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第3章 毒リンゴとお姫様
第18話ー② 転入生現る
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俺たちは施設に到着すると授業の準備のため、まっすぐに職員室へ向かった。
今日は朝一で研究所に向かったこともあり、いつもより早めに帰宅することができたわけだ。
でもまさか午前の授業に間に合うとは思っていなかったので、授業の準備は何もできていない。と言っても、俺は生徒たちに何か勉強を教えることはないんだけどな。
だから準備というのはただ単に生徒たちの出席簿を用意するくらいのことだった。
そんなことを思いながら歩く俺の後ろを、少女は静かに歩いていた。
「まだ完全に心が戻ったわけじゃないんだな」
俺は無表情でいる少女を見て、そう呟いた。
俺もきっと心が完全に戻るまでの間は同じような顔をしていたんだろうな。
この子も俺みたいに感情を取り戻した時、ようやく本当のこの子に出会えるのだろう。この子がどんな性格なんだろうかって考えると少し楽しみかもしれない。
それから俺は職員室で授業に必要なものを用意してから、少女と共に生徒たちのいる教室へ向かった。
俺と少女は教室の扉の前にいた。
「今から行くところは、これから君の仲間になる子供たちがいるところだ。みんないい奴らだから、きっと君とも仲良くなれると思う。よろしくな」
俺はそう少女に告げると、少女は静かに頷いた。
そして俺は教室の扉をあける。
教室では生徒たちがタブレットに向かって、各々の勉強をこなしているようだった。
俺の姿が見えると、さっきまで真面目に勉強していた生徒たちは一斉に俺の方を向く。
「あ! センセーおかえり!!」
いろはは手を振りながら俺にそう言った。
「ああ。ただいま。俺のことは気にせず、勉強に集中していてくれ」
俺がそう告げると、生徒たちは再びタブレットに目を向けた。
「さあ入って」
俺の後ろにいた少女に告げ、少女は静かに教室の中へ。
空いている席から椅子だけを持っていき、その椅子を俺の机の隣に置いた。
そして俺は少女にそこへ座るよう促し、少女はこくんと頷いてからその椅子に座った。
俺は勉強に集中する生徒とその様子を見つめる少女を交互に見ていた。
この少女は何を感じているのだろうと俺は少女を見ていてそう思ったのである。
タブレットに目を向けて勉強する生徒たちを何も発することもなく、静かに見つめている少女。
――もしかして何かを感じているのだろうか? まさか、そんなわけないか。
そして午前の授業が終わると、数人の生徒が俺のもとに寄ってきた。
「センセー、その子何!? 隠し子!?」
いろはが興味津々に問いかける。
「隠し子なわけあるか! 俺はまだ24だし、結婚だってしてないぞ!!」
「では、その子は一体……?」
結衣が少女の全身をまじまじと見ながらそう言った。
「そのことは、昼飯の時にみんなに説明するよ。さあ、食堂へ行こうか」
俺は生徒たちにそう告げて、食堂に向かった。
食堂にて。各々が食べ物を用意し終えたのを確認したあと、俺は説明を開始した。
「この子は今日からこのクラスの仲間に加わることになった。名前は……実は記憶喪失でわからない。だから、みんなにこの子の名前を考えてほしいと思っている」
「え、記憶喪失なんですか……?」
そう言ってまゆおは心配そうな顔で少女を見つめる。
「そうだ。ちょっといろいろと訳ありでな。研究所からの依頼でこの施設で預かることになったんだ」
「そう。まあ訳ありなら、仕方ないさ。この子のことを歓迎しようよ!」
キリヤが笑顔でみんなにそう言い聞かせる。
キリヤがそう言うならと、みんなはそれ以上何も言わなかった。
そしてキリヤはどや顔で俺に微笑むと、「あとで説明してくれるよね?」と口パクで俺に伝えていた。
確かにキリヤには事情を話しておく必要はありそうだ。そのほうがいろいろと都合がいいときもあるだろう。いざというとき、キリヤは頼りになるからな。
そして俺はキリヤに頷いて返した。
その後、生徒たちと共に少女の名前を考えた。
「白髪碧眼の美少女……外国の名前しか思い浮かびませんな。リリーとか、マリーとかかわいい感じが似合いそうかと!」
結衣は完全に趣味の方面で名前を考えていそうな……
「とりあえず仮の名前だし、花子とかそういったありがちの名前の方が……」
「花子!? そんなだっさい名前かわいそうじゃん!」
「そ、そうだよね……」
まゆおはしゅんとして、俯いていた。
まゆお、その気持ちはよくわかる。俺も似たような名前を考えたからな……。
そんなことを思いながら、俺は「うんうん」と頷いた。
「お肌は真っ白で白い髪がキラキラしてて、雪みたいだよね」
「確かに銀世界を想像させる雰囲気があるね……」
キリヤとマリアの言う通り、少女の見た目は雪という言葉が似合う雰囲気があるなと俺も思った。
「雪……雪……白雪姫、とか。そうだ!! 『シロ』ちゃんっていうのはどう? 白雪姫の『シロ』ちゃん!! サイコーにキュートでイケてない?」
いろはは目を輝かせながら、そう言った。
「いい。『シロ』。素敵な名前!」
マリアはいろはの決めたその名前を気に入ったようだった。
「他に意見がないようなら、『シロ』で決まりにするけど、いいか?」
俺がそう問うと、全員が頷く。
そして俺は少女の目を見ながら、
「今日から君は『シロ』だ。よろしくな、シロ」
そう告げると、シロは静かにうなずいた。
そしてシロのお世話係は、世話焼き上手のマリアが担当することになった。
自分が名付けたのにといろはは少々むくれていたが、こればかりは仕方がないことだと俺はいろはに告げる。
「まあ先生の言う通り、マリアの方がお姉さんだからしょうがないか!」
「そうそう。いろはが納得してくれてよかったよ!ははは!」
「あはは!」
もしいろはと共に行動すれば、シロはいろはの色に染まり、ギャルになりたいと言い出すかもしれない。そんなことになったら、俺は所長に何を言われるか。
そう思ったなんていろはには言えないけれど!
それから昼食と話し合いを終えた俺たちは、午後の授業のために教室に向かった。
午後の授業中、シロはさっきと同じ椅子に座って過ごしていた。
シロは記憶が戻っていないこともあり、しばらくは学習ノルマを与えず、授業の見学のみとすることになっている。
授業中のシロは楽しそうにするでも退屈そうにするでもなく、生徒たちが勉強する姿を静かに見つめていた。
俺はそんなシロを見つめつつ、キリヤたちが言った通り、雪を連想するようなきれいな髪と肌だななんて俺は思った。
でもこの風貌、誰かに似ているような……まあ、気のせいか。
そして俺は生徒たちの勉強を見守った。
それから数分後。シロを思ってか、マリアはいつもよりノルマを早めに終える。
そしてマリアはシロの前にきて、
「シロ、施設の中を案内してあげる。いこう」
シロにそう告げた。
そしてシロはマリアの言葉に頷く。
「先生、いい?」
「ああ、よろしくな」
俺がそう言って笑いかけると、マリアは嬉しそうに頷いてシロと教室を出て行った。
教室を出て行く二人を見て、やっぱりマリアを世話係にして正解だったなと俺は思った。
今日は朝一で研究所に向かったこともあり、いつもより早めに帰宅することができたわけだ。
でもまさか午前の授業に間に合うとは思っていなかったので、授業の準備は何もできていない。と言っても、俺は生徒たちに何か勉強を教えることはないんだけどな。
だから準備というのはただ単に生徒たちの出席簿を用意するくらいのことだった。
そんなことを思いながら歩く俺の後ろを、少女は静かに歩いていた。
「まだ完全に心が戻ったわけじゃないんだな」
俺は無表情でいる少女を見て、そう呟いた。
俺もきっと心が完全に戻るまでの間は同じような顔をしていたんだろうな。
この子も俺みたいに感情を取り戻した時、ようやく本当のこの子に出会えるのだろう。この子がどんな性格なんだろうかって考えると少し楽しみかもしれない。
それから俺は職員室で授業に必要なものを用意してから、少女と共に生徒たちのいる教室へ向かった。
俺と少女は教室の扉の前にいた。
「今から行くところは、これから君の仲間になる子供たちがいるところだ。みんないい奴らだから、きっと君とも仲良くなれると思う。よろしくな」
俺はそう少女に告げると、少女は静かに頷いた。
そして俺は教室の扉をあける。
教室では生徒たちがタブレットに向かって、各々の勉強をこなしているようだった。
俺の姿が見えると、さっきまで真面目に勉強していた生徒たちは一斉に俺の方を向く。
「あ! センセーおかえり!!」
いろはは手を振りながら俺にそう言った。
「ああ。ただいま。俺のことは気にせず、勉強に集中していてくれ」
俺がそう告げると、生徒たちは再びタブレットに目を向けた。
「さあ入って」
俺の後ろにいた少女に告げ、少女は静かに教室の中へ。
空いている席から椅子だけを持っていき、その椅子を俺の机の隣に置いた。
そして俺は少女にそこへ座るよう促し、少女はこくんと頷いてからその椅子に座った。
俺は勉強に集中する生徒とその様子を見つめる少女を交互に見ていた。
この少女は何を感じているのだろうと俺は少女を見ていてそう思ったのである。
タブレットに目を向けて勉強する生徒たちを何も発することもなく、静かに見つめている少女。
――もしかして何かを感じているのだろうか? まさか、そんなわけないか。
そして午前の授業が終わると、数人の生徒が俺のもとに寄ってきた。
「センセー、その子何!? 隠し子!?」
いろはが興味津々に問いかける。
「隠し子なわけあるか! 俺はまだ24だし、結婚だってしてないぞ!!」
「では、その子は一体……?」
結衣が少女の全身をまじまじと見ながらそう言った。
「そのことは、昼飯の時にみんなに説明するよ。さあ、食堂へ行こうか」
俺は生徒たちにそう告げて、食堂に向かった。
食堂にて。各々が食べ物を用意し終えたのを確認したあと、俺は説明を開始した。
「この子は今日からこのクラスの仲間に加わることになった。名前は……実は記憶喪失でわからない。だから、みんなにこの子の名前を考えてほしいと思っている」
「え、記憶喪失なんですか……?」
そう言ってまゆおは心配そうな顔で少女を見つめる。
「そうだ。ちょっといろいろと訳ありでな。研究所からの依頼でこの施設で預かることになったんだ」
「そう。まあ訳ありなら、仕方ないさ。この子のことを歓迎しようよ!」
キリヤが笑顔でみんなにそう言い聞かせる。
キリヤがそう言うならと、みんなはそれ以上何も言わなかった。
そしてキリヤはどや顔で俺に微笑むと、「あとで説明してくれるよね?」と口パクで俺に伝えていた。
確かにキリヤには事情を話しておく必要はありそうだ。そのほうがいろいろと都合がいいときもあるだろう。いざというとき、キリヤは頼りになるからな。
そして俺はキリヤに頷いて返した。
その後、生徒たちと共に少女の名前を考えた。
「白髪碧眼の美少女……外国の名前しか思い浮かびませんな。リリーとか、マリーとかかわいい感じが似合いそうかと!」
結衣は完全に趣味の方面で名前を考えていそうな……
「とりあえず仮の名前だし、花子とかそういったありがちの名前の方が……」
「花子!? そんなだっさい名前かわいそうじゃん!」
「そ、そうだよね……」
まゆおはしゅんとして、俯いていた。
まゆお、その気持ちはよくわかる。俺も似たような名前を考えたからな……。
そんなことを思いながら、俺は「うんうん」と頷いた。
「お肌は真っ白で白い髪がキラキラしてて、雪みたいだよね」
「確かに銀世界を想像させる雰囲気があるね……」
キリヤとマリアの言う通り、少女の見た目は雪という言葉が似合う雰囲気があるなと俺も思った。
「雪……雪……白雪姫、とか。そうだ!! 『シロ』ちゃんっていうのはどう? 白雪姫の『シロ』ちゃん!! サイコーにキュートでイケてない?」
いろはは目を輝かせながら、そう言った。
「いい。『シロ』。素敵な名前!」
マリアはいろはの決めたその名前を気に入ったようだった。
「他に意見がないようなら、『シロ』で決まりにするけど、いいか?」
俺がそう問うと、全員が頷く。
そして俺は少女の目を見ながら、
「今日から君は『シロ』だ。よろしくな、シロ」
そう告げると、シロは静かにうなずいた。
そしてシロのお世話係は、世話焼き上手のマリアが担当することになった。
自分が名付けたのにといろはは少々むくれていたが、こればかりは仕方がないことだと俺はいろはに告げる。
「まあ先生の言う通り、マリアの方がお姉さんだからしょうがないか!」
「そうそう。いろはが納得してくれてよかったよ!ははは!」
「あはは!」
もしいろはと共に行動すれば、シロはいろはの色に染まり、ギャルになりたいと言い出すかもしれない。そんなことになったら、俺は所長に何を言われるか。
そう思ったなんていろはには言えないけれど!
それから昼食と話し合いを終えた俺たちは、午後の授業のために教室に向かった。
午後の授業中、シロはさっきと同じ椅子に座って過ごしていた。
シロは記憶が戻っていないこともあり、しばらくは学習ノルマを与えず、授業の見学のみとすることになっている。
授業中のシロは楽しそうにするでも退屈そうにするでもなく、生徒たちが勉強する姿を静かに見つめていた。
俺はそんなシロを見つめつつ、キリヤたちが言った通り、雪を連想するようなきれいな髪と肌だななんて俺は思った。
でもこの風貌、誰かに似ているような……まあ、気のせいか。
そして俺は生徒たちの勉強を見守った。
それから数分後。シロを思ってか、マリアはいつもよりノルマを早めに終える。
そしてマリアはシロの前にきて、
「シロ、施設の中を案内してあげる。いこう」
シロにそう告げた。
そしてシロはマリアの言葉に頷く。
「先生、いい?」
「ああ、よろしくな」
俺がそう言って笑いかけると、マリアは嬉しそうに頷いてシロと教室を出て行った。
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