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第1章 始まり
第6話ー⑤ 信じることの難しさ
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車が研究所に着き、キリヤはすぐに検査をすることになった。
俺は研究員だけが入れる観測ルームに特別に入れてもらえることになり、そこで検査をするキリヤを見守っていた。
俺がキリヤをガラス越しに見つめていると、背後から所長がやってくる。
「やあ。しばらくぶりかな。元気にしていたかい、暁君」
「所長……。お久しぶりです。自分は問題ないです。でも……自分の失態で生徒を……」
所長はキリヤを見つめて、俺に告げる。
「君の失態ではないよ。だからそんなに思いつめないでくれ。しかし君には少し酷かもしれないが……もしかしたら、キリヤ君は助からないかもしれない」
「え……」
俺は所長のその言葉に、言葉を失った。
「……すまないな。私達が力不足なばかりに辛い思いをさせてしまって……君を教師に推薦したのは私なのに」
「そんな!! 何かないですか!? キリヤを救う方法は……」
「助かる可能性は、ゼロではない……だが、私たちにできることは何もないんだ。私達は彼の心を信じて待つしかないんだよ。彼が助かる方法は、彼自身が戻ってきたいと思えるかどうかなんだ」
「そう、ですか……」
俺は再びガラス越しにキリヤを見つめた。
「キリヤが戻ってきたいと思えるかどうか、か……」
俺が観測ルームにいる間も、ここにいる研究員の人たちはいそいそと働いていた。そしてそれぞれの作業をしつつ、キリヤのことをひそひそと話しているのが聞こえた。
「かわいそうに……この子には、もう未来がないなんて」
「でも仕方がないよこれが能力者の運命なんだからさ」
それはまるで、キリヤがもう助からないと決め付けたような口ぶりだった。
俺は、俺以外の全員が無理だと言っても、キリヤが戻ってくると信じる。何があっても、俺は……俺だけは絶対に信じるって約束したんだからな!
――だから必ず戻ってこい、キリヤ!!
そして一通りキリヤの検査が終わったときには、もう日付を超えていた。
検査後、キリヤは個室に移り、俺は所長に頼んでキリヤのベッドのそばにいさせてもらった。
何ができるってわけじゃないけど、俺はキリヤを信じると決めた。だから俺はここでキリヤを待つ。
キリヤは必ず目覚めると信じて。
目を開けると、僕は見知らぬ場所にいた。
「僕、どうしたんだっけ……」
そこは真っ白で何もない空間だった。
たしか僕はあいつとあの時……それから僕はどうなったんだっけ?
……そうだ。僕はあいつと戦って、そのまま意識を……。
もしかしたら僕の心は壊れてしまったのかもしれない。この空間は、虚無になった僕の心なのかな。
能力の暴走をすれば、心が崩壊する。
そうやってあいつが言っていたっけ。
「僕は本当に独りぼっちになってしまったんだな」
でもこれでもう誰かに裏切られることもない。
ここにいれば、僕はもう傷つくことなんてないんだ。
「これでよかったんだよね……」
意識が途切れる前に聞えた、あいつの言葉をふと思い出す。
「何があっても信じる、か……」
もし本当にそうなら、僕はまた心から笑える日が来るかもしれない。
でもまた裏切られて、傷つくのは怖い……
あの時みたいに信じていた人に裏切られたら、本当に僕はもう二度と人を信じられなくなるかもしれない。
……でももし叶うなら、もう一度だけ信じるチャンスがほしい。
あの時の僕は、本当は心から大人たちを信じようとしていなくて、それを見透かした神様が僕に天罰を与えたのかもしれない。
今度こそ、僕は心から誰かを信じたい……僕は、変わりたいんだ!
僕がそう強く思ったとき、この真っ白な世界に何かが広がった。
そして真っ白だった世界が壊れ始める。
「これは、一体……?」
僕は驚きながら、壊れ行く世界を見つめる。
そして僕の目の前に、幼い頃の僕が現れた。幼い僕は、目の前の僕に向かって心配そうにこう告げる。
『本当に信じられるの? また裏切られるかもしれないよ? それでも耐えられる? 次はきっともうないよ?』
そんな幼い僕の目をしっかりと見つめて、僕は答えた。
「信じるさ。僕を信じると言ってくれたあいつと僕自身を」
『そっか。わかった。……きっと今の君なら大丈夫そうだね』
幼い僕は優しく微笑み、僕の前から姿を消した。
「帰ろう。僕を待っているあの人の元へ」
そして足元が崩れて、僕は闇の中へと落ちていった。
僕が目を覚ますと、そこは知らない天井だった。
いくつもの機械音が響いており、おそらくいつもいる施設ではないことはわかった。
そして意識がしっかりとしてくると、左手に温もりを感じた。
僕はその方へ目を向けると、誰かが僕の左手をしっかりと掴んでいるようだった。
そしてまじまじと見てみると、そこには寝息を立ててぐっすりと眠りながら、僕の左手を握っている暁先生がいた。
「……せん、せい?」
僕は声を掛けてみたものの、ぐっすり眠っている先生には僕の声が聞こえていないようで……。
もしかして僕の意識が途切れたあの時から、ずっと僕のそばにいてくれたのだろうか。もしそうだとしたら、この人はほんとに馬鹿だな。
でも僕が目覚めることを信じて疑わなかったんだね……
「……ん」
さっきまで寝息を立てていた先生は、そろそろお目覚めの時間みたいだ。
僕は合図をするように、先生の手を強く握った。
その合図に気づいた先生は伏せていた顔をゆっくりと上げて、僕の顔を覗き込む。
先生は僕が目覚めているのをその目で確認してから、
「……キ、キリヤ!? 目を覚ましたのか!! よかった!! ほんとによかった!!」
そう言って、思いっきり僕に抱き着いた。
「先生、そういうの暑苦しいよ。それに痛いんだけど……」
僕は先生の勢いに圧倒されて、つい悪態をついてしまう。
でも嫌ってわけじゃない。本当は嬉しかったけれど、こういう時になんて言えばいいのか、僕はわからないだけなんだ。
そして先生は申し訳なさそうに、僕の身体から離れる。
「ははは……悪い、悪い! そうだ! ちょっと待ってろよ! 所長に報告してくる!」
そういって先生は大童で部屋を飛び出していった。
「せ、先生!?」
僕は身体を起こし、先生の出て行った扉を見つめた。
「はあ。もう少し再会を喜びたかったけどな……まあいっか。先生との時間はまだまだたくさんあるからね」
そう言いながら、僕は笑っていた。
そして僕はいつの日からか、自然な笑顔ができなくなっていた自分に気が付く。
こんなに自然に笑えたのはいつぶりだろうか……僕はこの感覚をずっと忘れていたかもしれない。
久しぶりの本当の笑顔に、僕は嬉しくなったのだった。
俺は研究員だけが入れる観測ルームに特別に入れてもらえることになり、そこで検査をするキリヤを見守っていた。
俺がキリヤをガラス越しに見つめていると、背後から所長がやってくる。
「やあ。しばらくぶりかな。元気にしていたかい、暁君」
「所長……。お久しぶりです。自分は問題ないです。でも……自分の失態で生徒を……」
所長はキリヤを見つめて、俺に告げる。
「君の失態ではないよ。だからそんなに思いつめないでくれ。しかし君には少し酷かもしれないが……もしかしたら、キリヤ君は助からないかもしれない」
「え……」
俺は所長のその言葉に、言葉を失った。
「……すまないな。私達が力不足なばかりに辛い思いをさせてしまって……君を教師に推薦したのは私なのに」
「そんな!! 何かないですか!? キリヤを救う方法は……」
「助かる可能性は、ゼロではない……だが、私たちにできることは何もないんだ。私達は彼の心を信じて待つしかないんだよ。彼が助かる方法は、彼自身が戻ってきたいと思えるかどうかなんだ」
「そう、ですか……」
俺は再びガラス越しにキリヤを見つめた。
「キリヤが戻ってきたいと思えるかどうか、か……」
俺が観測ルームにいる間も、ここにいる研究員の人たちはいそいそと働いていた。そしてそれぞれの作業をしつつ、キリヤのことをひそひそと話しているのが聞こえた。
「かわいそうに……この子には、もう未来がないなんて」
「でも仕方がないよこれが能力者の運命なんだからさ」
それはまるで、キリヤがもう助からないと決め付けたような口ぶりだった。
俺は、俺以外の全員が無理だと言っても、キリヤが戻ってくると信じる。何があっても、俺は……俺だけは絶対に信じるって約束したんだからな!
――だから必ず戻ってこい、キリヤ!!
そして一通りキリヤの検査が終わったときには、もう日付を超えていた。
検査後、キリヤは個室に移り、俺は所長に頼んでキリヤのベッドのそばにいさせてもらった。
何ができるってわけじゃないけど、俺はキリヤを信じると決めた。だから俺はここでキリヤを待つ。
キリヤは必ず目覚めると信じて。
目を開けると、僕は見知らぬ場所にいた。
「僕、どうしたんだっけ……」
そこは真っ白で何もない空間だった。
たしか僕はあいつとあの時……それから僕はどうなったんだっけ?
……そうだ。僕はあいつと戦って、そのまま意識を……。
もしかしたら僕の心は壊れてしまったのかもしれない。この空間は、虚無になった僕の心なのかな。
能力の暴走をすれば、心が崩壊する。
そうやってあいつが言っていたっけ。
「僕は本当に独りぼっちになってしまったんだな」
でもこれでもう誰かに裏切られることもない。
ここにいれば、僕はもう傷つくことなんてないんだ。
「これでよかったんだよね……」
意識が途切れる前に聞えた、あいつの言葉をふと思い出す。
「何があっても信じる、か……」
もし本当にそうなら、僕はまた心から笑える日が来るかもしれない。
でもまた裏切られて、傷つくのは怖い……
あの時みたいに信じていた人に裏切られたら、本当に僕はもう二度と人を信じられなくなるかもしれない。
……でももし叶うなら、もう一度だけ信じるチャンスがほしい。
あの時の僕は、本当は心から大人たちを信じようとしていなくて、それを見透かした神様が僕に天罰を与えたのかもしれない。
今度こそ、僕は心から誰かを信じたい……僕は、変わりたいんだ!
僕がそう強く思ったとき、この真っ白な世界に何かが広がった。
そして真っ白だった世界が壊れ始める。
「これは、一体……?」
僕は驚きながら、壊れ行く世界を見つめる。
そして僕の目の前に、幼い頃の僕が現れた。幼い僕は、目の前の僕に向かって心配そうにこう告げる。
『本当に信じられるの? また裏切られるかもしれないよ? それでも耐えられる? 次はきっともうないよ?』
そんな幼い僕の目をしっかりと見つめて、僕は答えた。
「信じるさ。僕を信じると言ってくれたあいつと僕自身を」
『そっか。わかった。……きっと今の君なら大丈夫そうだね』
幼い僕は優しく微笑み、僕の前から姿を消した。
「帰ろう。僕を待っているあの人の元へ」
そして足元が崩れて、僕は闇の中へと落ちていった。
僕が目を覚ますと、そこは知らない天井だった。
いくつもの機械音が響いており、おそらくいつもいる施設ではないことはわかった。
そして意識がしっかりとしてくると、左手に温もりを感じた。
僕はその方へ目を向けると、誰かが僕の左手をしっかりと掴んでいるようだった。
そしてまじまじと見てみると、そこには寝息を立ててぐっすりと眠りながら、僕の左手を握っている暁先生がいた。
「……せん、せい?」
僕は声を掛けてみたものの、ぐっすり眠っている先生には僕の声が聞こえていないようで……。
もしかして僕の意識が途切れたあの時から、ずっと僕のそばにいてくれたのだろうか。もしそうだとしたら、この人はほんとに馬鹿だな。
でも僕が目覚めることを信じて疑わなかったんだね……
「……ん」
さっきまで寝息を立てていた先生は、そろそろお目覚めの時間みたいだ。
僕は合図をするように、先生の手を強く握った。
その合図に気づいた先生は伏せていた顔をゆっくりと上げて、僕の顔を覗き込む。
先生は僕が目覚めているのをその目で確認してから、
「……キ、キリヤ!? 目を覚ましたのか!! よかった!! ほんとによかった!!」
そう言って、思いっきり僕に抱き着いた。
「先生、そういうの暑苦しいよ。それに痛いんだけど……」
僕は先生の勢いに圧倒されて、つい悪態をついてしまう。
でも嫌ってわけじゃない。本当は嬉しかったけれど、こういう時になんて言えばいいのか、僕はわからないだけなんだ。
そして先生は申し訳なさそうに、僕の身体から離れる。
「ははは……悪い、悪い! そうだ! ちょっと待ってろよ! 所長に報告してくる!」
そういって先生は大童で部屋を飛び出していった。
「せ、先生!?」
僕は身体を起こし、先生の出て行った扉を見つめた。
「はあ。もう少し再会を喜びたかったけどな……まあいっか。先生との時間はまだまだたくさんあるからね」
そう言いながら、僕は笑っていた。
そして僕はいつの日からか、自然な笑顔ができなくなっていた自分に気が付く。
こんなに自然に笑えたのはいつぶりだろうか……僕はこの感覚をずっと忘れていたかもしれない。
久しぶりの本当の笑顔に、僕は嬉しくなったのだった。
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