1 / 1
色無病
しおりを挟むプロローグ
あなたはもし、色が見えない。そんなことになってしまったらどうするだろうか。
色が見えなければ信号はわからない。好きな色だって選べはしない。
この物語はそんな病気になってしまった一人の少年のお話だ。
第一章 俺が見る世界
俺は幼い頃から色が見えず、常日頃からまるで目が無いかのような感覚に襲われていた。
幼稚園に通っていた頃、みんなが好きな色のクレヨンの話をしていた。
でも俺は、色が見えないため、一人だけ会話に混ざれなかった。
その時、幼稚園の先生が言った。
「好きな色を選んで好きなように塗ってみよう。」と。
この世界をとても窮屈に感じた。俺だけが見えるこの世界を俺は恨んだ。
病院にはもちろん行ったが、この病を治せる医者は今のところいないと言う。原因不明の難病。「そりゃそうだろう。」そう思うしかなかった。
ちなみに、この病気は世界中で俺が初めてだったらしい。
色が見えないというのは、目が見えない感覚とさほど変わりはしないだろう。
強いて言うなら、目が見えない人間と色が見えない俺とでは、社会からの対応はかなり変わっている。なぜなら俺は「治療する為」ということを口実にした、この病の実験体として通院させられているからだ。
「ふあぁ…おはよう。今日もいい天気だな。」なんて一度でも言ってみたいものだ。
「はあ、学校行くか。」そう言い、重い体を操り人形を動かすかのようにベッドから起き上がった。
そして、ふと自分の手を見る。
「俺の手ってどんな色なんだろうな…。」そんなことを呆然としながら考えていると、突然ガチャっとドアが開いた。
「なつ兄、学校行かないの?」妹の〈中村 夏海〉だった。
「あぁ、行くよ。」
妹は小学六年生だ。
「私、先行くから。」そう言い、またガチャっと音を立て扉が閉まった。
そうだ。自己紹介が遅れたが、俺の名前は〈中村 色〉中学三年生だ。俺はよく、こんなことを考える。
〝みんなにはどんな景色が見えているのだろうか。〟
そんな思考がただ長く、ずっと長く長く続く毎日なのだ。
ひとまずベッドから立ち上がり、クローゼットの中から制服を取り出す。俺は、少ししわができた制服を見ながら俯き、こう呟いた。
「なあ、俺。お前は色が見えない世界で何を見てるんだ?」
気付くと大粒の涙が溢れていた。
「あ…?なんだよこれ。」
自分の手に淡々と落ちる雫の感覚に俺は内心驚いていた。
はっとして時計を見ると、時計の針は八時を過ぎていた。
「やべ、こんな時間だ。」
俺は服の袖で涙を拭い、家を出た。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる