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第2章 教会の子供たち

第6話

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思う存分びわの葉を食べたユキと、彼女の子山羊たちを連れ、牧草地に到着した。

春風に揺れる若草の草原の向こうに、バルトロメオの広い背中を見つける。
長い木の枝で山羊を追う姿は、まるで聖書の時代の山羊飼いみたいだ。
あの人が自分を愛してくれているのかと思うと、ユァンは心が震える。
しかし彼は法王庁からの客人で、匿名の投書に基づきこの修道院を調べている。
この先の未来を思うと、突然の突風にあおられる若草のようにユァンの心は乱れた。
百五十年続いたこの修道院の平和は破られ、自分はそこに置き去りにされるに違いない。
それなのに……。
彼の後ろ姿は抗いがたく魅力的で、追わずにはいられない気がした。

「バルト……!」

小走りに駆けていくと、振り向いた彼に唐突に抱きしめられた。

「あ……」

体が触れ合うのと同時に、唇まで奪われる。
生暖かい舌が侵入してきてびっくりしたけれど、顎をつかまれていて逃げられなかった。
ユァンの口内を、バルトロメオの舌先が蹂躙じゅうりんしていく。

「ユァン」

名前を呼ばれ、また舌を差し込まれる。

「遅かったから待ちかねた」

立ってはいられずに彼の胸にしがみつくと、そのままゆっくりと草の上へ倒された。
まだ彼の舌は口の中にあって、ユァンの歯を1本1本丁寧に舌先で撫でている。

「なにっ……これ……はあっ……」

口の脇から耳の方へ、唾液が伝っていった。

「キス、知らないのか?」

口からこぼれた唾液をめ取って、バルトロメオが笑った。

「キスは聖書で禁じられていない」
「だからって……ふうっ」

今度は舌先を吸い出される。

「ユァンの舌は花びらみたいに薄いんだな」
「バルトのは……蛇みたいに長い」
「そんなことはないと思うが……アンタの口の中、存分にかわいがれるくらいの長さはあるかもな」

頬の内側を、彼の舌がくすぐるように押し広げた。

「んっ……でも、こんなの……」

慣れない刺激にどうしていいか分からなくなって、覆い被さっているバルトロメオの胸を押し返す。
下半身までうずいてしまって恥ずかしい。

「アンタ、後ろは案外平気だったのに、口の中は弱いのか」

わずかに濡れた瞳で見下ろして、バルトロメオが笑った。
そんな目で見つめられたら理性が飛んでしまう。
ユァンは口の中にたままった唾液を飲み干した。
彼の匂いが自分の鼻を抜けていく。

「またしよう、ユァンが嫌じゃなければ」

なんて誘いだろう。

「嫌じゃない、けど……心の準備が必要そう」

照れ笑いで言うと、言っているそばからまたキスをされた。

「好きだよユァン」
「僕も……好き」

泣きたくなるほどの幸せが、胸の奥からせり上がってきた。
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