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最後のお泊り

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 館に戻るとシュナイザー様は既に双子を部屋に運び終わり執務室で俺達の帰りを仕事をしながら待っていた。

「早かったな」
「後は一属性だけだったので。完成品はそのまま倉庫に置きっぱなしですけど大丈夫ですか?」
「あぁ、テセウが鍵を掛けたなら問題ない」
「掛けました」
「それなら良し。それでは、早速支払いと納品書の確認をしよう」

 そう言うとシュナイザー様は執務机の中から二枚の書類と、近くに置いてあった大きな金庫から金属の音がする大きな袋を取り出し机の上に置いた。

「納品書は本来クロガネ殿に書いて貰う物なんだが今回は急であり初めての納品と言うことでこちらで用意させてもらった。何か不足している物は無いか確認して欲しい」

 そう言って渡された一枚の書類を見ると、そこには今日の日付と俺が作り出した各属性の投げナイフの本数と一本の単価。そして、各属性ごとの値段とその合計金額が書かれていた。本数にも属性の数も間違っていないし、納品先の名前も間違っていないけど・・・・

「なんすか、この金額」
「ん?少なかったか?それならば・・・・」
「逆です!高すぎます!!!」

 おいおい、何だよこの金額はよ!元々は何の変哲もない鉄にそこらで良く取れる低級の魔石だぞ!?魔物の素材を使ってると言っても捨てるような余りの端材だし、原価の倍以上の金額が付くのは可笑しいだろ!

「何を言っているんだ。あの効果と手軽さを考えればこれぐらいが普通だろ」
「いやいや、魔石は銅貨3枚程度の物しか使ってませんし他もそんな高価じゃない物を使ってるんですよ!?」
「サピロと相談した結果これぐらいが相当する金額だと考えたが、もっと欲しければ出すぞ」
「いえ、まだ完成品と言えるような品物じゃ無いので・・・・いや、現段階だと俺が出来る最高品ですけどね!」

 まだ試作段階でもっと強くなる可能性を秘めているし、俺が使えるように考えた武器だからこんな高値が付くのはなんか申し訳ないというかもっと安くても大丈夫と言うか。

「魔力さえ籠めてしまえばある程度の魔法を自由に使え高威力、しかもその発動条件が投げて当てるだけでどんな人間にも使えるような品物は貴重だ。もし売る際はこれぐらいは取った方が良いと思うぞ」
「え~・・・・」
「貰えるもんは貰っとけ」
「そうだぞクロガネ。作った物は正当な値段で売らないと駄目だ」

 こんな大金なのにシュナイザー様は全く惜しむ事無く出してくれ、ブレストも納品書を見て不当では無いと判断したので俺はちょっと恐れ多いが受け取ることにしよう。

「それでは不備が無いと言うことで、ここにサインをしてくれ」

 指を差された場所に俺の名前を書くとそれを確認するシュナイザー様とサピロさん。頷くともう一つの書類と重量のある袋を俺に手渡した。

「これが受領書だ。そして、これが代金だな。確認してくれ」
「分かりました」

 中を覗いてみると金棒と金貨が沢山入っていて、初めての光景に目を回しながら金額を確かめてみると金棒が35本に金貨が100枚も入っていて手が震えそうになったぜ。

「それと、こっちは即納の追加料金だな」
「まだあるんすか!?」
「そりゃ急いで作って貰ったんだから追加料金があるに決まってるだろ?」

 何を当たり前のことを言ってるんだって顔してるけど、さっきのだけでもう好き放題遊べるほどの額なのにこれ以上はちょっともらい過ぎじゃ無いか?てか、館の中にそんな大金用意してたのかよ!!

「うわぁ・・・・こんな金見たことねーよ」
「クロガネ、口調崩れてるぞ」
「あ、すみません」

 追加で渡された袋の中を見て思わず本音が漏れてしまったのを引き締めるが、こんな大金持ってたくないって!!!

「ブレスト、預かってて」
「いや、クロガネが仕事して貰った金なんだからクロガネが持っておくべきだろ」
「こんな大金を持ってるの怖い!!!」
「お、おう・・・・分かった。分けて持っておくよ」

 俺の剣幕に負けてブレストが預かってくれて一安心だぜ・・・・小さな頃から金は盗んですぐ使ってたから貯めるなんてことは出来なかったし、あったとしても薬用の金や飯を食わせてくれている店に支払う用の金だったから自分の金と言うものは無かった。冒険者になって悪いことをせず、自分の力で稼いだ金を手に入れてようやく金に慣れてきたのにこんな大金を手にしたら感覚が可笑しくなっちゃいそうでヤダ!それに、こんなの持ち歩くのはいくらマジックバックに入れたとしても怖いって!

「それでは最後に納品と今日までの依頼お疲れ様だ。クロガネ殿には色々な事をして貰いこの数カ月とても有益な日々だった」
「数々のおもてなしありがとうございました。この館で過ごした日々はとても楽しい日々でした」
「ブレスト殿には、俺の代わりに何度も前線に出向いて貰い、本当に助かった。衛兵の皆もブレスト殿ことを逞しく頼りになる冒険者だと褒めていたぞ。それこそ、このまま町に残って欲しいと言われるぐらいにな」
「経験して分かりましたけど、あの砦を守りながらこの町を守り家族の時間を作り出すなんて凄いですね。本当に尊敬します」
「慣れれば何とかなるもんさ」

 ブレストは砦とこの町を行ったり来たりしてたからシュナイザー様の苦労がよく分かるみたいで尊敬の眼差しをシュナイザー様へと向けていた。

「今日で最後の日となるが、明日に備えゆっくりと我が家で休んで行ってくれ。本当にご苦労様だった」

 俺達はその言葉に頷きシュナイザー様と握手をしてから、部屋を後にすると黙っていたテセウが俺の手を引いてきた。

「どうした?」
「・・・・ブレスト殿、今晩だけクロガネを借りても良いか?」
「良いですよ。最後ですからね」
「ん?どういうことだ?」
「つまり俺の部屋で一緒に寝ないかと言うことだ」
「え、良いのか?」

 いくら仲が良くなったとは言えど同じ部屋に寝るのは流石に不味いんじゃないか?

「クロガネなら誰も文句は言わないだろ」
「そうか、それならそうしようかな」
「じゃあ、俺は先に部屋に行っているから明日の朝集合な。寝坊するなよ~」
「ブレストこそ」

 一緒に居られるのは今日が最後だし、パーティーの間沢山話したけどまだ話足りない。だから、俺はテセウの誘いに乗りテセウの自室へと向かった。中は前に来た時と変わりなくロシェさんがベットメイクを済ませて待っていた。

「テセウ様お帰りなさいませ。クロガネ様も本日はお疲れさまでした」
「ありがとうございます」
「ロシェ、今日はクロガネと一緒にこの部屋で寝るつもりなんだ。枕を用意してくれるか?」
「畏まりました」

 ロシェさんは俺が来たことに少し不思議そうにしていたがテセウの言葉を聞き、目を輝かせながらお辞儀し部屋を出て行った。

「なんか嬉しそうだったけどどうしたんだろう」
「さぁ?」

 いきなり機嫌が良くなった理由が分からず二人して、首を傾げているとすぐにロシェさんが戻って来て枕をテセウのベットに置いた。

「こちらでよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですけど・・・・同じベットで寝るのか?俺は床でも・・・・」
「そんな事させる訳無いだろ。無駄に大きいんだから二人ぐらい訳が無い」
「テセウが良いならいっか」

 マジックバックの中にはクッションとかも入っているから、床にそれを敷いて寝ようかと思ってたんだけど一緒にベットで寝るみたいだ。もう夜は遅くなってきているので、俺達は服を着替え直ぐにベットの中へと入った。
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