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エルマンノ・ボルゲーゼ3
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「贈られてきたらしいじゃないか」
俺のこの言葉だけで察したゲイブリエル殿下とデュラン。二人とも悪い笑みだ。
「ああ、まんまとな」
「これ、見る?」
デュランが書類を俺に渡す。
「なんだ?」
そこにはダヴィデ殿下が贈ったチョコの成分表が書かれていた。
「媚薬の方だったか」
「ふふふ、本当にアホ王子だよね。しかも、メッセージカードも付いていてね、ほら」
デュランが今度はカードを俺に渡す。
『珍しいチョコが手に入った。先日の詫びとして受け取って欲しい。味の感想を聞きたいから午後に会いに行く』
「ほお、こう書けば食べるしかないというわけか。考えたな」
あのアホにしては考えたじゃないか、そう思ったのだが。
「違う違う、考えたのは側近のように傍にいる……あれ?なんだったかな」
「ペッキア男爵だ」
「そうそう。ペッキア男爵家のファビオって男だよ。どうやらダヴィデ殿下の側近の地位を狙っているらしいよ」
「へえ、いいじゃないか」
俺たちはアホ王子に仕える気はないからちょうどいいと思う。
「それと、この子には双子の妹がいてね。それがクラスの中で一番のダヴィデ殿下のお気に入りらしい」
「兄妹揃ってダヴィデ殿下に取り入る事が出来たんだ、凄いな」
「エルマンノ、心底どうでもいいと思っているでしょ」
「心底までじゃないぞ。思ってはいるけど」
「因みにもう一人ダヴィデ殿下の側近を気取ってる子がいてね」
「へえ」
「ゼラフィーノ・ルッカーニだって」
「ルッカーニって、副団長の?」
「そう、副団長の息子だって」
俺はゼラフィーノという奴を知っている。名前は知らなかったが、副団長の子息が訓練に参加すると聞いて楽しみにしていた。その頃はゲイブリエル殿下もデュランも、仕事が忙しい事が多々あって、訓練に参加することが少なく、同じ年頃の奴がいなかったから純粋に嬉しかったんだ。
ところがだ。いざ対峙してみたら、がっかりだった。剣の使い方はちゃんと学んでいるようだが、如何せん実力が伴わない。頭では理解していても身体が動かないようで、騎士としてとてもやっていけるような実力ではなかった。
そんなのが側近?ちょっと笑ってしまうのは仕方がないだろう。
「エルマンノ、悪い顔してるぞ」
ゲイブリエル殿下に突っ込まれる。
「そりゃ、仕方ない。あんな出来ない奴が側近だなんて、ダヴィデ殿下の周囲には同じようなアホが集まるようになっているんじゃないのか?」
「ははは、なにそれ。でもまあこれで、アリーとの婚約は完全に白紙に出来そうだよ。結婚するまでは身体の関係はご法度なのに、媚薬まで使って襲っちゃおうなんて完全にアウトだからね」
デュランの機嫌がすこぶるいい。
「そろそろ飯にしないか?この時間ならアリーたちがいるかもしれない」
さっきからソワソワしていたゲイブリエル殿下。どうやら殿下も機嫌がめちゃくちゃいいらしい。
「よし、じゃあ行くか。訓練してきたから俺の腹も限界だったんだ」
食堂に到着すると、すぐに目当てを見つけた。あっちもこっちに気付いたようだ。アリーが嬉しそうに手を振った。ランザも小さく手を振っているのが見えて、俺は自然と笑顔になってしまう。
「だらしない顔になっちゃってるよ」
デュランに突っ込まれる。
「いや、おまえには負けるよ」
デュランもデレっとした顔になっていた。フランカ嬢が可愛くて仕方ないらしい。
「でもまあ、あの顔には負けるかな」
デュランが顎で指した先にはゲイブリエル殿下がいた。蕩けそうな顔でフラフラとアリーに向かっている。
「俺もそろそろ、ああなるかな?」
「エルマンノの前に俺がなるかも」
思わず二人でそれを想像して笑ってしまった。
「チョコは役に立ちましたか?」
アリーが聞いてきた。
「ああ、それはもう。アリーが本当に好きな人と幸せになるためにまた一歩前進だ」
デュランが優しく言うと、一瞬にして真っ赤になってしまったアリー。
「はうっ」
「うっ」
なにやら呻き声が聞こえたと思ったら、ランザとフランカ嬢が悶えていた。
「最近はもう、耐性が付いたと思っていたのに」
「真っ赤になるアリーは初めてでしたわ」
二人はアリーの恥ずかしがった表情にやられたらしい。
そして、そんなランザの仕草に俺はやられた。悶えてる姿も可愛いとか、なんなんだ。
横ではデュランがやられている。なにより、アリーの赤面の時点でゲイブリエル殿下は撃沈していた。
傍からみたらこの席の奴らは何をしてるんだ?と思われそうだ。
なんとか立ち直り、俺たちは食事を開始した。アリーたちはすでに終わっていたらしくお茶を飲みながら楽しそうに話している。
「週末、行けそう?」
フランカ嬢がアリーに何かを確認した。
「うん。護衛は付けられてしまうけど」
「私も大丈夫よ」
「なんだ、週末に何かあるのか?」
口に入れていた肉を飲み込んでから聞くと、ランザが答えてくれた。
「はい、三人で街へ出かけようって話になっているんです」
「三人でか?」
「はい、アリーがお姉様に何か美味しい物を買ってあげたいって」
「ああ、戻って来てるんだったな」
ゲイブリエル殿下がアリーを見つめながら言った。というか、ずっとアリーしか見てない。いつも以上に酷くないか?
「週末か……何か予定はあったか?」
ゲイブリエル殿下が俺たちに確認する。
「特にはありませんよ。エルマンノも訓練はなかったはずですし」
「ああ、今週はもう訓練はないな」
「ならばこういうのはどうだろう?」
俺のこの言葉だけで察したゲイブリエル殿下とデュラン。二人とも悪い笑みだ。
「ああ、まんまとな」
「これ、見る?」
デュランが書類を俺に渡す。
「なんだ?」
そこにはダヴィデ殿下が贈ったチョコの成分表が書かれていた。
「媚薬の方だったか」
「ふふふ、本当にアホ王子だよね。しかも、メッセージカードも付いていてね、ほら」
デュランが今度はカードを俺に渡す。
『珍しいチョコが手に入った。先日の詫びとして受け取って欲しい。味の感想を聞きたいから午後に会いに行く』
「ほお、こう書けば食べるしかないというわけか。考えたな」
あのアホにしては考えたじゃないか、そう思ったのだが。
「違う違う、考えたのは側近のように傍にいる……あれ?なんだったかな」
「ペッキア男爵だ」
「そうそう。ペッキア男爵家のファビオって男だよ。どうやらダヴィデ殿下の側近の地位を狙っているらしいよ」
「へえ、いいじゃないか」
俺たちはアホ王子に仕える気はないからちょうどいいと思う。
「それと、この子には双子の妹がいてね。それがクラスの中で一番のダヴィデ殿下のお気に入りらしい」
「兄妹揃ってダヴィデ殿下に取り入る事が出来たんだ、凄いな」
「エルマンノ、心底どうでもいいと思っているでしょ」
「心底までじゃないぞ。思ってはいるけど」
「因みにもう一人ダヴィデ殿下の側近を気取ってる子がいてね」
「へえ」
「ゼラフィーノ・ルッカーニだって」
「ルッカーニって、副団長の?」
「そう、副団長の息子だって」
俺はゼラフィーノという奴を知っている。名前は知らなかったが、副団長の子息が訓練に参加すると聞いて楽しみにしていた。その頃はゲイブリエル殿下もデュランも、仕事が忙しい事が多々あって、訓練に参加することが少なく、同じ年頃の奴がいなかったから純粋に嬉しかったんだ。
ところがだ。いざ対峙してみたら、がっかりだった。剣の使い方はちゃんと学んでいるようだが、如何せん実力が伴わない。頭では理解していても身体が動かないようで、騎士としてとてもやっていけるような実力ではなかった。
そんなのが側近?ちょっと笑ってしまうのは仕方がないだろう。
「エルマンノ、悪い顔してるぞ」
ゲイブリエル殿下に突っ込まれる。
「そりゃ、仕方ない。あんな出来ない奴が側近だなんて、ダヴィデ殿下の周囲には同じようなアホが集まるようになっているんじゃないのか?」
「ははは、なにそれ。でもまあこれで、アリーとの婚約は完全に白紙に出来そうだよ。結婚するまでは身体の関係はご法度なのに、媚薬まで使って襲っちゃおうなんて完全にアウトだからね」
デュランの機嫌がすこぶるいい。
「そろそろ飯にしないか?この時間ならアリーたちがいるかもしれない」
さっきからソワソワしていたゲイブリエル殿下。どうやら殿下も機嫌がめちゃくちゃいいらしい。
「よし、じゃあ行くか。訓練してきたから俺の腹も限界だったんだ」
食堂に到着すると、すぐに目当てを見つけた。あっちもこっちに気付いたようだ。アリーが嬉しそうに手を振った。ランザも小さく手を振っているのが見えて、俺は自然と笑顔になってしまう。
「だらしない顔になっちゃってるよ」
デュランに突っ込まれる。
「いや、おまえには負けるよ」
デュランもデレっとした顔になっていた。フランカ嬢が可愛くて仕方ないらしい。
「でもまあ、あの顔には負けるかな」
デュランが顎で指した先にはゲイブリエル殿下がいた。蕩けそうな顔でフラフラとアリーに向かっている。
「俺もそろそろ、ああなるかな?」
「エルマンノの前に俺がなるかも」
思わず二人でそれを想像して笑ってしまった。
「チョコは役に立ちましたか?」
アリーが聞いてきた。
「ああ、それはもう。アリーが本当に好きな人と幸せになるためにまた一歩前進だ」
デュランが優しく言うと、一瞬にして真っ赤になってしまったアリー。
「はうっ」
「うっ」
なにやら呻き声が聞こえたと思ったら、ランザとフランカ嬢が悶えていた。
「最近はもう、耐性が付いたと思っていたのに」
「真っ赤になるアリーは初めてでしたわ」
二人はアリーの恥ずかしがった表情にやられたらしい。
そして、そんなランザの仕草に俺はやられた。悶えてる姿も可愛いとか、なんなんだ。
横ではデュランがやられている。なにより、アリーの赤面の時点でゲイブリエル殿下は撃沈していた。
傍からみたらこの席の奴らは何をしてるんだ?と思われそうだ。
なんとか立ち直り、俺たちは食事を開始した。アリーたちはすでに終わっていたらしくお茶を飲みながら楽しそうに話している。
「週末、行けそう?」
フランカ嬢がアリーに何かを確認した。
「うん。護衛は付けられてしまうけど」
「私も大丈夫よ」
「なんだ、週末に何かあるのか?」
口に入れていた肉を飲み込んでから聞くと、ランザが答えてくれた。
「はい、三人で街へ出かけようって話になっているんです」
「三人でか?」
「はい、アリーがお姉様に何か美味しい物を買ってあげたいって」
「ああ、戻って来てるんだったな」
ゲイブリエル殿下がアリーを見つめながら言った。というか、ずっとアリーしか見てない。いつも以上に酷くないか?
「週末か……何か予定はあったか?」
ゲイブリエル殿下が俺たちに確認する。
「特にはありませんよ。エルマンノも訓練はなかったはずですし」
「ああ、今週はもう訓練はないな」
「ならばこういうのはどうだろう?」
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