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ゲーム開始?
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ある日。
ガエターノ団長から事務所に集まるように言われた。
「学園の男爵令嬢で光魔法を持つ者が現れたそうだ」
「へえ、珍しいですね。後天性ですか」
「そうらしい。しかもなかなかの強さだそうだ。それでその令嬢に護衛を付ける事になった」
これは、とうとう来たらしい。ゲーム開始になるのだろうか。
「アルセニオ、おまえがやれ」
やはりそうなるか。私がひとり頷いていると、盛大な駄々が聞こえた。
「ええええ、ヤダヤダヤダ。俺は訓練していた方が輝く男だぞ。小娘に付き添うなんて嫌だあああ」
まあ、アルセニオは訓練大好きだからな。その時間が削られるのは辛いだろう。
団長がニヤリとした。
「バカだなおまえ。ヴィヴィアーナ殿下の同級生だぞ。朝は別だが帰りは一緒だ。これからその令嬢は城で1年間、教会の人間に光魔法を学ぶことになるんだからな」
途端に晴れやかな表情になるアルセニオ。おいおい。まさか殿下の事を?
「おい、殿下に邪な気持ちを抱いているのか?お前には触れさせないぞ」
晴れやかな表情から一気に泣き顔になったアルセニオ。そんなに悲しいか?
「お前は力の加減を知らないからな。姫様は繊細なんだ。そんなに好きなら今以上に優しく触れる事をまず覚えろ」
親切心で言ったのに、泣いている。ロレット殿と団長は、どうしてなのか、めちゃくっちゃウケている。
「エルダ」
泣きながら私を呼ぶ。
「なんだ?」
「俺は決して少女趣味じゃないぞ」
「そうなのか?」
「ああ、俺はもっと大人の女がいい」
「年上か。それは中々難しいな。」
「ううう」
「泣くな。愚痴くらいいくらでも聞いてやる」
その間、団長が笑い過ぎてひきつけをを起こしていた。だからなんでだ。
翌日から早速、令嬢の護衛が始まった。アルセニオも私と一緒で学園内には入れないらしい。自宅から学園。学園から王城の警護をするという事らしい。
殿下を馬車から降ろして見送っていると、徒歩で二人が現れた。がっちりと腕に絡みついているカプアート嬢と、溜息を何度も吐くアルセニオ。
「ほら、もう着いただろ。さっさと行け」
腕を強引に外し、野良猫を追い払うようにシッシとしている。
「アルセニオ様。お迎え、楽しみにしていますね」
こちらはとてもご満悦そうだ。
「あっという間に懐かれたようだな」
声を掛ければ、どっと疲れたような表情で見返してくる。
「なあ、俺が嬉しそうに見えるか?」
「いや」
「だろ。慰めてくれ」
「どうやって?」
「俺を抱きしめて」
「わかった……ほら」
腕を広げて待ってやる。が、全く来る気配がない。それどころが片手で口元を押さえてフルフルしている。
「どうした?」
「ん?いや。破壊力があり過ぎて鼻血が出そうだ」
「なんだ?何かあったのか?まさか、年上の好みの女でもいたのか?」
キョロキョロ探してみたがいない。もう通り過ぎたのか。
「……もう、いい」
結局、フルフルしていた理由はわからなかった。
「ねえ、付き合う気になった?」
訓練場の外でアルド殿が騒いでいる。
「ならない。それよりも、ここは訓練場なのだが」
「そんな事知ってる。だから何?」
マイペースと言えば聞こえはいいかもしれないが、これはそんなものではないだろう。我が道を行き過ぎる。
「私は断ったはずだが?」
「僕はアピールするって言った」
言っていた。確かに言っていた。だが、今じゃないんじゃないだろうか?
「訓練中は止めてくれないか?私はともかく、周りの気が散るようだ」
「僕がいるだけで?それは不甲斐ないって言う」
そう。確かにそうなのだが。そんな真っ黒いローブ姿で私を口説くような男。気にしない方が無理というものだろう。
「私は貴殿に、気に入られるような事をしたという覚えがないのだが」
「そうだね。僕が勝手に気に入っただけ」
「そうか」
何も言えない。どう言ってもダメな気がする。
「何か困っているようですね」
どうしたものかと思っていると、思わぬ助け船が現れた。
ガエターノ団長から事務所に集まるように言われた。
「学園の男爵令嬢で光魔法を持つ者が現れたそうだ」
「へえ、珍しいですね。後天性ですか」
「そうらしい。しかもなかなかの強さだそうだ。それでその令嬢に護衛を付ける事になった」
これは、とうとう来たらしい。ゲーム開始になるのだろうか。
「アルセニオ、おまえがやれ」
やはりそうなるか。私がひとり頷いていると、盛大な駄々が聞こえた。
「ええええ、ヤダヤダヤダ。俺は訓練していた方が輝く男だぞ。小娘に付き添うなんて嫌だあああ」
まあ、アルセニオは訓練大好きだからな。その時間が削られるのは辛いだろう。
団長がニヤリとした。
「バカだなおまえ。ヴィヴィアーナ殿下の同級生だぞ。朝は別だが帰りは一緒だ。これからその令嬢は城で1年間、教会の人間に光魔法を学ぶことになるんだからな」
途端に晴れやかな表情になるアルセニオ。おいおい。まさか殿下の事を?
「おい、殿下に邪な気持ちを抱いているのか?お前には触れさせないぞ」
晴れやかな表情から一気に泣き顔になったアルセニオ。そんなに悲しいか?
「お前は力の加減を知らないからな。姫様は繊細なんだ。そんなに好きなら今以上に優しく触れる事をまず覚えろ」
親切心で言ったのに、泣いている。ロレット殿と団長は、どうしてなのか、めちゃくっちゃウケている。
「エルダ」
泣きながら私を呼ぶ。
「なんだ?」
「俺は決して少女趣味じゃないぞ」
「そうなのか?」
「ああ、俺はもっと大人の女がいい」
「年上か。それは中々難しいな。」
「ううう」
「泣くな。愚痴くらいいくらでも聞いてやる」
その間、団長が笑い過ぎてひきつけをを起こしていた。だからなんでだ。
翌日から早速、令嬢の護衛が始まった。アルセニオも私と一緒で学園内には入れないらしい。自宅から学園。学園から王城の警護をするという事らしい。
殿下を馬車から降ろして見送っていると、徒歩で二人が現れた。がっちりと腕に絡みついているカプアート嬢と、溜息を何度も吐くアルセニオ。
「ほら、もう着いただろ。さっさと行け」
腕を強引に外し、野良猫を追い払うようにシッシとしている。
「アルセニオ様。お迎え、楽しみにしていますね」
こちらはとてもご満悦そうだ。
「あっという間に懐かれたようだな」
声を掛ければ、どっと疲れたような表情で見返してくる。
「なあ、俺が嬉しそうに見えるか?」
「いや」
「だろ。慰めてくれ」
「どうやって?」
「俺を抱きしめて」
「わかった……ほら」
腕を広げて待ってやる。が、全く来る気配がない。それどころが片手で口元を押さえてフルフルしている。
「どうした?」
「ん?いや。破壊力があり過ぎて鼻血が出そうだ」
「なんだ?何かあったのか?まさか、年上の好みの女でもいたのか?」
キョロキョロ探してみたがいない。もう通り過ぎたのか。
「……もう、いい」
結局、フルフルしていた理由はわからなかった。
「ねえ、付き合う気になった?」
訓練場の外でアルド殿が騒いでいる。
「ならない。それよりも、ここは訓練場なのだが」
「そんな事知ってる。だから何?」
マイペースと言えば聞こえはいいかもしれないが、これはそんなものではないだろう。我が道を行き過ぎる。
「私は断ったはずだが?」
「僕はアピールするって言った」
言っていた。確かに言っていた。だが、今じゃないんじゃないだろうか?
「訓練中は止めてくれないか?私はともかく、周りの気が散るようだ」
「僕がいるだけで?それは不甲斐ないって言う」
そう。確かにそうなのだが。そんな真っ黒いローブ姿で私を口説くような男。気にしない方が無理というものだろう。
「私は貴殿に、気に入られるような事をしたという覚えがないのだが」
「そうだね。僕が勝手に気に入っただけ」
「そうか」
何も言えない。どう言ってもダメな気がする。
「何か困っているようですね」
どうしたものかと思っていると、思わぬ助け船が現れた。
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