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面倒なのです

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 最近、学園に行くのが物凄く面倒くさい。
もうカリキュラムは全て終わらせているので卒業まで毎日通う必要はないのだが、生徒会の仕事があるため行かないわけにはいかないのだ。

今日も生徒会室でせっせと仕事に打ち込む。
なんせ、クソ王子が生徒会長という大きなお荷物を抱えている状態での仕事なので、本来であれば会長がやるべき仕事も皆、他の役員に回ってくるのだ。

当の会長という名のお荷物は、普段であれば生徒会室などには足を踏み入れず、自分より頭の弱い令嬢を捉まえては逢瀬を楽しむという遊びに興じているのが常なのに、どういう訳か最近はここにいる。金がかった茶色の髪に、茶色の瞳。見目だけはまあまあ整っている男がいるだけで仕事などしない、というか話しかけてくるので邪魔だ。

「おい、アンジェリーナ。先ほどからずっと何故私を見ない?」
「見る必要がないからです」
「婚約者の身でありながらその態度はなんなんだ」
「婚約者ではありませんので」
「婚約者だろ」
「いいえ、ガルヴァーニ家ではお断りさせて頂いております」
「なんでだ!?王妃になれるというのに」
「フィエロ殿下という素晴らしい王太子がおりますのに、何を世迷言を」
「ふん。人間、いつ何時どうなるかなんてわからないだろう」
「それを言うならカッシオ殿下もですわね」
「?」
ほらバカ。こんな返しも理解できないなんて。
ああ、ホントもうどっかにいってくれないだろうか。

「ところでおまえ最近、学園が終わると何処に行っているんだ?屋敷に行っても居ないと言われるぞ」
先ぶれもせずに訪問する方が悪いと言いたいが、男装して騎士団に行ってますなんて絶対に言えない。

「別に何処にも行っておりませんが。ああ、でも子供院にはちょくちょく行きますわね」
これは本当の事だ。子供院のある場所は、ガルヴァーニ家の領地の一部でもあるので、寄付をしたり暗部の者たちと勉強を教えたりしている。必要最低限の知識や技術を身につけさせて独り立ちするのを手伝うのだ。そして、素質があれば暗部への勧誘もある。

「貴族がそんな所に入り浸るなんて恥ずかしくないのか?」
「どうして恥ずかしいのですか?未来の担い手を育てることに誇りは感じても、恥じ入ることなんて何一つありませんが。フィエロ殿下とディアナ姉様もたまに行っておりますよ」

「ふん、貴族は貴族らしい場所にいてこそだ」
「そんな貴族を支えているのは国民、平民の方々ですよ」
「おまえバカだろ。平民に施しをしてやっているのが貴族だ」

ああ、もう話にならない。バカにバカ呼ばわりされたし、もう殴って黙らせたい。なんて考えていたら生徒会室の扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
開けることを促すと、オレンジがかった茶髪の小さな可愛らしい令嬢が顔を覗かせた。
「あの、殿下は……」
可愛らしい声でクソ王子の所在を確認する。

「ああ、カッシオ殿下ならここにいるわ。どうぞ連れて行って」
カッシオ殿下の背中を強引に押す。
「ほら、可愛らしい彼女が迎えに来たのですから早くお行きください」
「ちょ、待て。転ぶ」
言った途端、躓いた殿下。
流石に彼女の前で、すっ転ぶ様は見せたくないだろうと思い襟元を掴んで転ぶのを防いでやる。

「おまえ!」
そう叫び出す殿下をさっさと扉の外に追いだした。
「お待たせしたわね。どうぞ」
彼女に殿下を託すと、とっとと扉を閉めた。

「はあ、スッキリした。皆ごめんなさいね。さ、邪魔者は居なくなったから頑張って終わらせましょう」
他の役員に向かって言うと、明らかにほっとした様子で仕事を再開する。それはそうだ。あの空気の中仕事をするのはしんどかっただろう。

申し訳なかったと反省しつつ、手早く人数分のお茶を淹れお菓子を用意して皆に配る。これで皆の心が休まると良いのだけど。そう思いながら私も仕事を再開するのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 中庭で気に入りの女と過ごす。俺より小さくて、俺の言う事は何でも肯定してくれる。やはり女はこうあらねば。あの女は俺とほとんど変わらない身長で、全く俺に敬意を示さない。それどころかこっちが言う事全て論破してくる。

見た目はいい女だ。絹糸のような金の髪と宝石のように青く光る瞳。細い腰になかなか豊満な胸、肌も白くて滑らかそうだ。さぞ良い触り心地をしているだろう。

俺の妃になるには見た目は合格だ。だが、あの賢さと俺をないがしろにする所をなんとかしなくては。母上には、惚れさせてしまえば何でも言う事を聞くはずだと言われた。俺の魅力を最大限引き出せばきっとあの女も落ちるだろう。

あの女が俺の言いなりになる……想像してしてみた。これは滾るな。
そんな事を考えながら、俺は隣に座っているオレンジの髪を優しく梳くのだった。
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