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第2章 変動
第12話ー④ 新しい出会い
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食堂の片づけを終えた俺は職員室に戻り、報告書をまとめていた。
「えっと……今日は転入生が来て……施設内の説明と、歓迎会を……こんな感じでいいかな」
俺は作成した報告書を政府関係者に送信した後に、その場で背伸びをする。
「よし……今日の仕事は終了だな」
仕事を終えた俺は自室に戻ろうと立ち上がった時、職員室にキリヤがやってきた。
「先生、お疲れさま」
「お、キリヤか。どうした?」
「別に何かあったわけじゃないけど、ただ先生に会いたくなっただけ」
俺はキリヤの言ったその言葉に、嬉しくて思わずにやける。
「かわいいこと言ってくれるな!」
「ふふっ。僕は先生が大好きだからね!」
どや顔でそう言うキリヤ。
「大好きって……まあ嬉しいけどさ!」
俺は笑いながら、キリヤの言葉にそう返したのだった。
他の生徒たちの前では、しっかりとしたお兄さんでいようとするキリヤだが、俺の前ではちょっと違って、子供っぽい部分も見せてくれる。
そういうキリヤがかわいいと思うこともあるし、俺は嬉しかった。
そんなキリヤを見て、実家の兄妹たちももしかしたらこうやって甘えてくれたのかな……とそんなことを俺はふと思ったのだった。
「そういえば、奏多とは連絡取ってるの?」
キリヤは俺の隣に座ると、唐突にそんなことを聞いてくる。
「あー。いや、実は見送ったあの日から、一度も会話はしてないな」
「は!? 何やってんの!! 奏多が他の男に取られちゃってもいいの!?」
キリヤはいきなり大声を出して立ち上がる。
「ちょ、なんだよ、いきなり!!」
身を乗り出したキリヤは、声を荒げながら俺に語り出した。
「いやいやいや……奏多だよ!? あんなに可憐で美しいんだよ!? 他の男が放っておかないでしょ? それにあんまり連絡しないと、先生のこと忘れちゃうかもしれないし……女の子って頻繁に連絡を取らないと、パートナーに飽きるって聞いたことがある」
「それは……まずいな」
俺はキリヤの言ったことを聞き、自分が良くない傾向にあることを悟る。
確かに奏多はすごく美人だし、可憐で素敵な女の子だ。
お互いの気持ちを伝えあったとはいえ、確かに不安はある。
「ほら、連絡して! 今!!」
「い、今!? じゃ、じゃあメールしてみる」
「よしよし」
俺はメールを打とうとスマホのメール画面を開くが、なんて打っていいのかわからなかった。
そもそも俺は女の子とこういう関係になったこともなければ、メールなんてしたこともない……。
俺は今更、そんな事実に気が付いたのである。
「なあ、なんて打てばいい?」
困った俺はキリヤに聞いてみた。
「そんなのは自分で考えて!!」
「うぅ……わかりました……」
俺は渋々自分で考えてみたが、なかなか文章が思い浮かばない。
「なあ、キリヤーーー!!」
俺が泣きながら教えを乞うと、キリヤはやれやれと言った感じでアドバイスをくれた。
それからキリヤにもらったアドバイスを参考にしつつ、俺は奏多へのメールを完成させた。
『奏多、元気にしてるか? 俺は元気だよ。今日、新しい生徒が来て、これからが何か起こりそうで楽しみなんだ。奏多も慣れない土地で大変だと思うけど、無理せずに勉強に励んでくれ』
拙い言葉だと思ったけど、奏多はどう反応するだろう。
メールを送信した俺は、奏多からの返信を楽しみに待つことにした。
メールを送ってから30分後。奏多からの返信はなかった。
「ほんとにあれでよかったのか……」
なかなかこない返事に、俺はうずうずしていた。
「大丈夫じゃない? 先生っぽくて、素敵な文章だったと思うよ?」
キリヤはにやにやしながら、俺にそう言った。
「それって褒めてんのか……?」
なんだか馬鹿にされているような気もするが、今はそんなことより返信の有無が第一だ!
しかし……その後も奏多からのメールは返ってこなかった……。
待ちかねたキリヤは自室に戻り、俺も今日中の返信はないだろうと諦めつつあった。
「はあ。ま、奏多もいろいろ忙しいのかもな……」
そう言いつつ、俺は布団に潜る。
「でも、もう俺のことなんて、どうでもよくなっていたら……」
返信のない不安から、つい良くないことを考えてしまう。
こんな時は、さっさと眠るのがいいな……。
俺がそう思って目を閉じた時、スマホから通知音が聞こえた。
そして画面を見ると、奏多からの返信の通知だった。
『返信遅れてすみません。なんて返せばいいかを考えていたら、時間が経っていました。メール嬉しいです。私も元気でやっていますよ! 先生もご無理なさらず、楽しい生活をお送りください! p.s.先生に会えなくて私はさみしいです』
俺は奏多からの返信が来たことにホッとした。
そしてその内容にとても嬉しくなった。
「奏多も同じ思いだったんだな。良かった……」
そして俺は今日みたいな不安を感じないため、たまでもいいから奏多にメールをしようと思った。
それから俺は奏多と何回かメールを交わし、眠りについたのだった。
「えっと……今日は転入生が来て……施設内の説明と、歓迎会を……こんな感じでいいかな」
俺は作成した報告書を政府関係者に送信した後に、その場で背伸びをする。
「よし……今日の仕事は終了だな」
仕事を終えた俺は自室に戻ろうと立ち上がった時、職員室にキリヤがやってきた。
「先生、お疲れさま」
「お、キリヤか。どうした?」
「別に何かあったわけじゃないけど、ただ先生に会いたくなっただけ」
俺はキリヤの言ったその言葉に、嬉しくて思わずにやける。
「かわいいこと言ってくれるな!」
「ふふっ。僕は先生が大好きだからね!」
どや顔でそう言うキリヤ。
「大好きって……まあ嬉しいけどさ!」
俺は笑いながら、キリヤの言葉にそう返したのだった。
他の生徒たちの前では、しっかりとしたお兄さんでいようとするキリヤだが、俺の前ではちょっと違って、子供っぽい部分も見せてくれる。
そういうキリヤがかわいいと思うこともあるし、俺は嬉しかった。
そんなキリヤを見て、実家の兄妹たちももしかしたらこうやって甘えてくれたのかな……とそんなことを俺はふと思ったのだった。
「そういえば、奏多とは連絡取ってるの?」
キリヤは俺の隣に座ると、唐突にそんなことを聞いてくる。
「あー。いや、実は見送ったあの日から、一度も会話はしてないな」
「は!? 何やってんの!! 奏多が他の男に取られちゃってもいいの!?」
キリヤはいきなり大声を出して立ち上がる。
「ちょ、なんだよ、いきなり!!」
身を乗り出したキリヤは、声を荒げながら俺に語り出した。
「いやいやいや……奏多だよ!? あんなに可憐で美しいんだよ!? 他の男が放っておかないでしょ? それにあんまり連絡しないと、先生のこと忘れちゃうかもしれないし……女の子って頻繁に連絡を取らないと、パートナーに飽きるって聞いたことがある」
「それは……まずいな」
俺はキリヤの言ったことを聞き、自分が良くない傾向にあることを悟る。
確かに奏多はすごく美人だし、可憐で素敵な女の子だ。
お互いの気持ちを伝えあったとはいえ、確かに不安はある。
「ほら、連絡して! 今!!」
「い、今!? じゃ、じゃあメールしてみる」
「よしよし」
俺はメールを打とうとスマホのメール画面を開くが、なんて打っていいのかわからなかった。
そもそも俺は女の子とこういう関係になったこともなければ、メールなんてしたこともない……。
俺は今更、そんな事実に気が付いたのである。
「なあ、なんて打てばいい?」
困った俺はキリヤに聞いてみた。
「そんなのは自分で考えて!!」
「うぅ……わかりました……」
俺は渋々自分で考えてみたが、なかなか文章が思い浮かばない。
「なあ、キリヤーーー!!」
俺が泣きながら教えを乞うと、キリヤはやれやれと言った感じでアドバイスをくれた。
それからキリヤにもらったアドバイスを参考にしつつ、俺は奏多へのメールを完成させた。
『奏多、元気にしてるか? 俺は元気だよ。今日、新しい生徒が来て、これからが何か起こりそうで楽しみなんだ。奏多も慣れない土地で大変だと思うけど、無理せずに勉強に励んでくれ』
拙い言葉だと思ったけど、奏多はどう反応するだろう。
メールを送信した俺は、奏多からの返信を楽しみに待つことにした。
メールを送ってから30分後。奏多からの返信はなかった。
「ほんとにあれでよかったのか……」
なかなかこない返事に、俺はうずうずしていた。
「大丈夫じゃない? 先生っぽくて、素敵な文章だったと思うよ?」
キリヤはにやにやしながら、俺にそう言った。
「それって褒めてんのか……?」
なんだか馬鹿にされているような気もするが、今はそんなことより返信の有無が第一だ!
しかし……その後も奏多からのメールは返ってこなかった……。
待ちかねたキリヤは自室に戻り、俺も今日中の返信はないだろうと諦めつつあった。
「はあ。ま、奏多もいろいろ忙しいのかもな……」
そう言いつつ、俺は布団に潜る。
「でも、もう俺のことなんて、どうでもよくなっていたら……」
返信のない不安から、つい良くないことを考えてしまう。
こんな時は、さっさと眠るのがいいな……。
俺がそう思って目を閉じた時、スマホから通知音が聞こえた。
そして画面を見ると、奏多からの返信の通知だった。
『返信遅れてすみません。なんて返せばいいかを考えていたら、時間が経っていました。メール嬉しいです。私も元気でやっていますよ! 先生もご無理なさらず、楽しい生活をお送りください! p.s.先生に会えなくて私はさみしいです』
俺は奏多からの返信が来たことにホッとした。
そしてその内容にとても嬉しくなった。
「奏多も同じ思いだったんだな。良かった……」
そして俺は今日みたいな不安を感じないため、たまでもいいから奏多にメールをしようと思った。
それから俺は奏多と何回かメールを交わし、眠りについたのだった。
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