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第2章 変動
第13話ー⑥ それぞれが抱えるもの
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先に建物内に戻っていた僕は、医務室でレクリエーションの時にケガをした優香の処置をしていた。
「結構、やられたね……大丈夫?」
「は、はい。ご心配をおかけして、すみません……」
申し訳なさそうな顔をする優香。
そんな優香の顔を見て、僕は問う。
「どうしてこうなったの?」
しかし優香は答えたくなさそうな表情だ。
「まあ言いたくないならいいけどさ。喧嘩とかじゃないんだよね?」
「……はい。ただ私が烏丸君の技をよけられなかっただけです。狂司君には何の非もありません。私のせいでこうなっただけですから」
「そっか。喧嘩じゃないなら、いいさ」
そして優香は黙り込む。
「この辺かな……」
僕は優香の傷の一つに手を当てる。
「……傷口も浅いし、これならすぐにふさがりそうだね」
キリヤの手が触れると、優香の身体にあった傷は少しずつ塞がっていった。
「傷が……」
それをみた優香はとても驚いているようだった。
「ふふ。これを使うのは優香が初めてなんだ。みんなにはまだ内緒だよ」
「は、はあ。でも、なぜなんですか?」
疑問に思った優香はキリヤにそう問いかけた。
「なぜ、か……。うーん」
キリヤは優香のその問いに少し考える。
すると、そんなキリヤの様子を見た優香は慌てながら言った。
「い、いえ! あの言いたくなのなら、答えなくても大丈夫です!! すみません。余計なことを聞いてしまって……」
そしてしゅんとする優香。
「あ、ごめん! あの、ただ理由がなくて答えるのに困っただけなんだ。別に言いたくなかったわけじゃないよ」
「そうでしたか。それなら、よかったです……」
優香はキリヤのその言葉を聞き、安堵しているようだった。
でも僕もなぜ能力のことを隠すんだろう……。別に話しちゃダメなことなんてないんだけどな。
キリヤはそんなことをふと考えていた。
たぶんだけど、まだ僕自身が不確定なこの能力のことを口外したくなかっただけなのかもしれない。
僕はいつかこの力と向き合い、理解しあえた時に、先生やマリア、他のみんなに話せるといいって思う。
でもそうなると、それまで優香にはちょっと気を遣わせてしまうことになるな……。
そんなことを思っていると、僕はさっきの優香の態度が気になった。
そういえば優香はさっき、なんであんな慌てて謝っていたんだろう。そんなに僕は怖い顔をしていたのだろうか……。
僕はそんな疑問を抱きつつ、優香の手当を続けた。
その後、手当を終えた僕たちは教室に戻った。
僕は席につき、先ほど処置をした優香の傷口の回復具合を思い出して、新たな自分の力に手ごたえを感じていた。
「うん。あれくらいの精度なら使えそうかもね」
そして僕は研究所でしていた所長との会話を思い出す。
「それから、もう一つ。君に言っておきたいことがある……」
急に深刻な顔をする所長。
「どうしたんですか、そんな深刻な顔をして……。もしかして僕の身体に何かあったんですか!?」
「そうだね……。実はな、君にも複合能力が現れたみたいなんだ」
「複合能力……?」
初めて聞くワードに僕は首をひねった。
「ああ。暁君も無効化の他に獣人化の能力があるだろう? それと同じで君にももう一つの能力が目覚めたってことさ」
「そうでしたか……」
「キリヤ君、あのな……」
「そんなことくらいで、深刻な顔しないでくださいよ! びっくりしたじゃないですか!」
笑いながら、そう言って所長に返した。
そして僕の態度に呆気に取られている様子の所長。
たぶん所長は僕をフォローしようとして、慌てながら何かを言おうとしていたんだろう。
「落ち込まないのかい……?」
「え? まあ驚きはましたけど、落ち込む理由なんてなくないですか? それに能力が永遠になくならない事実を聞かされたあとなので、それ以上の驚きはないですね」
僕は人差し指を立てながら、自慢げにそう答えた。
「そ、そうか。そうなら、よかったよ!」
所長は僕のその言葉を聞き、安堵しているようだった。
「あの、それで。僕の複合能力って?」
「ああ、それなんだが……」
あの時、所長が妙に深刻な顔をするから、僕は何事かと思ったけれど、でも話を聞いてみたら、実際は大したことじゃなかったんだ。
僕はてっきり、『君の氷が君自身を蝕んできている!』とか『暴走したことで、命が半分以下になった……』とかそういう類のことかと思っていたんだけどね。
ちなみに所長から聞いた僕の複合能力は、『植物』というものだった。
植物の力を借りて、いろんなことができるのだとか。いろんなって言葉で括られたけど、所長自身も何ができるかはわかっていないらしい。
僕自身もこの能力で何ができるのかはまだわからないけれど、できることの可能性はだいぶ広がったんじゃないかと思う。
これからいろんなことを試して、この能力のことを理解していこう。
きっとこの力は多くの人を救えるものになるはずだから……。
そして僕は今日もいつものように学習ノルマを始めた。
「結構、やられたね……大丈夫?」
「は、はい。ご心配をおかけして、すみません……」
申し訳なさそうな顔をする優香。
そんな優香の顔を見て、僕は問う。
「どうしてこうなったの?」
しかし優香は答えたくなさそうな表情だ。
「まあ言いたくないならいいけどさ。喧嘩とかじゃないんだよね?」
「……はい。ただ私が烏丸君の技をよけられなかっただけです。狂司君には何の非もありません。私のせいでこうなっただけですから」
「そっか。喧嘩じゃないなら、いいさ」
そして優香は黙り込む。
「この辺かな……」
僕は優香の傷の一つに手を当てる。
「……傷口も浅いし、これならすぐにふさがりそうだね」
キリヤの手が触れると、優香の身体にあった傷は少しずつ塞がっていった。
「傷が……」
それをみた優香はとても驚いているようだった。
「ふふ。これを使うのは優香が初めてなんだ。みんなにはまだ内緒だよ」
「は、はあ。でも、なぜなんですか?」
疑問に思った優香はキリヤにそう問いかけた。
「なぜ、か……。うーん」
キリヤは優香のその問いに少し考える。
すると、そんなキリヤの様子を見た優香は慌てながら言った。
「い、いえ! あの言いたくなのなら、答えなくても大丈夫です!! すみません。余計なことを聞いてしまって……」
そしてしゅんとする優香。
「あ、ごめん! あの、ただ理由がなくて答えるのに困っただけなんだ。別に言いたくなかったわけじゃないよ」
「そうでしたか。それなら、よかったです……」
優香はキリヤのその言葉を聞き、安堵しているようだった。
でも僕もなぜ能力のことを隠すんだろう……。別に話しちゃダメなことなんてないんだけどな。
キリヤはそんなことをふと考えていた。
たぶんだけど、まだ僕自身が不確定なこの能力のことを口外したくなかっただけなのかもしれない。
僕はいつかこの力と向き合い、理解しあえた時に、先生やマリア、他のみんなに話せるといいって思う。
でもそうなると、それまで優香にはちょっと気を遣わせてしまうことになるな……。
そんなことを思っていると、僕はさっきの優香の態度が気になった。
そういえば優香はさっき、なんであんな慌てて謝っていたんだろう。そんなに僕は怖い顔をしていたのだろうか……。
僕はそんな疑問を抱きつつ、優香の手当を続けた。
その後、手当を終えた僕たちは教室に戻った。
僕は席につき、先ほど処置をした優香の傷口の回復具合を思い出して、新たな自分の力に手ごたえを感じていた。
「うん。あれくらいの精度なら使えそうかもね」
そして僕は研究所でしていた所長との会話を思い出す。
「それから、もう一つ。君に言っておきたいことがある……」
急に深刻な顔をする所長。
「どうしたんですか、そんな深刻な顔をして……。もしかして僕の身体に何かあったんですか!?」
「そうだね……。実はな、君にも複合能力が現れたみたいなんだ」
「複合能力……?」
初めて聞くワードに僕は首をひねった。
「ああ。暁君も無効化の他に獣人化の能力があるだろう? それと同じで君にももう一つの能力が目覚めたってことさ」
「そうでしたか……」
「キリヤ君、あのな……」
「そんなことくらいで、深刻な顔しないでくださいよ! びっくりしたじゃないですか!」
笑いながら、そう言って所長に返した。
そして僕の態度に呆気に取られている様子の所長。
たぶん所長は僕をフォローしようとして、慌てながら何かを言おうとしていたんだろう。
「落ち込まないのかい……?」
「え? まあ驚きはましたけど、落ち込む理由なんてなくないですか? それに能力が永遠になくならない事実を聞かされたあとなので、それ以上の驚きはないですね」
僕は人差し指を立てながら、自慢げにそう答えた。
「そ、そうか。そうなら、よかったよ!」
所長は僕のその言葉を聞き、安堵しているようだった。
「あの、それで。僕の複合能力って?」
「ああ、それなんだが……」
あの時、所長が妙に深刻な顔をするから、僕は何事かと思ったけれど、でも話を聞いてみたら、実際は大したことじゃなかったんだ。
僕はてっきり、『君の氷が君自身を蝕んできている!』とか『暴走したことで、命が半分以下になった……』とかそういう類のことかと思っていたんだけどね。
ちなみに所長から聞いた僕の複合能力は、『植物』というものだった。
植物の力を借りて、いろんなことができるのだとか。いろんなって言葉で括られたけど、所長自身も何ができるかはわかっていないらしい。
僕自身もこの能力で何ができるのかはまだわからないけれど、できることの可能性はだいぶ広がったんじゃないかと思う。
これからいろんなことを試して、この能力のことを理解していこう。
きっとこの力は多くの人を救えるものになるはずだから……。
そして僕は今日もいつものように学習ノルマを始めた。
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