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第3章 毒リンゴとお姫様
第21話ー③ 眠り姫を起こすのは王子様のキス
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キリヤが研究所で調査資料を読み漁っている頃の保護施設の出来事。
俺は朝から研究所に行ったキリヤをとても心配していた。
もしかしてまた暴走するような兆しがあるだろうか、俺が誘拐されたときに無理をさせてしまったのではないかと。
「キリヤ、大丈夫なのか……」
俺が深刻な顔をしていると、目の前に優香がやってきた。
「先生、どうされました? 顔が怖いですよ? もしかして、神宮寺さんと喧嘩でもされました?」
「いや、そういうわけじゃ……というか、なんで優香が俺と奏多のことを知っているんだ!?」
「そんなの女の勘です。それに神宮寺さんの話をされているときの先生は幸せそうな顔をしていますし」
俺は無意識でそんな顔をしていたのか。
「まあそれはいいとして。奏多と喧嘩をしたわけじゃないさ。実はキリヤのことなんだ。検査のために研究所に行くと言っていたのが、気になって仕方がないんだよ。もし何かあったらって……」
「そうだったんですね」
「優香は何か知らないか? いつも一緒にいるだろう?」
「い、いつも一緒なわけじゃないです!! でも、実は私もキリヤ君のことを聞こうと先生のところに来たわけで……すみません」
優香もキリヤのことを知らなかったのか。じゃあマリアなら何かを知っているかもしれない。何かあれば、俺の次にきっとマリアに話すだろうし……。
「ちなみに桑島さんは何も知らないとおっしゃっていましたよ。キリヤ君の最近の変化にも気が付いていない様子でした」
「そうか……ん?」
心の声を口に出していないはずなのに、なんで優香は俺の思ったことがわかるんだ? まるで優香に心を読まれたような……。
「心を読んでいるつもりはないですよ? 先生はわかりやすいので、表情やしぐさを見ただけで考えていることがバレバレです」
「な、なるほどな……」
俺はつい苦笑いをしてしまう。
やはり優香は侮れないな。そんなことで人の心がわかるって、エスパーか何かなのか?
「様子がおかしいと言えば、狭山君の様子も最近おかしいですね」
「そ、そうかな?」
優香の急な問いになぜか俺ははぐらかしてしまった。
「先生、狭山君のことは何か知っていそうですね? 何を隠しているんですか?」
優香は万遍の黒い笑みで俺に迫る。
「い、いや?」
「さっき言った事、もう忘れてしまったんですか? 先生はわかりやすいんですよ??」
そして俺は優香の気迫に負けて、先日の出来事を優香に話した。
教師としての威厳が……と心の中で思ったことはここだけの秘密にしておこう。
「なるほど。そんなことがあったのですね。そしてそこにはキリヤ君も……」
優香は目線を上に向けて、一人で考えを巡らせていた。
きっと俺には理解できないほどの速さで脳内処理が行われていることだろう。
「そっか……なるほど」
優香は何かに気が付いたようだったが、俺に教えてくれるわけでもなく自室へ戻っていった。
優香は一体何に気が付いたんだろうか。
「この間のいろはのことと関係が……?」
考えても答えは出なさそうだったので、キリヤが真実を話してくれることを信じて待つことにした。
「どんなに信頼関係が築けたとしても、秘密があるのはお互い様ってことだよな」
どんなことでもきっとキリヤなら大丈夫だと俺は信じているよ。
その頃のまゆおは、屋上で竹刀の素振りをしていた。
もっと早く、正確に技を出せるようにならないと……。
僕の刃ならきっと『ポイズン・アップル』のチップを破壊できるはず。
そのために僕はもっともっとがんばらないと!
まゆおはそう思いながら竹刀を振っていた。
そしてそんなまゆおの姿をいろはは心配そうに隠れて見守っていた。
「まゆお、どうしたの。そんなに無理したら、まゆおも剛君みたいに……」
いろはがそう呟いたとき、まゆおは疲労からその場に尻もちをついてしまう。
息は切れ切れで、大量の汗が流れていた。
いろはは隠れていることに耐えきれなくなり、まゆおの前に姿を現す。
「まゆお! 大丈夫!?」
「い、いろは、ちゃん? いつからそこに!?」
「いつだっていいじゃん! まゆお、大丈夫なの!?」
「はあはあ、僕は、大丈夫、だよ」
そう言ってまゆおはいろはに微笑む。
「無理してんじゃん! なんで! なんでそんなに無理するの!? アタシ、心配になるじゃん! 剛君みたいにまゆおが起きなくなったら嫌だよ!!」
いろはは目に涙を溜めながらそう言った。
「今、無理をしなくていつするのさ。僕は……」
まゆおは本当のことをいろはに告げそうになる。
でもこのことを知ったいろはちゃんはきっと悲しい顔をする。そんな顔は見たくない。
まゆおはそう思いながら、黙り込む。
「まゆお?」
いろはは心配そうにまゆおの顔を覗き込む。
「……ごめん。ありがとう、いろはちゃん。でも、僕は本当に大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
まゆおは優しくいろはにそう告げた。
僕はいろはちゃんを救いたい。だから多少の無理は承知の上だ。そうじゃないと、きっと君を救えない。
僕は僕を救ってくれた君を失いたくはない……。君のそばにずっといたいんだ。
そしてまゆおはいろはをそっと抱きしめる。
「え!? ど、どうしたの、まゆお!!」
「ご、ごめん。つい……」
そしていろはから離れるまゆお。
「ははは。まゆお、顔が真っ赤だよ!!」
まゆおの顔を見た、いろはは大笑いをする。
「そ、そんなに笑わなくても!! 傷つくじゃないか……」
「あはは。ごめん、ごめん。でも、嬉しかった。ありがとう! なんでそんなに無理をするのかはわからないけど、なんか意味があるんでしょ? じゃあアタシは親友として黙って見守るしかないね。もし辛くなったら、すぐに相談してよ?」
「し、親友……」
「うん!」
そう言って万遍の笑みを向けるいろは。
「あはは。わかった。ありがとう、いろはちゃん!」
まゆおはそう言いながら笑った。
それからいろはは屋上を出て行った。
「君は必ず僕が救って見せるから」
そしてまゆおは立ち上がり、再び素振りを始めた。
俺は朝から研究所に行ったキリヤをとても心配していた。
もしかしてまた暴走するような兆しがあるだろうか、俺が誘拐されたときに無理をさせてしまったのではないかと。
「キリヤ、大丈夫なのか……」
俺が深刻な顔をしていると、目の前に優香がやってきた。
「先生、どうされました? 顔が怖いですよ? もしかして、神宮寺さんと喧嘩でもされました?」
「いや、そういうわけじゃ……というか、なんで優香が俺と奏多のことを知っているんだ!?」
「そんなの女の勘です。それに神宮寺さんの話をされているときの先生は幸せそうな顔をしていますし」
俺は無意識でそんな顔をしていたのか。
「まあそれはいいとして。奏多と喧嘩をしたわけじゃないさ。実はキリヤのことなんだ。検査のために研究所に行くと言っていたのが、気になって仕方がないんだよ。もし何かあったらって……」
「そうだったんですね」
「優香は何か知らないか? いつも一緒にいるだろう?」
「い、いつも一緒なわけじゃないです!! でも、実は私もキリヤ君のことを聞こうと先生のところに来たわけで……すみません」
優香もキリヤのことを知らなかったのか。じゃあマリアなら何かを知っているかもしれない。何かあれば、俺の次にきっとマリアに話すだろうし……。
「ちなみに桑島さんは何も知らないとおっしゃっていましたよ。キリヤ君の最近の変化にも気が付いていない様子でした」
「そうか……ん?」
心の声を口に出していないはずなのに、なんで優香は俺の思ったことがわかるんだ? まるで優香に心を読まれたような……。
「心を読んでいるつもりはないですよ? 先生はわかりやすいので、表情やしぐさを見ただけで考えていることがバレバレです」
「な、なるほどな……」
俺はつい苦笑いをしてしまう。
やはり優香は侮れないな。そんなことで人の心がわかるって、エスパーか何かなのか?
「様子がおかしいと言えば、狭山君の様子も最近おかしいですね」
「そ、そうかな?」
優香の急な問いになぜか俺ははぐらかしてしまった。
「先生、狭山君のことは何か知っていそうですね? 何を隠しているんですか?」
優香は万遍の黒い笑みで俺に迫る。
「い、いや?」
「さっき言った事、もう忘れてしまったんですか? 先生はわかりやすいんですよ??」
そして俺は優香の気迫に負けて、先日の出来事を優香に話した。
教師としての威厳が……と心の中で思ったことはここだけの秘密にしておこう。
「なるほど。そんなことがあったのですね。そしてそこにはキリヤ君も……」
優香は目線を上に向けて、一人で考えを巡らせていた。
きっと俺には理解できないほどの速さで脳内処理が行われていることだろう。
「そっか……なるほど」
優香は何かに気が付いたようだったが、俺に教えてくれるわけでもなく自室へ戻っていった。
優香は一体何に気が付いたんだろうか。
「この間のいろはのことと関係が……?」
考えても答えは出なさそうだったので、キリヤが真実を話してくれることを信じて待つことにした。
「どんなに信頼関係が築けたとしても、秘密があるのはお互い様ってことだよな」
どんなことでもきっとキリヤなら大丈夫だと俺は信じているよ。
その頃のまゆおは、屋上で竹刀の素振りをしていた。
もっと早く、正確に技を出せるようにならないと……。
僕の刃ならきっと『ポイズン・アップル』のチップを破壊できるはず。
そのために僕はもっともっとがんばらないと!
まゆおはそう思いながら竹刀を振っていた。
そしてそんなまゆおの姿をいろはは心配そうに隠れて見守っていた。
「まゆお、どうしたの。そんなに無理したら、まゆおも剛君みたいに……」
いろはがそう呟いたとき、まゆおは疲労からその場に尻もちをついてしまう。
息は切れ切れで、大量の汗が流れていた。
いろはは隠れていることに耐えきれなくなり、まゆおの前に姿を現す。
「まゆお! 大丈夫!?」
「い、いろは、ちゃん? いつからそこに!?」
「いつだっていいじゃん! まゆお、大丈夫なの!?」
「はあはあ、僕は、大丈夫、だよ」
そう言ってまゆおはいろはに微笑む。
「無理してんじゃん! なんで! なんでそんなに無理するの!? アタシ、心配になるじゃん! 剛君みたいにまゆおが起きなくなったら嫌だよ!!」
いろはは目に涙を溜めながらそう言った。
「今、無理をしなくていつするのさ。僕は……」
まゆおは本当のことをいろはに告げそうになる。
でもこのことを知ったいろはちゃんはきっと悲しい顔をする。そんな顔は見たくない。
まゆおはそう思いながら、黙り込む。
「まゆお?」
いろはは心配そうにまゆおの顔を覗き込む。
「……ごめん。ありがとう、いろはちゃん。でも、僕は本当に大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
まゆおは優しくいろはにそう告げた。
僕はいろはちゃんを救いたい。だから多少の無理は承知の上だ。そうじゃないと、きっと君を救えない。
僕は僕を救ってくれた君を失いたくはない……。君のそばにずっといたいんだ。
そしてまゆおはいろはをそっと抱きしめる。
「え!? ど、どうしたの、まゆお!!」
「ご、ごめん。つい……」
そしていろはから離れるまゆお。
「ははは。まゆお、顔が真っ赤だよ!!」
まゆおの顔を見た、いろはは大笑いをする。
「そ、そんなに笑わなくても!! 傷つくじゃないか……」
「あはは。ごめん、ごめん。でも、嬉しかった。ありがとう! なんでそんなに無理をするのかはわからないけど、なんか意味があるんでしょ? じゃあアタシは親友として黙って見守るしかないね。もし辛くなったら、すぐに相談してよ?」
「し、親友……」
「うん!」
そう言って万遍の笑みを向けるいろは。
「あはは。わかった。ありがとう、いろはちゃん!」
まゆおはそう言いながら笑った。
それからいろはは屋上を出て行った。
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