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祝いの時間はあっという間
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一緒に料理を選んでる最中も絶え間なく声を掛けられ祝いの言葉を送られているテセウ。その一つ一つに丁寧に対応し、しかも相手の名前まで覚えているなんて凄いな。俺も暫くの間この町に居たけれど名前を憶えているのは、利用した店の店員程度で数ある衛兵の名前なんかは全然知らない。
「全住民の名前を憶えているのか?」
「全員では無いぞ。ある程度は把握しているだけだ」
「それでも衛兵の名前は全員憶えているんだろ?」
「関わる事が多かったからな」
「すげぇや」
衛兵だけでもかなりの数が居る筈なんだけどな~覚えて当然だと言うテセウに感心しながらも消費した魔力を回復するために大量の料理を皿によそった俺は挨拶をしているテセウを尻目に、次々と料理を口に運んでいく。挨拶をする人の中には冒険者も交じっている様だが、会話を聞く限りだと長年この町に滞在しこの町を拠点としている人達らしい。
この町は大きな町程栄えてはいないけど、生活に必要な物や贅沢品もある程度揃っているし、何よりもこの町の雰囲気が良いからここを拠点とするのは納得だな。魔物にも依頼にも困らないだろうから、生活も安定するだろうしな~
「クロガネ、どうしたんだ?」
「ん?少し考え事してただけだ」
食事を運ぶ手が止まりポーっとしていた俺を見て話し終えたテセウが気に掛けてくれたが、笑って何でもないと答える。
「そうか。何か悩みがあるのであれば教えてくれ」
「いや、悩みとかじゃ無いんだ。ただ俺はこれから先も戦えなくなるまで旅を続けるつもりだけどいつの日かあの冒険者達みたいに一つの町に留まる事もあるのかもなって思っただけなんだ」
「なるほど。将来の事はまだ分からないがその可能性もあるかもしれないな」
「だろ?でも、あんまり想像つかないんだよな~」
あるかもしれないってだけで具体的な想像は出来ないんだよな。街から出て外の世界の楽しさと美しさを知ってしまった俺は、一つの町に留まるなんて事出来るんだろうか。
「もしそんな事になったのであれば、是非俺の町を選んでくれると嬉しいな。クロガネであればいつでも大歓迎だぞ」
「ん~そうだな。テセウの居る町なら楽しそうだしそういう選択もありかもな」
先の事は分からないけど、友人が居る町で暮らすと言うの意外と悪くないかもしれない。まぁ今は冒険する気満々だから、先の話だけどな。
「本当は旅に行かず俺と一緒に居て欲しいんだが、クロガネの楽しみを奪いたくは無いし縛り付けたくも無いからクロガネの旅を応援するよ。何か面白いことがあれば是非俺にも教えてくれ」
「おう!面白い物があったら手紙に書いてやるから楽しみにしておけよ!」
テセウは町の外に中々出られないだろうから、俺が外の世界の話や面白い物を沢山教えてやるよ。
「あぁ、楽しみにしている」
「人が行ったことが無いような場所にも行きたいし、その為にはもっと強くならないとな!」
世界は広いし未知の場所に行くにはもっと実力を付けないと安心出来ないし、死んでみんなを悲しませるのは嫌だからな!俺はまずは体を作るために、次々と食事を口に運びその様子をテセウは笑いながら、
「なら俺ももっと強くならないとな」
その後も二人でパーティー会場になっている庭園を一緒に周り、これからの事楽しみにしている事を話しているとあっという間に時間は過ぎて行きパーティーは終わりの時間を迎えてしまった。
「そろそろ終わりだな。最後の挨拶をして来ないとならないな」
「いってらっしゃい」
テセウは少し寂しそうにしながらも、堂々と歩いて行き最初の様に館の扉の前まで歩いて行くとそれに気づいた参加者達が静かになり楽器の音も止んだ。
「時間が過ぎるの早く俺が12歳になったようにあっという間にパーティーは終わりの時刻を迎えてしまった。みな、パーティーは楽しめただろうか?」
「「「「はい!」」」」」
「それは良かった。今があるのは日々町へと貢献してくれている皆のおかげだ。その皆にそしてこの町に貢献できるよう俺も日々成長し立派な領主となることを誓おう。それでは、日々の感謝を述べこのパーティーを終了とする。皆、今日は本当にありがとう!」
テセウの閉会宣言に参加者たちは拍手と歓声で答え、俺が起こしてしまったトラブルはあったけれど何事も無く順調に開催されたパーティーはこれにて終了だ。余った食事などを参加者が布に包んで持ち帰り、衛兵達の案内で込み合うことなく次々と家へと帰っていくのを眺めていると
「クロガネ殿」
「シュナイザー様」
「パーティー終わりにすまないが、倉庫に案内しても良いだろうか?」
「あ、倉庫で着替えても良いですか?」
「勿論だとも」
俺達は明日の朝にはここを出発してしまうし、今は昼過ぎで日が落ち始めているからあの数を完成させるためには早めに取り掛かった方が良いだろう。シュナイザー様の後をついて行こうとすると、テセウがやって来た。
「父上、クロガネ」
「どうした?」
「クロガネが武器を作る様子を見させてもらっても良いだろうか?」
「良いぜ~だけどあんまり面白い物じゃ無いぞ?」
「錬金魔法については知っているが、もう少し見てみたいのだ」
「それなら着替えてから裏にある資材倉庫に来るんだ。流石にその格好で倉庫に行かせる訳にはいかない」
「分かりました」
俺が良いと言ったのでシュナイザー様はテセウに着替えてくるよう指示し、俺は裏にある資材倉庫へと一緒に向かった。案内された場所は、領主館から結構離れた場所に在って衛兵達の詰所の近くにあった。長い間使われているようで見た目は古いがしっかりと結界が張られているので、相当な者じゃないと忍び込むのは無理そうだな。シュナイザー様は懐から鍵を取り出し扉を開けると、中には大量の鉄と魔石、それに各属性と相性が良い素材が大量に準備されていた。
「お~大量ですね」
「足りなければ言ってくれ。すぐに用意させる」
「いや、これぐらいあれば足りると思います。それじゃあ、ちょっと着替えさせて貰いますね」
この服は防具と同じように汚れが付きにくいようになっているのだが、この綺麗な服で作業するのは嫌だし何よりゆったり出来ないのでいつも使っている部屋着に着替えて早速作業を始めるために鉄を手に取ってみる。
「・・・・」
「どうした?」
「いや、思っていたより上等な鉄だなと思っただけです」
「あぁ、メジュル鉱山での採掘は出来なくなったが鉱物資源は我が国の名物だからな」
鉄にも品質があって、鉄鉱石から精錬する際にどれだけ不純物が取り除けるかどうかで硬さも錆やすさ、さらには武器の切れ味まで違ってくる。だから、良い鉄を作り出すなら熟練した精錬技術が必要なんだが、昔から鉱物資源を使っていたこの国はそれに関して優れているみたいだ。
「これなら、問題無く作れますけど使い捨てですからもう少し品質が下がった奴でも大丈夫ですよ?」
「うちにはそんな物は置いて無いからそれを使ってくれ。それに、命を預ける物であるなら品質が良い程良い」
「それもそうですね。それじゃあ、早速始めます」
俺は作業がしやすいように各素材を纏めて近くに置き、用意されていた椅子は使わずマジックバックからクッションを取り出し地面へと座る。
「椅子は使わないのか?」
「こうやって座った方が楽なので」
「そうか、完成品はこの箱に入れてくれ」
「分かりました。シュナイザー様も見て行くんですか?」
「あぁ、後学のためにな。邪魔にならないようにする」
「見られても気にしないですから大丈夫ですよ」
「そうか。それとこれが衛兵達に支給している投げナイフだ」
「了解です」
ナイフを受け取りしっかり形を確認した後、箱を傍に置いた俺は大きく深呼吸をするとただ作る事だけに集中することにした。棒手裏剣を作るのにはもう慣れたし形は違うけど作り方は同じだから、これは単純作業の繰り返しだ。分解、性質の変更、魔法の付与そして錬成この作業を高速かつ無駄なく。材料を次々と取り錬成するのを一切の無駄な思考を取り除き繰り返すだけ。
この目の前のものだけに集中し最適な動きで行動するのは、相手を倒すという一点だけに集中する戦いに似ていて、一つの事に集中するのは得意だ。近くに居るはずのシュナイザー様の気配も忘れ、ただ作り続けていく。
「すまない遅れた」
「お、来たか」
「クロガネは・・・・気付いていないのか?」
「凄い集中力だろ?動きに一切無駄が無いしペースが乱れる事も無い」
「次々と錬成しているようですね・・・・錬金魔法は時間が掛かり精密な魔力操作が必要な魔法だと本には書かれていたのだが・・・・」
「普通はな。俺も一回だけ見たことがあるがこれは完全に別物だな」
集中していた俺はテセウが来たことに気付く事無く、ただ錬成を続けていた。
「全住民の名前を憶えているのか?」
「全員では無いぞ。ある程度は把握しているだけだ」
「それでも衛兵の名前は全員憶えているんだろ?」
「関わる事が多かったからな」
「すげぇや」
衛兵だけでもかなりの数が居る筈なんだけどな~覚えて当然だと言うテセウに感心しながらも消費した魔力を回復するために大量の料理を皿によそった俺は挨拶をしているテセウを尻目に、次々と料理を口に運んでいく。挨拶をする人の中には冒険者も交じっている様だが、会話を聞く限りだと長年この町に滞在しこの町を拠点としている人達らしい。
この町は大きな町程栄えてはいないけど、生活に必要な物や贅沢品もある程度揃っているし、何よりもこの町の雰囲気が良いからここを拠点とするのは納得だな。魔物にも依頼にも困らないだろうから、生活も安定するだろうしな~
「クロガネ、どうしたんだ?」
「ん?少し考え事してただけだ」
食事を運ぶ手が止まりポーっとしていた俺を見て話し終えたテセウが気に掛けてくれたが、笑って何でもないと答える。
「そうか。何か悩みがあるのであれば教えてくれ」
「いや、悩みとかじゃ無いんだ。ただ俺はこれから先も戦えなくなるまで旅を続けるつもりだけどいつの日かあの冒険者達みたいに一つの町に留まる事もあるのかもなって思っただけなんだ」
「なるほど。将来の事はまだ分からないがその可能性もあるかもしれないな」
「だろ?でも、あんまり想像つかないんだよな~」
あるかもしれないってだけで具体的な想像は出来ないんだよな。街から出て外の世界の楽しさと美しさを知ってしまった俺は、一つの町に留まるなんて事出来るんだろうか。
「もしそんな事になったのであれば、是非俺の町を選んでくれると嬉しいな。クロガネであればいつでも大歓迎だぞ」
「ん~そうだな。テセウの居る町なら楽しそうだしそういう選択もありかもな」
先の事は分からないけど、友人が居る町で暮らすと言うの意外と悪くないかもしれない。まぁ今は冒険する気満々だから、先の話だけどな。
「本当は旅に行かず俺と一緒に居て欲しいんだが、クロガネの楽しみを奪いたくは無いし縛り付けたくも無いからクロガネの旅を応援するよ。何か面白いことがあれば是非俺にも教えてくれ」
「おう!面白い物があったら手紙に書いてやるから楽しみにしておけよ!」
テセウは町の外に中々出られないだろうから、俺が外の世界の話や面白い物を沢山教えてやるよ。
「あぁ、楽しみにしている」
「人が行ったことが無いような場所にも行きたいし、その為にはもっと強くならないとな!」
世界は広いし未知の場所に行くにはもっと実力を付けないと安心出来ないし、死んでみんなを悲しませるのは嫌だからな!俺はまずは体を作るために、次々と食事を口に運びその様子をテセウは笑いながら、
「なら俺ももっと強くならないとな」
その後も二人でパーティー会場になっている庭園を一緒に周り、これからの事楽しみにしている事を話しているとあっという間に時間は過ぎて行きパーティーは終わりの時間を迎えてしまった。
「そろそろ終わりだな。最後の挨拶をして来ないとならないな」
「いってらっしゃい」
テセウは少し寂しそうにしながらも、堂々と歩いて行き最初の様に館の扉の前まで歩いて行くとそれに気づいた参加者達が静かになり楽器の音も止んだ。
「時間が過ぎるの早く俺が12歳になったようにあっという間にパーティーは終わりの時刻を迎えてしまった。みな、パーティーは楽しめただろうか?」
「「「「はい!」」」」」
「それは良かった。今があるのは日々町へと貢献してくれている皆のおかげだ。その皆にそしてこの町に貢献できるよう俺も日々成長し立派な領主となることを誓おう。それでは、日々の感謝を述べこのパーティーを終了とする。皆、今日は本当にありがとう!」
テセウの閉会宣言に参加者たちは拍手と歓声で答え、俺が起こしてしまったトラブルはあったけれど何事も無く順調に開催されたパーティーはこれにて終了だ。余った食事などを参加者が布に包んで持ち帰り、衛兵達の案内で込み合うことなく次々と家へと帰っていくのを眺めていると
「クロガネ殿」
「シュナイザー様」
「パーティー終わりにすまないが、倉庫に案内しても良いだろうか?」
「あ、倉庫で着替えても良いですか?」
「勿論だとも」
俺達は明日の朝にはここを出発してしまうし、今は昼過ぎで日が落ち始めているからあの数を完成させるためには早めに取り掛かった方が良いだろう。シュナイザー様の後をついて行こうとすると、テセウがやって来た。
「父上、クロガネ」
「どうした?」
「クロガネが武器を作る様子を見させてもらっても良いだろうか?」
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俺が良いと言ったのでシュナイザー様はテセウに着替えてくるよう指示し、俺は裏にある資材倉庫へと一緒に向かった。案内された場所は、領主館から結構離れた場所に在って衛兵達の詰所の近くにあった。長い間使われているようで見た目は古いがしっかりと結界が張られているので、相当な者じゃないと忍び込むのは無理そうだな。シュナイザー様は懐から鍵を取り出し扉を開けると、中には大量の鉄と魔石、それに各属性と相性が良い素材が大量に準備されていた。
「お~大量ですね」
「足りなければ言ってくれ。すぐに用意させる」
「いや、これぐらいあれば足りると思います。それじゃあ、ちょっと着替えさせて貰いますね」
この服は防具と同じように汚れが付きにくいようになっているのだが、この綺麗な服で作業するのは嫌だし何よりゆったり出来ないのでいつも使っている部屋着に着替えて早速作業を始めるために鉄を手に取ってみる。
「・・・・」
「どうした?」
「いや、思っていたより上等な鉄だなと思っただけです」
「あぁ、メジュル鉱山での採掘は出来なくなったが鉱物資源は我が国の名物だからな」
鉄にも品質があって、鉄鉱石から精錬する際にどれだけ不純物が取り除けるかどうかで硬さも錆やすさ、さらには武器の切れ味まで違ってくる。だから、良い鉄を作り出すなら熟練した精錬技術が必要なんだが、昔から鉱物資源を使っていたこの国はそれに関して優れているみたいだ。
「これなら、問題無く作れますけど使い捨てですからもう少し品質が下がった奴でも大丈夫ですよ?」
「うちにはそんな物は置いて無いからそれを使ってくれ。それに、命を預ける物であるなら品質が良い程良い」
「それもそうですね。それじゃあ、早速始めます」
俺は作業がしやすいように各素材を纏めて近くに置き、用意されていた椅子は使わずマジックバックからクッションを取り出し地面へと座る。
「椅子は使わないのか?」
「こうやって座った方が楽なので」
「そうか、完成品はこの箱に入れてくれ」
「分かりました。シュナイザー様も見て行くんですか?」
「あぁ、後学のためにな。邪魔にならないようにする」
「見られても気にしないですから大丈夫ですよ」
「そうか。それとこれが衛兵達に支給している投げナイフだ」
「了解です」
ナイフを受け取りしっかり形を確認した後、箱を傍に置いた俺は大きく深呼吸をするとただ作る事だけに集中することにした。棒手裏剣を作るのにはもう慣れたし形は違うけど作り方は同じだから、これは単純作業の繰り返しだ。分解、性質の変更、魔法の付与そして錬成この作業を高速かつ無駄なく。材料を次々と取り錬成するのを一切の無駄な思考を取り除き繰り返すだけ。
この目の前のものだけに集中し最適な動きで行動するのは、相手を倒すという一点だけに集中する戦いに似ていて、一つの事に集中するのは得意だ。近くに居るはずのシュナイザー様の気配も忘れ、ただ作り続けていく。
「すまない遅れた」
「お、来たか」
「クロガネは・・・・気付いていないのか?」
「凄い集中力だろ?動きに一切無駄が無いしペースが乱れる事も無い」
「次々と錬成しているようですね・・・・錬金魔法は時間が掛かり精密な魔力操作が必要な魔法だと本には書かれていたのだが・・・・」
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