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「馴れ初めと言われましてもね。もうかなり幼い頃の話ですよ陛下」
「おおお。子どもの頃ってわけか」
「そうですね。初めて会ったのは確か10歳くらいだったと思いますよ。本当はその時に、父に頼み込んででも彼女を婚約者としたかったんですけどね」
「おー、オレはそういう話が聞きたかったんだよ。んで、んで」
「茶化すならすぐやめますからね」
「ちゃんとそこはおとなしく聞いてやるから、もったいぶるなよ」
私とマルクが初めて会ったのは、確かに公爵夫人が開いたガーデンパーティだった。大人たちは皆、公爵夫人と話すことを目的にしていたから、子どもたちは公爵家の庭で勝手に遊んでいたっけ。
記憶があんまり残ってはいないけど、虫かなんかをマルクに投げられていじめられたのよねー。
言っちゃ悪いけど、今の落ち着いた感じとまったく逆で、マルクはホント悪ガキって感じだった覚えがある。他の女の子たちにもそれをやって泣かせていたぐらいだし。
あんまりひどいから頭に来て、私はその場で喧嘩になったのよね。たぶん、記憶が正しければそれこそ取っ組み合いの喧嘩だった気がする。
その後だって、何かにつけて顔を合わせては、意地悪ばっかりされて喧嘩していたはず。
うん……。これのどこに好きになる要素ってあったっけ。むしろその流れで婚約を申し込みたかったって、さすがに話の流れ的に無理があるんじゃないかなぁ。
あーー。この話、絶対にしちゃダメなやつよね。嘘つくなら、もうちょっとっていうかなんというか。んー。
私では契約的な婚約にしても、お相手としてかなり無理があるんじゃないのかな。
「おー、そんなにサルート令嬢は可愛かったのか」
「ええ。他の令嬢よりも活発で、頭もよく、行動力もあり、何より物怖じしないところがとても良かったですね」
んんん? なんかそこはかとなく令嬢っぽくないってマルクに言われているのは気のせいじゃないわよね。だって女の子らしくなく、落ち着きもなく、怖いもの知らずって意味でしょう、これって。
いや、間違ってはないんだけどさ。褒めながらけなすって大概でしょう。だいたい、気づいてないわよね。今、目の前の人がどんな顔しているか。
一人つらつらと語るマルクと引き換えに、陛下は今にも吹き出しそうな顔をしていた。
やーめーてーーーー。本当に恥ずかしいから。やだぁ、嬉しい! とか、そこまで私のことが好きだったのね! じゃない方の意味で、本当に恥ずかしいからやめて。
「マ、マルク様……」
私はいたたまれなくなり、隣に座るマルクの服の裾を掴む。
お願い、それぐらいにしてそろそろ止まって。目に力と思いを精一杯込め、マルクを見つめた。
「オリビアは昔からずっと可愛いかったですよ」
「えっと」
ちっがーーーーう。どこをどうしたら、そこに繋がるのよ。おかしいでしょう。私そんなことを言ってもらうために見つめていませんけど?
ほらほら、とうとう陛下なんて下を向いて口を押え、肩を震わせているじゃないの!
なんなのこれ。新手の嫌がらせなのね、きっとそうよね。宰相になって頭が良くなった分、子どもの頃とはまた別の方法で私をいじめるつもりなのね。
頭脳攻撃とかで宰相様になんて勝てる人間は、この国にはいないと思いますけど。まぁ、子どもの頃とは違って、取っ組み合いの喧嘩をしても今では勝てなさそうだけど。
にしても、なんなのもう。昔、やり返して泣かせたのをまだ根に持っていたのね。そういうのって、絶対に女の子から嫌われると思うんだけど。
「あ、あの」
「でも君にはあの頃から婚約者がいた。親が決めた婚約者が」
「それは……」
「そう貴族にとっては仕方のないことだ。何度、この権力を持ってその婚約を覆そうかと思ったものか」
「え?」
まっすぐなマルクの瞳。どこまでが嘘で、どこまでが真実なのか分からなくなってしまうようなそんな感覚を覚えた。
「おおお。子どもの頃ってわけか」
「そうですね。初めて会ったのは確か10歳くらいだったと思いますよ。本当はその時に、父に頼み込んででも彼女を婚約者としたかったんですけどね」
「おー、オレはそういう話が聞きたかったんだよ。んで、んで」
「茶化すならすぐやめますからね」
「ちゃんとそこはおとなしく聞いてやるから、もったいぶるなよ」
私とマルクが初めて会ったのは、確かに公爵夫人が開いたガーデンパーティだった。大人たちは皆、公爵夫人と話すことを目的にしていたから、子どもたちは公爵家の庭で勝手に遊んでいたっけ。
記憶があんまり残ってはいないけど、虫かなんかをマルクに投げられていじめられたのよねー。
言っちゃ悪いけど、今の落ち着いた感じとまったく逆で、マルクはホント悪ガキって感じだった覚えがある。他の女の子たちにもそれをやって泣かせていたぐらいだし。
あんまりひどいから頭に来て、私はその場で喧嘩になったのよね。たぶん、記憶が正しければそれこそ取っ組み合いの喧嘩だった気がする。
その後だって、何かにつけて顔を合わせては、意地悪ばっかりされて喧嘩していたはず。
うん……。これのどこに好きになる要素ってあったっけ。むしろその流れで婚約を申し込みたかったって、さすがに話の流れ的に無理があるんじゃないかなぁ。
あーー。この話、絶対にしちゃダメなやつよね。嘘つくなら、もうちょっとっていうかなんというか。んー。
私では契約的な婚約にしても、お相手としてかなり無理があるんじゃないのかな。
「おー、そんなにサルート令嬢は可愛かったのか」
「ええ。他の令嬢よりも活発で、頭もよく、行動力もあり、何より物怖じしないところがとても良かったですね」
んんん? なんかそこはかとなく令嬢っぽくないってマルクに言われているのは気のせいじゃないわよね。だって女の子らしくなく、落ち着きもなく、怖いもの知らずって意味でしょう、これって。
いや、間違ってはないんだけどさ。褒めながらけなすって大概でしょう。だいたい、気づいてないわよね。今、目の前の人がどんな顔しているか。
一人つらつらと語るマルクと引き換えに、陛下は今にも吹き出しそうな顔をしていた。
やーめーてーーーー。本当に恥ずかしいから。やだぁ、嬉しい! とか、そこまで私のことが好きだったのね! じゃない方の意味で、本当に恥ずかしいからやめて。
「マ、マルク様……」
私はいたたまれなくなり、隣に座るマルクの服の裾を掴む。
お願い、それぐらいにしてそろそろ止まって。目に力と思いを精一杯込め、マルクを見つめた。
「オリビアは昔からずっと可愛いかったですよ」
「えっと」
ちっがーーーーう。どこをどうしたら、そこに繋がるのよ。おかしいでしょう。私そんなことを言ってもらうために見つめていませんけど?
ほらほら、とうとう陛下なんて下を向いて口を押え、肩を震わせているじゃないの!
なんなのこれ。新手の嫌がらせなのね、きっとそうよね。宰相になって頭が良くなった分、子どもの頃とはまた別の方法で私をいじめるつもりなのね。
頭脳攻撃とかで宰相様になんて勝てる人間は、この国にはいないと思いますけど。まぁ、子どもの頃とは違って、取っ組み合いの喧嘩をしても今では勝てなさそうだけど。
にしても、なんなのもう。昔、やり返して泣かせたのをまだ根に持っていたのね。そういうのって、絶対に女の子から嫌われると思うんだけど。
「あ、あの」
「でも君にはあの頃から婚約者がいた。親が決めた婚約者が」
「それは……」
「そう貴族にとっては仕方のないことだ。何度、この権力を持ってその婚約を覆そうかと思ったものか」
「え?」
まっすぐなマルクの瞳。どこまでが嘘で、どこまでが真実なのか分からなくなってしまうようなそんな感覚を覚えた。
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