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しおりを挟むそして、ロルフ卿に真実を告げてからほぼひと月。
お父様から謹慎を言い渡された私は、ほとんどの時間を自室で過ごしていた。
私室のある東の棟内と中庭に出ることは許されていたものの、何をするにも気力がわかず、自ら引き籠っていたのだ。
このひと月は、毎日を暗い室内から、明るい日差しの庭をぼんやりと眺めていたことくらいしか、ほぼ記憶がない。
好きだった百合の花も、見るのが辛くて庭に植えていたものは全て刈り取らせてしまった。
見れば、幸せだった逢瀬を思い出すからだ。
でも不思議なもので、花はないはずなのに、ふとした時に匂いが漂ってくる。
多分残り香だろうが、甘く優美なその香りを嗅ぐと、過去の感情が胸にありありと蘇り、切なさに締め付けられたようになる。
そんな私は、嫌でも自覚せざるを得なくなった。
どうやら私は、自分でも思っていた以上、真剣にロルフ卿に恋をしていたらしい。
別れを告げると決めた時には、所詮私とロルフ卿は私の嘘から始まった関係なのだから、簡単に終わらせることができると思っていた。
離れていれば会いたいという思いも、会えば心が震えるような喜びも全て、初めての恋人付き合いに舞い上がっているだけだと思っていた――いや、思うようにしていたのだ。
だから私は、誤魔化しで口にしたあの時以来、一度も好きだと言ったことはない。
これ以上嘘を塗り重ねたくないという思いからではあるけども、やはり心のどこかで、終わりがくることをわかっていたのかもしれない。
そしてこの先も、その言葉をロルフ卿に告げることはないだろう。
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