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第2章 教会の子供たち

第21話

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ユァンは彼の胸板に額を押しつけるようにして首を横に振る。

「バルトはちゃんと助けに来てくれたよ」

2階から登場し、水をまいて飛び降りるなんて、ユァンには予想もできなかったけれど。

「いや、助けが遅すぎただろ。俺はあの時、あそこを飛び出していったリッカを先に追ったから」

(そうだったんだ……)

その判断はきっと正しかったんだと思う。
リッカは子供でユァンは大人だ。
特別な関係だからといってユァンを優先するなら、それはおかしい。
でも……。

やっぱり、もう少し早く来てほしかったと思ってしまう。
神父に犯されるかと思ったあの時の恐怖は、ユァンの中から簡単に消えそうになかった。

「もともと僕が、自分から行くって言いだしたんだ。だから、バルトのせいじゃない。リッカや他の子が嫌な目に遭うよりよかったよ。僕なんてもともと、誰かに守られるような存在じゃないし……」

(あ……)

ふいに涙が込み上げてきて、バルトロメオの胸から顔を上げられなくなってしまった。

「何言っているんだ、ユァンは」
「……っ、なんでもない、ごめん」

ユァンの心の奥にしまっていた卑屈さは、日向を歩いてきたバルトロメオのような人には理解できないだろう。

(こういうのはよくない、バルトに余計な心配をさせる……)

動揺する自分を立て直そうとしていると、バルトロメオがこんなタイミングで一番聞かれたくないことを聞いてくる。

「アンタ……あいつに何されたんだ。何もなかったって言ってたのは嘘だろう。そうじゃなければ、そんなふうに泣くのはおかしい」

泣き顔は見せていないはずなのに、法王庁のエリートは察しがよすぎて困る。

「何もされてない……服の上から触られただけ……」

冷静になってみればそれだけだ。
本当に、それだけなのに……。
大事なものを失ってしまったみたいで、ユァンはひどく困惑し、気落ちもしていた。

「触られた? どこを」

バルトロメオが無慈悲に聞いてくる。

「それは、聞かないで」
「分かった、聞かない。その代わり、俺が全部上書きする」
「え……?」

彼の右手が、ユァンの顎を持ち上げた。
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