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 私は首に回される腕をわざと力を入れて掴みつつ、意識を下に集中する。

 そして私の頭の上で口論する彼らの意識が私から離れた瞬間、私は思い切りヒールを履いた足で国王の足を踏みつけた。


「ぐぁぁぁぁぁぁ! な、な、にをする!」


 急に訪れた痛みから私を締める腕を緩めた瞬間、今度はみぞおちに、肘を食らわせる。


「ごっふぉっ! がっ、がっっっ」


 国王がよろけたのを確認すると、私はその場から這いつくばって転げるように逃げ出す。


「今だ! 狂王を捕獲しろ!」


 剣を高く掲げた王太子の言葉に呼応した騎士たちが、一気に国王の元へとなだれ込んだ。

 さすがの数に抵抗は無理だと理解した王は腕を上げ、項垂れるように肩を落とした。


「大丈夫か、王女様」

「大丈夫に見えますか? 手を貸していただけるとありがたいのですが王太子殿下」

「カミル。もう今日から国王だがな」


 不敵な笑みを浮かべながら、私に手を差し伸べた。

 今日から王か。まぁそうよね。これだけの騎士を動かし、現国王を倒しちゃったんだから。

 あ、でも、ということは私はこのままお役御免って感じじゃない?

 やだー。またあのぬくぬく生活に復活できるし。やっぱり今世はついてる~。


「んで、あんたが王妃だ」

「は?」


 思わず真顔で私は言葉を返す。


「あはははは、おい、その顔。さすがに不敬罪だと思うぞ」


 顔と言われても鏡ないし。

 鏡なくても今自分がどれだけ嫌そうな顔をしてしまったかは分かるけど。

 にしてもこの人何言ってるの状態なんだもの。仕方ないでしょう。

 好色王の王妃という最悪の展開から外れたっていうのに、誰が好き好んでこの人の王妃になんてならなきゃいけないのよ。

 ぜーーーーーーったいに嫌だし。


「元々、殿下のお父上であらせられる方と婚姻を結ぶ予定だった私と婚約をするおつもりなのですか?」


 要約。あなたの義母になる予定だったのに、なんで私と結婚するとか言ってるのよ。って、意味通じるわよね。

 しかしどれだけ言葉を返しても、まるで珍獣でも見るかのような目で、カミルは私を見ている。

 

「どーせ、どこかに嫁ぐとこになるんだ。それなら俺にしとけ」

「メリットは?」

「あははは。お前、本当に面白いな。あのジジイを踏みつけたとこからして最高だよ」


 殿下という身分を感じさせないほど、感情のままに笑うカミルを見ていると、そんなに嫌いではない自分がいるのも確かだった。

 どうせどこかに嫁ぐ。確かに、それはそうだ。

 いつかなんて、今回みたいにあっという間に来てしまうだろうし、その時もきっと自分での選択肢はないのよね。

 それなら少しでもいい方がいいに決まっている。


「側妃を持たず、正妃として迎える。あんなジジイみたいなことはしないさ」

「結構、好き勝手させてもらいますけど?」

「まぁ、王妃としての務めさえ果たしてくれれば構わない」

「……」

「不自由はさせないさ」

「裏切るのはナシですよ」

「あはははは。あんなに大胆な攻撃をされたら困るからな。裏切らないさ」

「な、も。もう」


 攻撃って。あの場面では仕方ないでしょう。だいたい、それのおかげでこうして簡単に国王を捕らえることが出来たのに。

 もっと褒めてくれたっていいのに。


「でもだからこそ俺の王妃にしたい。こんないい女、他には見たことないからな」

「な、な、な!」


 カミルの言葉に、顔が火照っていくのが分かる。

 褒めて欲しかったけど、こんな風にストレートに言われることには慣れてないのよ。

 しかも女性っぽさじゃなくて、強さを褒められるだなんて……。なんか、いろいろ反則だわ。

 こういうのも吊り橋効果って言うのかしらね。


「あなたの王妃となりましょう」


 この手を取ることが良き未来なのかどうかは分からない。

 大体、結婚運とか一ミリもなかったわけだし。でも分からないからこそ、賭けてみることにした。

 この王らしからぬ王となる彼に。

 それに私は自分の幸せを諦める気などまったくないから――


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後までお読みいただいた読者様に激感謝♡

いつもお読みいただきまして大変ありがとうごさいます。
感謝しかありません。

もしよろしければ、ブクマ・しおり・感想いただけますと今後の励みとなりますので、よろしくお願いいたします。

また新しく短編も完成いたしましたので、もしよろしければ読みに来ていただけますと作者は泣いて喜びます(ᴗ̤ .̮ ᴗ̤  )₎₎ෆ
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