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皇国復活編

俺、本を読んで貰うよ!

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 バトラの案内でウォルの部屋に入ったけど、広~い!俺が自由に飛んでも大丈夫なほど部屋は大きいし天井も高い。部屋の隅には大きなベットが置いてあって寝心地が良さそう。

「広~い!」
「気に入ってくれたようで良かった。あまり面白い物は無いが、寛いでくれ」

 ウォルはそう言うと、荷物を地面に置きストールを取るとテーブルの上に置いた。ウォルの部屋には真ん中に柔らかそうなソファーが二つ角に大きな机と椅子、その隣に色々な本が飾ってある。それ以外は剣が置いてある棚が有ったり、防具が置いてあったりとなんだかウォルらしいよね!
 俺は人の姿から竜の姿に変わり隅々までウォルの部屋を飛び回り見て終わったので部屋の真ん中にあるソファーで寛いでいるウォルの元へ戻った。

「もう見るのは終わりか?」
「うん!」
「面白い物は無かっただろう?リューエン兄上の部屋なら色々あるんだが・・・・」
「ううん、人の部屋に入ったことって無いから新鮮だよ!」
「そうか、それは良かった」
「それで、お願いがあるんだけど本読んでみても良い?」
「ん?そんな事か、クーアにとって面白い本があるか分からないが好きに読んで良いぞ」
「わ~い、ありがとう!」
 
 やった!俺本を読むのが好きなんだけど、村に居た時は本なんてほんの少ししかなかったし村を出てから本を読む機会なんて無かったから嬉しいな。ウォルの本棚には、武器の指南書や計算書、エルヴィラス皇国の歴史書とか色々難しい本が並んでいて興味はあるけど今は見る気分じゃないな~。
 上から順番に見て行って、一冊だけ他の本に比べてくたびれている本が有ったのでタイトルを見てみると、「エルディラン様と雨の恵み」という本だった。本の表紙にはエルディランだと思う黄色い竜と竜を崇めている人の絵が描かれていた。

 これだけ、他の本と全然違うな~面白そう!・・・・あれ?そう言えば、ウォルって絵本に憧れて水属性を欲しがってたんだよね。もしかして、この本の事かな?

「ウォル~この本って!」

 ウォルは横になりながら、目を俺に向け見開くと少し照れながら

「クーアの言う通り、俺が憧れた本だ」
「おお~これがそうなのか!有名な本なの?」
「あぁ国民の殆どが知ってる物語だ」
「この本他の本より年季入っているね」
「この本は小さい頃に母上に買ってもらったんだったが、気に入って何処にでも持って行ってたんだ。それで、こんなにボロボロなんだ」
「そうなんだ~」

 お母さんからの贈り物なんだね!俺も気に入ったものは何時でも何処でも持って行きたいし、その時のウォルの気持ち分かるよ。ウォルはこんな風になるまで何度も読んでたのなら、内容も全部覚えてるのかな?そうだったら

「ねぇウォル」
「なんだ?」
「これ読んで!」

 自分で静かに読むのも好きだけど俺、人に読んで貰ったことが無いからウォルに読んでみて欲しいんだよね。

「俺がか?俺はそんなに上手くないんだが・・・・読み聞かせならシャールクの方が上手だぞ」
「ウォルに読んで欲しいの!」
「分かった・・・・その期待に応えよう」

 ウォルは胡坐をかいてソファーに座ると、俺を足の上に載せ絵本を開き読み始めた。ウォルの声は低く落ち着いていて、聞いていると安心する声なんだよね。

「昔々この世界が争いに飲まれた時代、私たちの先祖は戦いから逃れるために守護竜エルディランと共にこの大地に移り住みました。ですが、この大地は死の大地で動物も植物も居らず人々が生活するには厳しい土地でした」

 うんうん、そのお話はみんなから聞いたよ!オーディスがエルディランの心を変えたんだよね。

「人々は環境に負けず日々土を耕し、動物が居ないかと遠くまで探しに行きましたが、その努力は報われず日に日に弱っていく人々、それを見かねたエルディランは人々の為に、遠くから動物を運びその大いなる力で大地を豊かにしました」

 そういえば、今までウォル達にお話を聞かせてもらったけど一つ全く分かって無いことが有るんだよね。それは、どうしてこの大地が死の大地なのか。汚染された魔力がこの大地を通って死の大地と化したなら分かるけど、それより遥か前から死の大地だったみたいだし、死の大地になった原因は何なんだろう?
 俺は何度も大地の記憶を読み取ってるけど、読み取っているのはエルディランが大地を豊かにした時の記憶だ。だから、それ以上前まで遡ったことが無い。今度大地を再生させる時はもっと前まで見てみようかな。

「人々はそれを喜び、それを大事に大事に育てその大地に生きる者達の糧となっていきました。これで、もう食べ物に困らなくて大丈夫だよ人々は安心しました。だけど、これからが大忙しです。この大地には人が生活するために必要な物は何もありません。だから一から全部自分達で作らないといけないのです」
「うえ~大変だね」
「あぁ、俺達が今こうやって生活出来ているのは先祖のおかげなんだ。この城だって遥か昔に建てられたんだぞ。そして、この都市もな」
「そうなんだ!」

 エルディランの力が残っているからエルディランが居た頃に城が建てられたのは分かってたけど、この皇都もその時に作られたんだね。

「人々はせっせと家や井戸、鍛冶屋そして道具を作っていきます。生活は豊かになっていき、お礼としてエルディランに大きなお城を作りました」
「それがこのお城なんだね!」
「そうだ」
「エルディランは喜んで城に住み、優しく人々の生活を見守ります。この大地での生活は、快適ではありませんでしたが前の暮らしと比べれば楽園です。日々魔物に襲われますが、人々はその魔物を退治しその素材を日々の生活へ役立てていきました。順調に進んでいると皆が思っていましたが、ある災害が人々を襲いました」
「なにがあったの?」
「ある時期からいきなり雨が一切降らなくなってしまったのです。元々雨が降りづらい場所であったためエルディランによって水路は引かれていましたが、全ての町を補える程ではありません。水は全ての生き物が生活するために必要な物。雨が数か月降らず水が足りなくなった植物は枯れ、折角豊かになった大地は荒れてしまいました」
「大変だっ!」
「水が無くなり人々が苦しんでいるのを見たエルディランは、竜の姿になると天高く飛び上がりました。そして、雲をかき集め始めたのです。エルディランが通った場所には、雲が生まれ集まりどんどん大きくなりやがて国全体を覆う程の大きさにななりました。その中心でエルディランが光り輝くとなんと雨が降り始めたのです。雨は国全体に降り注ぎ、枯れた大地はみるみる内に治り枯れてしまった植物も元気を取り戻していきます」
「エルディラン凄~い!」
「人々は降り注ぐ雨に大喜び。みんな外に出て全身に雨を浴び歌いエルディランに感謝の言葉を送ります。その様子を見たエルディランは、笑いながら一緒に歌い宴は一日中続きました。エルディランのおかげで危機を乗り越えた人々は、また同じことが有っても大丈夫なように水が少なくても育つ植物を作り始めました。そのおかげで、雨が降らない時期を乗り越えられるようになりました。ですが、時折エルディランは皆が喜ぶ姿が見たいと雨を降らせるのでした。その雨は恵みの雨と呼ばれ、その雨が降るたび人々は宴を開くのでした。終わり」
「面白かった~!」
「楽しんでもらえたようで何よりだ」

 エルディランは大地と水の竜だけど、大地の属性の方が強いはず。国を覆う程の雨雲を作るなんて、凄いな~。ウォルはこの魔法に憧れてたんだよね。今なら俺と一緒になら国に全体に雨を降らせられると思うけど、それは違うよね。もっと魔法が上手くなれば町に雨を降らせることぐらいは出来るようになると思うから頑張って!
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