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モブ転生
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知っていた乙女ゲームの世界に転生した私。ヒロインでもなければ、悪役令嬢でもない。悪役令嬢である、この国の第三王女の護衛騎士という完全なモブだ。
護衛騎士であり、騎士団の副団長の一人でもある私はエルダ・ウルヴァリーニ。ウルヴァリーニ侯爵家の長女である。母譲りのアイスブルーの髪にシルバーアッシュの瞳は父譲り。背は一般の女性より高い。父は現国王の側近兼、護衛。4つ上の兄は王太子の側近兼、護衛。
私も幼い頃から剣を握り、早い段階で騎士団へ入団した。しかし、どうも私に馴染む剣が見つからず悩んでいた時に、国王様からたまたま手に入ったという刀を頂いた。それを手にした途端、まるで頭の中に泉が湧き出るように、次から次へと知らない記憶が流れ込んできたのだ。
それが私の前世だったのだと理解したのは、刀を使って稽古をしていた時だった。私の前世は、父のやっていた剣術の道場で、師範として人に教えている立場の人間だった。剣術では日本刀を使っていた。おまけに殺陣師としても活動をしていたため、刀を使って戦う事を得意としていたのだ。
手に馴染む刀を持ってからの私は尋常ではない強さを見せた。そして入隊してから、わずか4年で副団長にまでなったのである。それからすぐに、私の噂を聞いた第三王女から、護衛騎士にと任命されたのだった。
この世界がゲームの世界なのだとわかったのが、初めて第三王女に会った時。前世の記憶が戻ってすぐに兄を見た時に、何故だか既視感があった。しかし、どうしてなのかまではわかっていなかった。第三王女に会って既視感の正体がわかった。兄は攻略対象者の一人だったのだ。
ゲームでは、悪役令嬢として登場する第三王女ヴィヴィアーナ・ジェルマーノ殿下は、ゲームの画面越しで見た時よりも可愛らしかった。波打つ金の髪に、海のような青い瞳。肌は陶器のように滑らかで唇はほんのりピンクに色付いている。15歳になったばかりのこの可憐な少女が、悪役として壊れていくのを見たくない。そう強く思ってしまう程可愛かった。
「エイダ・ウルヴァリーニです。この身の全てをかけて、ヴィヴィアーナ殿下を守り抜くと誓います」
騎士の礼を取った私を見た殿下は、ほんのりと頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「エイダ。そうお呼びしてもよろしいでしょうか?」
はにかむヴィヴィアーナ殿下は本当に可愛らしく、他に誰もいなければ、抱きしめてしまいたかった。
「はい、勿論でございます」
「あの、出来れば……せめて人の目のない時はヴィヴィと。そう呼んで欲しいです」
「……はい。では人のいない時は、そう呼ばせて頂きます」
マジ、可愛すぎる。絶対に悪役令嬢になどさせない!そう固く決意した瞬間だった。
ヴィヴィアーナ殿下との関係は良好だった。私は基本、城の中と学園の往復の警護となっている。学園内に入る事は出来ないので、そこは影の出番となっているそうだ。殿下が学園に行っている間は、騎士団の仕事をする事になる。なかなか多忙ではあるが、休みもちゃんとあるし充実していた。
ただ、一つだけ気になったのは、ヴィヴィアーナ殿下にはまだ婚約者がいない事だった。ゲームでは、学園に入る前には宰相殿の次男である、ミケーレ・ラウレリーニ様が婚約者となっていた。殿下はヒロインが、彼のルートに入ると登場する悪役令嬢だったのだ。
「父様、ヴィヴィアーナ殿下には婚約者はいらっしゃらないのですか?」
偶々、城内で会った父に聞いてみたが、答えはノーだった。
「第一王女殿下も第二王女殿下も、それぞれの隣国へと嫁いでいったからな。ヴィヴィアーナ殿下は特にそういう話はない。勿論、打診はたくさんあるが陛下の所で止めている」
つまりは好きにしていい、そういう事なのだろう。
「似て非なるもの、という事か」
ゲームの世界に酷似してはいるが、ゲームそのものの世界ではない、という事だ。
それならそれで思う存分、ヴィヴィアーナ殿下を愛でていよう。
護衛騎士であり、騎士団の副団長の一人でもある私はエルダ・ウルヴァリーニ。ウルヴァリーニ侯爵家の長女である。母譲りのアイスブルーの髪にシルバーアッシュの瞳は父譲り。背は一般の女性より高い。父は現国王の側近兼、護衛。4つ上の兄は王太子の側近兼、護衛。
私も幼い頃から剣を握り、早い段階で騎士団へ入団した。しかし、どうも私に馴染む剣が見つからず悩んでいた時に、国王様からたまたま手に入ったという刀を頂いた。それを手にした途端、まるで頭の中に泉が湧き出るように、次から次へと知らない記憶が流れ込んできたのだ。
それが私の前世だったのだと理解したのは、刀を使って稽古をしていた時だった。私の前世は、父のやっていた剣術の道場で、師範として人に教えている立場の人間だった。剣術では日本刀を使っていた。おまけに殺陣師としても活動をしていたため、刀を使って戦う事を得意としていたのだ。
手に馴染む刀を持ってからの私は尋常ではない強さを見せた。そして入隊してから、わずか4年で副団長にまでなったのである。それからすぐに、私の噂を聞いた第三王女から、護衛騎士にと任命されたのだった。
この世界がゲームの世界なのだとわかったのが、初めて第三王女に会った時。前世の記憶が戻ってすぐに兄を見た時に、何故だか既視感があった。しかし、どうしてなのかまではわかっていなかった。第三王女に会って既視感の正体がわかった。兄は攻略対象者の一人だったのだ。
ゲームでは、悪役令嬢として登場する第三王女ヴィヴィアーナ・ジェルマーノ殿下は、ゲームの画面越しで見た時よりも可愛らしかった。波打つ金の髪に、海のような青い瞳。肌は陶器のように滑らかで唇はほんのりピンクに色付いている。15歳になったばかりのこの可憐な少女が、悪役として壊れていくのを見たくない。そう強く思ってしまう程可愛かった。
「エイダ・ウルヴァリーニです。この身の全てをかけて、ヴィヴィアーナ殿下を守り抜くと誓います」
騎士の礼を取った私を見た殿下は、ほんのりと頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「エイダ。そうお呼びしてもよろしいでしょうか?」
はにかむヴィヴィアーナ殿下は本当に可愛らしく、他に誰もいなければ、抱きしめてしまいたかった。
「はい、勿論でございます」
「あの、出来れば……せめて人の目のない時はヴィヴィと。そう呼んで欲しいです」
「……はい。では人のいない時は、そう呼ばせて頂きます」
マジ、可愛すぎる。絶対に悪役令嬢になどさせない!そう固く決意した瞬間だった。
ヴィヴィアーナ殿下との関係は良好だった。私は基本、城の中と学園の往復の警護となっている。学園内に入る事は出来ないので、そこは影の出番となっているそうだ。殿下が学園に行っている間は、騎士団の仕事をする事になる。なかなか多忙ではあるが、休みもちゃんとあるし充実していた。
ただ、一つだけ気になったのは、ヴィヴィアーナ殿下にはまだ婚約者がいない事だった。ゲームでは、学園に入る前には宰相殿の次男である、ミケーレ・ラウレリーニ様が婚約者となっていた。殿下はヒロインが、彼のルートに入ると登場する悪役令嬢だったのだ。
「父様、ヴィヴィアーナ殿下には婚約者はいらっしゃらないのですか?」
偶々、城内で会った父に聞いてみたが、答えはノーだった。
「第一王女殿下も第二王女殿下も、それぞれの隣国へと嫁いでいったからな。ヴィヴィアーナ殿下は特にそういう話はない。勿論、打診はたくさんあるが陛下の所で止めている」
つまりは好きにしていい、そういう事なのだろう。
「似て非なるもの、という事か」
ゲームの世界に酷似してはいるが、ゲームそのものの世界ではない、という事だ。
それならそれで思う存分、ヴィヴィアーナ殿下を愛でていよう。
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