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013 苦手なとこから攻略したハズですが
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「あのぅグラン宰相、お忙しいところ大変恐縮なのですが、少し私にお時間をいただけないでしょうか? 取り急ぎお話をしたいことがあるのです……」
「おや、珍しいこともあるのですね。貴女から話があるだなんて」
珍しいと言いつつも、その表情は全く変化がない。
さすが冷徹とか氷の宰相なんて二つ名が付いているだけあるわね。
自分でも珍しいって思うわよ。
だいたい、今まで避けてきたんだもの。でも今は、そんなことは言っていられないのよ。
まず先に苦手なトコから攻略しておかないと、後がたくさんつかえているのよ。
「そうなのですが……すみません」
「では場所を変えましょう。何やら込み入った話のようですからね」
察しがいいというかなんというか。
本来は交際をしていない貴族の男女が二人きりで、というのは何かと問題があるのだけど。
ま、昨日婚約者は事実上、消滅したし。手短に話すだけなら問題はないでしょう。
「申し訳ありません、私などのためにグラン宰相の貴重なお時間をとらせてしまって」
「いえ。貴女なら構いませんよ」
そう言った顔が、やや緩む。んんん?
なんでこの場面で顔が緩むのかしら。
何ていうか……この微笑みはなに?
わ、私なにか変なコト言ったかしら。
彼の笑う顔なんて初めて見たのだけど。
でもきっと驚いているのは私だけじゃないはず。
周りを見渡せば、驚いたように口を開けた貴族や衛兵たちと視線が合う。
そして彼らは宰相と私を交互に見ていた。
待って、宰相とは何にも関係ないから。
いや、本当に違うのよ。ちがうのー。
声に出さず口をパクパクして訴えていると、遠巻きに見ていた観客たちは見てはいけないものを見たかのように視線を外した。
えええ。なになになに。もう、なんなのよ。
それに貴女ならっていうほど、仲良かった記憶もないわよ?
私が視線を観客から宰相に戻すと、彼はまた元の無表情を浮べている。
ああ、もしかして昔いじめていた謝罪の念みたいなものなの?
いや、それしかないわよね。
どっちにしても、冷徹と呼ばれる宰相サマがこんなに簡単に了承してくれたんだもの。
有難く思ってついて行くしかないわね。
来客用の部屋に通されると思っていた私は、なぜか宰相の執務室へと通された。
机にはびっしりと書類の束が、綺麗に角を揃えられた形で詰まれている。
私の机より書類が多いのに、整理されていてとても綺麗なお部屋ね。
なんかこういうのって、性格出るのよねー。
余分な家具などは何もないのに、細やかな細工を施された家具たちは明らかに高そう。
今私が座らされた深紅のソファーはしっとりもっちりとした肌触りをしながらも、体が沈み込みすぎないハリがある。
どんな素材で出来ているのだろうと触れば触るほど、ただうっとりとしてしまう。
これはきっと、人をダメにするソファーね。
それにコレ一個で、私の部屋の家具が全て買えてしまいそうだわ。これって売ったらいくらになるのかしら。
「そのソファー、もしかして座り心地が悪かったですか?」
「いえその逆で、とても良いソファーですね。もちもちのふかふかで座ると吸い込まれるようで……。ああ、そんなことよりもわざわざ執務室へお邪魔してしまって申し訳ありません」「それは大丈夫ですよ。ここの方が落ち着きますし、それも他人に聞かれることもないですからね」
「そうですね、すみません」
執務室の奥で何やら支度をしてきたと思った彼は、その手にティーカップのセットを持ってやってきた。
そして立ったまま器用に紅茶を注ぎながら、私の向かい側に座る。
「えええ。申し訳ありません。手ずからご用意させてしまって。いや、むしろ私がやりますけど?」
こういうのって侍女に頼むものでしょう。
なんで宰相の身分にある人が自分でやってしまうのよ。
それならまだ私がやったのに。
そんなに得意ではないけど、これでも一応一通りのことは出来るのよ。
でもこんなことなら、中にまでユノンを連れてくればよかったわね。
あの子、貴族がいっぱいいるところは嫌だって言うから置いてきたんだけど。
「ああ、気にしないで下さい。いつものことですから」
「いやいや、いつものことってダメでしょう。まったく、いつもこの城では宰相になにさせているのよ……」
「おや、珍しいこともあるのですね。貴女から話があるだなんて」
珍しいと言いつつも、その表情は全く変化がない。
さすが冷徹とか氷の宰相なんて二つ名が付いているだけあるわね。
自分でも珍しいって思うわよ。
だいたい、今まで避けてきたんだもの。でも今は、そんなことは言っていられないのよ。
まず先に苦手なトコから攻略しておかないと、後がたくさんつかえているのよ。
「そうなのですが……すみません」
「では場所を変えましょう。何やら込み入った話のようですからね」
察しがいいというかなんというか。
本来は交際をしていない貴族の男女が二人きりで、というのは何かと問題があるのだけど。
ま、昨日婚約者は事実上、消滅したし。手短に話すだけなら問題はないでしょう。
「申し訳ありません、私などのためにグラン宰相の貴重なお時間をとらせてしまって」
「いえ。貴女なら構いませんよ」
そう言った顔が、やや緩む。んんん?
なんでこの場面で顔が緩むのかしら。
何ていうか……この微笑みはなに?
わ、私なにか変なコト言ったかしら。
彼の笑う顔なんて初めて見たのだけど。
でもきっと驚いているのは私だけじゃないはず。
周りを見渡せば、驚いたように口を開けた貴族や衛兵たちと視線が合う。
そして彼らは宰相と私を交互に見ていた。
待って、宰相とは何にも関係ないから。
いや、本当に違うのよ。ちがうのー。
声に出さず口をパクパクして訴えていると、遠巻きに見ていた観客たちは見てはいけないものを見たかのように視線を外した。
えええ。なになになに。もう、なんなのよ。
それに貴女ならっていうほど、仲良かった記憶もないわよ?
私が視線を観客から宰相に戻すと、彼はまた元の無表情を浮べている。
ああ、もしかして昔いじめていた謝罪の念みたいなものなの?
いや、それしかないわよね。
どっちにしても、冷徹と呼ばれる宰相サマがこんなに簡単に了承してくれたんだもの。
有難く思ってついて行くしかないわね。
来客用の部屋に通されると思っていた私は、なぜか宰相の執務室へと通された。
机にはびっしりと書類の束が、綺麗に角を揃えられた形で詰まれている。
私の机より書類が多いのに、整理されていてとても綺麗なお部屋ね。
なんかこういうのって、性格出るのよねー。
余分な家具などは何もないのに、細やかな細工を施された家具たちは明らかに高そう。
今私が座らされた深紅のソファーはしっとりもっちりとした肌触りをしながらも、体が沈み込みすぎないハリがある。
どんな素材で出来ているのだろうと触れば触るほど、ただうっとりとしてしまう。
これはきっと、人をダメにするソファーね。
それにコレ一個で、私の部屋の家具が全て買えてしまいそうだわ。これって売ったらいくらになるのかしら。
「そのソファー、もしかして座り心地が悪かったですか?」
「いえその逆で、とても良いソファーですね。もちもちのふかふかで座ると吸い込まれるようで……。ああ、そんなことよりもわざわざ執務室へお邪魔してしまって申し訳ありません」「それは大丈夫ですよ。ここの方が落ち着きますし、それも他人に聞かれることもないですからね」
「そうですね、すみません」
執務室の奥で何やら支度をしてきたと思った彼は、その手にティーカップのセットを持ってやってきた。
そして立ったまま器用に紅茶を注ぎながら、私の向かい側に座る。
「えええ。申し訳ありません。手ずからご用意させてしまって。いや、むしろ私がやりますけど?」
こういうのって侍女に頼むものでしょう。
なんで宰相の身分にある人が自分でやってしまうのよ。
それならまだ私がやったのに。
そんなに得意ではないけど、これでも一応一通りのことは出来るのよ。
でもこんなことなら、中にまでユノンを連れてくればよかったわね。
あの子、貴族がいっぱいいるところは嫌だって言うから置いてきたんだけど。
「ああ、気にしないで下さい。いつものことですから」
「いやいや、いつものことってダメでしょう。まったく、いつもこの城では宰相になにさせているのよ……」
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