありがとう」
それから櫻井さんは、研究者のお母さんとお父さんに合わせてくれた。
「娘ができたみたいで嬉しいわぁ」
「ゆめかちゃん、私達のことは本当の親と思ってくれて構わないからね!」
二人は私の同居を許してくれたのだった。
それから4人で食卓を囲み、私は櫻井さんを含めた櫻井家の人々の温かさを実感したのだった。
「ゆめかちゃん、これも食べる?」
「ハンバーグもあるよ?」
「あ、えっと……ありがとう、ございます」
私は櫻井夫妻の優しさに少し戸惑い、返事がたどたどしくなってしまう。
そんな私を見かねた櫻井さんは額に手を当てて、
「父さん、母さん……ゆめかちゃんが困っているだろ?」
やれやれと言いながらそう告げた。
「だって、ねえ」
「ああ」
そう言って顔を見合わせる櫻井夫妻。
私は櫻井家のそんなやり取りを見て微笑ましく思い、
「ふふふ。ありがとうございます!」
そう言って笑った。
それから櫻井さんは私に自分のことを話してくれた。
櫻井さんは大学を卒業して間もない頃でアルバイトをしながら、お父さんたちの研究のお手伝いをしているらしい。そんな櫻井さんは『将来は有名な研究者になるんだ』って目を輝かせて私に夢を語っていた。
櫻井さんなら大丈夫だよ。
私はそう思いながら、笑顔で櫻井さんの話を聞いていたのだった。
私が同居を始めてしばらく経ったとき、私は櫻井さんに能力のことを話した。
世間で子供たちの能力覚醒による事件が起こり始めた頃だったため、ちょうどよい時期だと思ったからだ。
「世の中で騒ぎになっている力は、これからもっと大きな事件を起こすことになる。そうなる前になんとかしなくちゃいけないの」
私がそう言うと、櫻井さんは顎に手を当てて考える。
「なるほど。世界の崩壊も招きかねない事態になるわけだ……。でも僕はどうしたらいいんだい?」
「能力者の私が情報を提供します。だから未来の子供たちのために、櫻井さんたちにこの現象の研究の第一人者になってほしいんです」
私の言葉に驚いた表情をする櫻井さん。
「え、僕が……」
「いや、ですか……?」
私の問いに櫻井さんは目を輝かせながら、
「いいに決まっているじゃないか! こんなにワクワクする研究なんてないよ!!」
嬉しそうに答えた。
それから櫻井さんのお父さんの力添えで能力の研究機関を発足。そしてこの現象に頭を悩ませていた政府からも援助を受けることができた。
研究機関の発足から5年が経ち、あの空き地に研究所が建てられた。
そして私は櫻井さんと共に研究所で住み込みしながら、研究を続けた。
「そういえばこの現象なんだけど、まだ名称が決まっていなくてね。何かいい名称はあるかい?」
「私には、『白雪姫』からとった『シロ』というニックネームがあったんですよ。それをつけてくれた人たちのおかげで、私はこの研究に力を貸したいと思えたんです」
「ほう」
そう言って笑う櫻井さん。
「だからその人達との思い出や繋がりを忘れない為に『白雪姫』と言う言葉をとって、『白雪姫症候群』っていうのはどうですか?」
「なるほど。それは面白い! じゃあこの現象の名前は『白雪姫症候群』にしよう!」
そして櫻井さんは名称を『白雪姫症候群』とすることと能力者専用の施設建設を発表した。
それから研究所にも人が増えていった。
研究所には能力が暴走して心を失う子供や能力を制御できない子供に悩む親たちの姿を見るようになった。
「櫻井さ……じゃなくて、所長。私、カウンセラーになりたいです」
私は日々、研究所で見かける人たちを見ていて、自然にそう思うようになっていた。
そんな私に櫻井さんは「頑張って」と笑顔で承諾してくれた。
それから私は高校卒業後、研究所でカウンセラーとして勤務するために心理
学科のある大学へ進学した。
大学に通い始めてしばらく経った頃。
「そういえば、最近夢を見ることがなくなったな」
私は大学生活を送るうちに、自分の能力が消失していることに気が付いた。
研究機関の発足からかなり忙しい日々を送っていたため、もっと前に能力はなくなっていたのかもしれないけれど、私はようやく普通の女の子に戻ったんだと実感した。
「これからは今の私がやれることをやっていくだけ。そしていつかまた、施設のみんなと会うんだ」
そして私はマリアお姉ちゃんからもらったブレスレットを見つめる。
「……随分、汚れてきちゃったな。もう12年、か」
それから鏡に映る自分の姿が目に入った。
「紡ちゃん、竜也君。私はちゃんと大人になったよ。二人が繋いでくれたこの命をこれからは能力に悩む人たちのために使っていきます」
その後、大学院を卒業した私は普通に就職をして、29歳になった年に研究所に戻ってきた。
「ここ、だよね……」
そしてその場所はまだ何もない空き地にだった。
ここに研究所ができるなんて、嘘みたいだよね。
私はそんなことをふと考える。
「そうだ。今はそんなこと考えている場合じゃなかった。探さなくちゃ……」
私はその空き地から少し歩いた場所にあった、とある一軒家の前に到着する。
そしてその看板には、『櫻井』と書かれていた。
「ここだ……」
私はインターホンを押そうと手を伸ばしたが、はっとして伸ばした手を引っ込めた。
見知らぬ子どもがいきなりインターホンを鳴らし、自分には不思議な力がある! なんて話をして、信じてもらえるのかなと。
「どうしたら、所長さんに会えるのかな」
そんなことを考えつつ、時間は過ぎていった。
「えっと、君は誰だい?」
私がインターホンの前で立ち尽くしていると、後ろから聞きなれた声がした。
振り返ると、そこには私の知っている顔よりもかなり若返った櫻井所長の姿があった。
「あ、あの……」
「あ! もしかして迷子、とか? じゃあ交番に連れて行かなくちゃな……」
そう言いながら、首をひねって考える櫻井さん。
交番に連れていかれるのはまずい。せっかく黒服の施設から抜けだせたのに、逆戻りになってしまう。それだけは回避しないと!
そう思った私は櫻井さんに嘘をつくことに。
「あ、あの! 私、実はお父さんとお母さんがいなくなってしまって……独りぼっちになってしまったんです。だから一緒に暮らしてくれるお家を探していて……」
「そうなんだ……うん。わかった! そう言う事なら、母さんに相談してみるよ!!」
私の嘘を真に受けたのか、櫻井さんは笑顔で私を家に招いてくれた。
「いらっしゃい。ようこそ、櫻井家へ」
「お邪魔します! ……わあぁ!」
櫻井さんの家は代々研究者の家系で、家にはいろんな検査セットがあった。
「ごめんね、僕の家ちょっと変わってるでしょ?」
そう言いながら、苦笑いをする櫻井さん。
「いいえ。理科室みたいで面白いですね」
「そ、そうかな! ありがとう」
それから櫻井さんは、研究者のお母さんとお父さんに合わせてくれた。
「娘ができたみたいで嬉しいわぁ」
「ゆめかちゃん、私達のことは本当の親と思ってくれて構わないからね!」
二人は私の同居を許してくれたのだった。
それから4人で食卓を囲み、私は櫻井さんを含めた櫻井家の人々の温かさを実感したのだった。
「ゆめかちゃん、これも食べる?」
「ハンバーグもあるよ?」
「あ、えっと……ありがとう、ございます」
私は櫻井夫妻の優しさに少し戸惑い、返事がたどたどしくなってしまう。
そんな私を見かねた櫻井さんは額に手を当てて、
「父さん、母さん……ゆめかちゃんが困っているだろ?」
やれやれと言いながらそう告げた。
「だって、ねえ」
「ああ」
そう言って顔を見合わせる櫻井夫妻。
私は櫻井家のそんなやり取りを見て微笑ましく思い、
「ふふふ。ありがとうございます!」
そう言って笑った。
それから櫻井さんは私に自分のことを話してくれた。
櫻井さんは大学を卒業して間もない頃でアルバイトをしながら、お父さんたちの研究のお手伝いをしているらしい。そんな櫻井さんは『将来は有名な研究者になるんだ』って目を輝かせて私に夢を語っていた。
櫻井さんなら大丈夫だよ。
私はそう思いながら、笑顔で櫻井さんの話を聞いていたのだった。
私が同居を始めてしばらく経ったとき、私は櫻井さんに能力のことを話した。
世間で子供たちの能力覚醒による事件が起こり始めた頃だったため、ちょうどよい時期だと思ったからだ。
「世の中で騒ぎになっている力は、これからもっと大きな事件を起こすことになる。そうなる前になんとかしなくちゃいけないの」
私がそう言うと、櫻井さんは顎に手を当てて考える。
「なるほど。世界の崩壊も招きかねない事態になるわけだ……。でも僕はどうしたらいいんだい?」
「能力者の私が情報を提供します。だから未来の子供たちのために、櫻井さんたちにこの現象の研究の第一人者になってほしいんです」
私の言葉に驚いた表情をする櫻井さん。
「え、僕が……」
「いや、ですか……?」
私の問いに櫻井さんは目を輝かせながら、
「いいに決まっているじゃないか! こんなにワクワクする研究なんてないよ!!」
嬉しそうに答えた。
それから櫻井さんのお父さんの力添えで能力の研究機関を発足。そしてこの現象に頭を悩ませていた政府からも援助を受けることができた。
研究機関の発足から5年が経ち、あの空き地に研究所が建てられた。
そして私は櫻井さんと共に研究所で住み込みしながら、研究を続けた。
「そういえばこの現象なんだけど、まだ名称が決まっていなくてね。何かいい名称はあるかい?」
「私には、『白雪姫』からとった『シロ』というニックネームがあったんですよ。それをつけてくれた人たちのおかげで、私はこの研究に力を貸したいと思えたんです」
「ほう」
そう言って笑う櫻井さん。
「だからその人達との思い出や繋がりを忘れない為に『白雪姫』と言う言葉をとって、『白雪姫症候群』っていうのはどうですか?」
「なるほど。それは面白い! じゃあこの現象の名前は『白雪姫症候群』にしよう!」
そして櫻井さんは名称を『白雪姫症候群』とすることと能力者専用の施設建設を発表した。
それから研究所にも人が増えていった。
研究所には能力が暴走して心を失う子供や能力を制御できない子供に悩む親たちの姿を見るようになった。
「櫻井さ……じゃなくて、所長。私、カウンセラーになりたいです」
私は日々、研究所で見かける人たちを見ていて、自然にそう思うようになっていた。
そんな私に櫻井さんは「頑張って」と笑顔で承諾してくれた。
それから私は高校卒業後、研究所でカウンセラーとして勤務するために心理
学科のある大学へ進学した。
大学に通い始めてしばらく経った頃。
「そういえば、最近夢を見ることがなくなったな」
私は大学生活を送るうちに、自分の能力が消失していることに気が付いた。
研究機関の発足からかなり忙しい日々を送っていたため、もっと前に能力はなくなっていたのかもしれないけれど、私はようやく普通の女の子に戻ったんだと実感した。
「これからは今の私がやれることをやっていくだけ。そしていつかまた、施設のみんなと会うんだ」
そして私はマリアお姉ちゃんからもらったブレスレットを見つめる。
「……随分、汚れてきちゃったな。もう12年、か」
それから鏡に映る自分の姿が目に入った。
「紡ちゃん、竜也君。私はちゃんと大人になったよ。二人が繋いでくれたこの命をこれからは能力に悩む人たちのために使っていきます」
その後、大学院を卒業した私は普通に就職をして、29歳になった年に研究所に戻ってきた。
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