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終わりと出会い

すやすやグレス

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シオンは自分が街に拘束されてしまう事を承知で、魔物の蹂躙の知らせをしたのだ。自分の自由より大勢の命を助けるため、その可能性に気付いてしまったら気づいてない振りは出来ない。命を救う薬師として、魔物と戦う冒険者としてなにより、もしも街を見捨て逃げたらグレスになんて言ったら良いのか分からない。それにまだ魔物の蹂躙が起こるとは限らない。ラドはその覚悟をシオンから感じた、命の恩人であるシオンが死んでしまうかもしれないなついているグレスはどうするのだとラドは怒りを覚える。

「どうして何も知らない街の為に縛られたんだ!逃げればいいじゃないか!グレスを頼むってなんだよ。助けたのはシオンだろ!?」
「えぇグレスを助けてここまで連れてきたのは私よ。だからこそ、グレスの安全を確保する必要があるの」
「まだ会ったばかりの俺にグレスを任せるな!もし俺が悪人だったらどうするんだ!?」
「数日しか過ごしてないけどラドが子供を傷つけないことぐらい分かるわよ」

ラドはシオンに怒鳴るが、シオンは笑ったままラドの言葉を受け流していく。自分の命を軽く考えているようなそぶりにグレスは怒りを積もらせるが、シオンは笑いながら

「確かにこの街のことあまり知らないわ。でも、見ず知らずのラドを助けたように知らない街でも助けるのよ」
「っ・・・・」

シオンに助けられたラドは何も言えなくなってしまう。街を助けることを否定するのは自分を助けたことを否定するのと同じであり、シオンの意思の硬さを感じ言葉に詰まってしまったが目を伏せながら文句を言う

「狡くないか?そのことを出すのは・・・」
「ごめんなさいね。でも、魔物の蹂躙が起きると決まったわけじゃないし早目に対処すれば何とかなるわよ」
「グレスはシオンと一緒に居たいと思うぞ」
「そうかしら・・・グレスはどう思う?」

シオンとラドはグレスの方を見ると、グレスはソファーにもたれながらすやすやと寝ていた。顔や態度では分からなかったが、一日中走ったことと旅の疲れが溜まっていたのだろう2人が知らな内に、グレスは寝てしまっていた。

「あら、静かだと思ってたけど寝てしまってたのね」
「一日中走ってれば疲れるだろうからな」
「平気そうに見えたけど、やっぱり疲れてたのね。表情に出ないからより一層気を付けなきゃ・・・」

熟睡しているグレスを見て2人のピリピリとした雰囲気が和らぎラドの顔にも笑顔が浮かんだ。グレスは普段から自分から喋ることはあまりない。しかも表情にも表れないため疲れているのか痛いのか、お腹が空いているのかなどの感情を読み取ることが難しいため気を付ける必要があると改めて思い、シオンは寝ているグレスの頭を撫でた。

「今は、魔物の蹂躙が起こらない可能性や違う可能性を信じましょ」
「そうだな・・・」

可能性をいくら考えても、調査をするまで確証を得ることは出来ない。たらればの話より確かに未来を掴むために行動することが必要だと2人は頷き優しい顔でグレスを見る。

「それにしても・・・グレスの寝顔をしっかりと見るのは初めてだが整った顔をしているよな」
「そうね。白い髪は痛んでいないし、肌は健康的に焼けてるし顔のパーツも整ってるわよね」
「綺麗って感じよりカッコイイって感じだな」
「瞳の色も素敵よね。まだ、少年って顔つきだけど成長したら男らしく育つと思うわよ」
「確かに、無表情だけどいつかは笑った顔が見たいな」
「そうね」

事実グレスの容姿は整っているが、自分の子どもを可愛がるようにべた褒めしていることを眠りの世界に入っているグレスは知ることは無かった。
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