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第四章
第五十三話 毒花たちのお茶会
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ああ、本当にやだ。
コレ、誰得のお茶会なんだろう。
そう漏らしそうになる言葉を、紅茶と共に飲み込む。
謁見の後に招待されていたお茶会に、私はいた。
王妃主催のお茶会。
貴族の中でも身分が高く、尚且つ王妃に気に入られた者しか参加できないお茶会だ。
その名誉あるお茶会は、もちろんお断りすることなど出来ない。
貴族令嬢にとってココへの参加はこの上ない名誉なのだ。
そう。王妃様に気に入られてさえ、いれば。
しかしそんな華やかなお茶会も、私たちにとってはどうやらそうでもないらしい。
「ふふふ。嬉しいわ。わたくしのお茶会に、初めてお二人が来て下さったのだもの」
「本日はお招きに預かりまして、光栄にございます」
「王妃様のお美しいお顔をこのような近くで拝見出来ること、とてもうれしく思いますわ」
私とチェリーは、呼ばれた末席に座りながら深々と王妃にお礼を述べた。
「まぁ、可愛らしいこと。グレンの婚約者に、今回の主役の精霊使いサマだもの」
王妃は、扇子を仰ぎながらにこやかに微笑む。
お茶会に呼ばれている他の令嬢たちは、みんな王妃のお気に入りのようだった。
みんな同じ花の髪飾りをつけていて、視線は私たちに向けられている。
「まぁ、この方たちがあの有名な姉妹なのですね」
「社交界でも、あまり関りがなかったから初めてお会いしましたわ」
王妃を味方につけているという自信なのか、令嬢たちは値踏みをするように私たちを見ていた。
仮にも、私たちは侯爵家の人間。
身分で言えば、彼女たちに劣るということはない。
それなのに初見とは、よく言えたものよね。
言い返すことは簡単だけど、得策ではないことも分かっている。
「まぁまぁ、みなさん言いすぎですわよ」
「どこが良くてご婚約なさったのか、馴れ初めとかお聞きしたいわ」
貴族の婚約など、そのほとんどが親同士が決めたものだと分かってるはずなのに。
馴れ初めも何も、あるわけないじゃないの。
ああ、でもチェリーはグレンと真実の愛とか言ってたからあるのかな。
興味なさ過ぎて聞いたことなかったけど。
「そんなことよりも、わたくしは精霊が見てみたいですわ」
「そうですね、さすが王妃様。見てみたいです」
あ、チェリーののろけ話は聞く前から一刀両断されたわね。
横目でチェリーを見る。
悔しそうな顔でもしてるのかと思ったが、案外そこは大人のようだ。
作り笑いでしかないだろうが、きちんと王妃たちの話に笑みを浮かべていた。
「精霊、ですか」
「ええ、そうよ。まさか見せられないの?」
「いえ。王妃様のお願いを、なぜ無下に出来ましょう」
断ったら断ったで、偽物だったと言われそうだし。
こんな場でリンを見世物になどしたくはなかったんだけど。
『ごめんね、リン。少しの間だけ我慢してね』
『大丈夫リン、気にしないでご主人サマ』
『うん……』
「リン、出てきて」
あらかじめある程度こうなることを予想してきて良かったと思う。
練習した通り、リンは煙に巻かれながら登場する。
ブローチからいきなり大きくなるよりも、いきなり現れた方がよりよく精霊と印象付けられえるから。
そして案の定、急に宙へとふわふわ浮くリンを見て、王妃たちは一瞬言葉をなくした。
コレ、誰得のお茶会なんだろう。
そう漏らしそうになる言葉を、紅茶と共に飲み込む。
謁見の後に招待されていたお茶会に、私はいた。
王妃主催のお茶会。
貴族の中でも身分が高く、尚且つ王妃に気に入られた者しか参加できないお茶会だ。
その名誉あるお茶会は、もちろんお断りすることなど出来ない。
貴族令嬢にとってココへの参加はこの上ない名誉なのだ。
そう。王妃様に気に入られてさえ、いれば。
しかしそんな華やかなお茶会も、私たちにとってはどうやらそうでもないらしい。
「ふふふ。嬉しいわ。わたくしのお茶会に、初めてお二人が来て下さったのだもの」
「本日はお招きに預かりまして、光栄にございます」
「王妃様のお美しいお顔をこのような近くで拝見出来ること、とてもうれしく思いますわ」
私とチェリーは、呼ばれた末席に座りながら深々と王妃にお礼を述べた。
「まぁ、可愛らしいこと。グレンの婚約者に、今回の主役の精霊使いサマだもの」
王妃は、扇子を仰ぎながらにこやかに微笑む。
お茶会に呼ばれている他の令嬢たちは、みんな王妃のお気に入りのようだった。
みんな同じ花の髪飾りをつけていて、視線は私たちに向けられている。
「まぁ、この方たちがあの有名な姉妹なのですね」
「社交界でも、あまり関りがなかったから初めてお会いしましたわ」
王妃を味方につけているという自信なのか、令嬢たちは値踏みをするように私たちを見ていた。
仮にも、私たちは侯爵家の人間。
身分で言えば、彼女たちに劣るということはない。
それなのに初見とは、よく言えたものよね。
言い返すことは簡単だけど、得策ではないことも分かっている。
「まぁまぁ、みなさん言いすぎですわよ」
「どこが良くてご婚約なさったのか、馴れ初めとかお聞きしたいわ」
貴族の婚約など、そのほとんどが親同士が決めたものだと分かってるはずなのに。
馴れ初めも何も、あるわけないじゃないの。
ああ、でもチェリーはグレンと真実の愛とか言ってたからあるのかな。
興味なさ過ぎて聞いたことなかったけど。
「そんなことよりも、わたくしは精霊が見てみたいですわ」
「そうですね、さすが王妃様。見てみたいです」
あ、チェリーののろけ話は聞く前から一刀両断されたわね。
横目でチェリーを見る。
悔しそうな顔でもしてるのかと思ったが、案外そこは大人のようだ。
作り笑いでしかないだろうが、きちんと王妃たちの話に笑みを浮かべていた。
「精霊、ですか」
「ええ、そうよ。まさか見せられないの?」
「いえ。王妃様のお願いを、なぜ無下に出来ましょう」
断ったら断ったで、偽物だったと言われそうだし。
こんな場でリンを見世物になどしたくはなかったんだけど。
『ごめんね、リン。少しの間だけ我慢してね』
『大丈夫リン、気にしないでご主人サマ』
『うん……』
「リン、出てきて」
あらかじめある程度こうなることを予想してきて良かったと思う。
練習した通り、リンは煙に巻かれながら登場する。
ブローチからいきなり大きくなるよりも、いきなり現れた方がよりよく精霊と印象付けられえるから。
そして案の定、急に宙へとふわふわ浮くリンを見て、王妃たちは一瞬言葉をなくした。
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