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残りの依頼を終わらせよう

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 イビルフライが倒され統率力を失った配下達をブレストが全て消し去るのを結界の中で暫く待っているとブレストが最後の仕上げに炎のダガーを幾つか作り出した。

「行ってこい」

 その言葉と同時に森の中へと飛んでいく炎のダガー

「ブレストが操ってるのに行ってこいってどういう事?」
「あれは特定の魔物だけを勝手に追いかけて仕留めるように作った魔法剣だから俺は操ってないんだ」
「・・・・意識も操作もしていないのに勝手に獲物を追いかけるのか?」
「おう」
「何その魔法気持ち悪っ」
「気持ち悪ってなんだよ」

 そんな魔法を使うなら複雑な工程が必要になるはずなのにそんな簡単に作って使うとかドン引きを通り越して気持ち悪いの領域だな。

「クロガネだって相手を追いかける魔法を使うだろ」
「あれは相手を認識して俺が操ってるから追うのであって、魔法だけで勝手に追いかける魔法じゃないだろ。それに相手を追いかける魔法って普通は標的を予め指定して使う魔法だろ?だけどブレストのは数も個も指定してないから気持ち悪い!」
「酷い言いようだな」

 相手を追いかける魔法はよくある魔法だけどあれは予め標的と場所を認識して使う魔法で、ブレストが使った魔法は標的は決まっているけど何処に居るのかや数も決めていないのに勝手に動き倒してくれる魔法だ。この違いは凄く大きいと思うぞ。

「ブレストが強いってことは分かってたけどこうやって改めて戦っている所を見ると、なんか別次元って感じするよな~」
「別次元って?」
「さっきの悪食の王の触手を全て切り刻む手数とそれを制御する技量とか大量のゴースト達を一撃で全て倒しちまう魔法。それにイビルフライと配下の攻撃をものともしない結界に燃え広がる火魔法、更には敵を自動で追いかける魔法とか色々!」

 イビルフライをあっさり倒して見せたけど普通はあんな簡単にはいかないんだからな!

「イビルフライは無数の配下による攻撃が厄介なだけで本体は二級でも弱い方だぞ」
「その攻撃を無効化できるのが可笑しいんだよ!」

 イビルフライの無数の配下達はイビルフライにより強化の魔法を掛けられている為一体一体が岩を削るほどの威力を持っていて、羽は高速で動かし斬撃を発生させ、攻撃をした相手の肉を食らう。それが無数の群れを成して襲い掛かるので威力は絶大だ。更に厄介なのは配下によって噛まれてしまうとそいつらが持つ多くの疫病に掛かってしまうことだ。小さな蝿であるため鎧の隙間や服の隙間から侵入されてしまい、完全に防御するのは難しく対処法としては結界を纏い防ぐことが一番だけど配下の攻撃に耐えられる結界なんてそうそう作れない。結界を作れたとしても無数の配下達に矢や剣などでは効果が薄いので高火力かつ広範囲の魔法が必要になる。こんなにも条件が厳しいのに一人で全て解決するなんてどうなってるんだよ。

「そうか~?」
「イビルフライ相手も可笑しいけど、悪食の王は魔法を吸収するはずだろ!?何で斬れるんだよ!」
「悪食の王は一度に吸収できる魔力の上限があるんだよ。だからそれを上回る魔力を籠めれば吸収されないんだ」
「いや、簡単そうに言ってるけど大魔法すら吸収するんだぞ?それを上回る量って・・・・可笑しいだろ」

 いつもの魔法剣に見えたけどあれって馬鹿みたいな魔力が籠められてたのか・・・・ブレストの魔法剣は気配が薄すぎて分からないんだよ!

「ゴースト達には詠唱もしたし・・・・」
「一撃で倒すのが可笑しいんだよ」

 ブレストがシュナイザー様と模擬戦をした後、あの光り輝く魔法剣では無く実体化した剣達は何なのかと聞いた時あれは真面目に戦う時に使う魔法であり、そしてあの薄い剣は刀と言い一番得意な武器だと教えて貰った。今回もその魔法と刀を使ってるってことは真面目にやったんだろうけど、いくら真面目にやったって一撃で倒すのは可笑しいからな。

「え~・・・・これくらい出来る奴は他にも居るぞ」
「さも沢山居るかのような言い方止めろ。はぁ、俺ブレストに追いつけるかな~・・・・」

 ブレストに追いつくって決めてはいるけどこうも実力差を見せつけられると少し落ち込むな。

「クロガネはクロガネの強さを磨き上げれば良いんだよ。なにも俺みたいにならなくても良いんだ」
「そうだよな~でも今のまま成長しても二体でも勝てる想像は出来ないし」

 悪食の王は魔力量の問題で触手を捌けないし、倒せたとしても光属性を持っていない俺ではゴースト達の相手を出来ない。イビルフライは本体まで近付ければ倒せるだろうけど、急所への一撃と相手の隙に付け入る俺の戦法と今使える魔法では配下達をどうやっても処理しきれない。

「別に勝てるようならなくたって良いんだよ。上位の人間も何かに特化している奴が多いから得意不得意がはっきりしてるんだ。知ってる奴だと剣術だけに特化して魔法がてんで駄目な奴とかも居るからな」
「そんなもんか~」
「そんなもんだ。俺は万能よりだが特化した強さってのも良いものだぞ」

 特化した強さか~俺は不意打ちや気配を消した攻撃に特化しているけど、ブレストみたいに何でも出来るってのは少し憧れるんだよな。

「その人にはその人の強みがある。それはクロガネがテセウ様に教えたことだろ?」
「そうだな」

 一気に何でも出来るようになろうってのは流石に欲張り過ぎだよな。まずは自分の強みを最大限まで伸ばせば不得意な状況にもある程度対応出来るようになるだろうし、まずはどんな強さでも良いからブレストの横に並べるようになるのが先決だ。

「よし、そうと決まったらさっさと特訓するとしますか。ブレスト、もう結界の外に出ても良い?」
「少し待ってくれ・・・・よしあのダガーが消えたな。もう出てきて良いぞ」
「ダガーが消えた?つまりこの周辺の配下の蝿達は全て討伐したってことか?」
「そういうこと」

 あんな小さなやつらをよく殲滅出来るもんだな。ブレストの魔法の優秀さに感心しながらも、俺は依頼を受けた魔物の気配を集中して探るのだった。

「う~ん、後の二体は俺の感知範囲には居ないみたいだな~」
「そう珍しい魔物って訳じゃ無いがこの広い森だからな。適当に魔物でも狩りながら探すか?」
「クラッシャーギガントを相手するなら魔力の消費は抑えたいからヤダ」
「ジャイアントキリングベアは別に良いのか?」
「あいつの肉なら何とか斬れると思うから大丈夫」

 三級の魔物を相手するなら万全を期したいから他の魔物に喧嘩を売るのは無し。狩れば狩るほど金になるだろうけど、道とは違って色々な魔物が襲い掛かってくるから刺激しない方が良いだろう。

「んじゃ移動しますかね」
「そうだな~」

 悪食の王と違ってイビルフライは高値で売れるものが魔石しか無く、体は触れただけで疫病を齎すのに防具や武器として使うには脆すぎると本当に使い道も利点も無い魔物なのでさっさと次の依頼をこなすために移動することにした。そもそも全てブレストが燃やしちまったしな。

「ジャイアントキリングベアなら血の匂いを追えばいつかは遭いそうだけど、クラッシャーギガントは何処に居るかな~」
「あいつは大体水場の近くに居るぞ」
「水場か~・・・・」

 二体とも痕跡を見つけやすい部類の魔物なんだけど広大で常に変わり続ける森の中となると話は別なんだよな。俺は図鑑とブレストが教えてくれた知識を使いながら森の中を駆け二種類の魔物を探すのだった。 
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