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第2章 教会の子供たち

第10話

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「バルトがそこまで言うなら、そのパーティ、僕がのぞきに行ってくるよ」
「覗く?」

バルトロメオが眉間にしわを寄せた。

「養護院の制服は持ってるし、仮装パーティなら案外潜り込めるかも?」

今までの臆病なユァンなら、こんなことは考えもしなかったと思う。
けれどどうしてだろう。バルトロメオと一緒に過ごした時間が、以前よりユァンを大胆にしていた。

ベッドの下の衣装ケースから膝丈のズボンを出してみせると、バルトロメオの目が点になる。

「ちょっと待て! それを着る気なのか」
「入るよ。昔より身長は伸びたけど、腰回りはそんなに変わってないから」
「そういうことじゃなくてだな……っておい、ユァン!?」

2人部屋のスペースを区切るカーテンを引いて着替えていくと、バルトロメオが片手で顔を覆った。

「……なに? そんなに変?」
「逆だ逆! はあ、やっぱり目の毒だな……予想はしていたが」

顔を覆う手のひらの向こうで、バルトロメオが深いため息をつく。

養護院の制服は白いカッターシャツにベージュのりズボン。
本来15歳までの少年が着るものだから、ズボン丈が短いのはご愛嬌あいきょうだ。
あとは季節に合わせ、これにセーターやブレザーを重ねる。

「この服のどこが気になるの?」

バルトロメオの座るベッドの縁まで近づいていってみると、彼の手がユァンの太腿ふとももを滑り下り、ひざの裏側をでてきた。

「服っていうかアンタだ。こんなきれいな脚見せて歩いたら、周りが変な気を起こすだろ……」
「脚……? 好きなの?」
「そうじゃないけどさ……」
「じゃあ、子供っぽい格好が好き?」
「それは断じて違う」

ユァンのひざ頭から視線を上げ、バルトロメオが怒ったような顔をしてみせた。
座っている彼とほぼ同じ高さで目線が合い、ユァンはドキリとしてしまう。

「好きになった相手がこんなに子供だと、さすがに不安になるんだよ。自分が間違いを起こしてるんじゃないかって疑いたくなる……」

言いながら腰を引き寄せられ、彼のひざにまたががる形で乗せられた。

「わっ」

ユァンは慌ててバルトロメオの肩につかまる。
その拍子に、顎が彼の肩口に乗った。
背中と首の後ろへ回ってきた腕に、ぎゅっと深く抱きしめられる。

「え、と……バルト?」

耳の後ろで彼がため息をついた。

「少しこのまま、俺の視界から外れてろ」

(そのためにこれ?)

幼児だった頃なら親に抱きしめられた気もするが、誰かにこうされるのは慣れていなくて戸惑う。
彼の体温に包まれて、触れ合う胸の鼓動が速かった。
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