ロゼと嘘

碧 貴子

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「ああっ!」

 ふくらみの頂点を口に含まれて、体が跳ねて嬌声が上がる。
 ぬるつく舌で、先端を舐められ、捏ねられて、信じられないような快感に高い声を上げて身を捩る。
 もはや他のことを考える余裕など、ない。
 ただひたすら、気持ちがいい。

 同時に、硬く大きな手が、体を這いまわる。
 でも決定的な何かは足りなくて、焦燥感が募っていく。

 もっと強く、深く、痛いくらいの何かが欲しい。

 無意識で腰を揺らしてロルフ卿の膝に押し付けると、湿った音を立ててそこが滑るのがわかった。

「……ああんっ、も……おねがっ……」

 自分が何を欲しているのかわからぬまま、懇願する。
 すると、私の体を這いまわっていた手が、ぴたりと動きを止めた。
 そのまま、曲げた膝に手が置かれる。
 脚を開かせるように内ももを撫で上げた手が、そっと濡れた茂みを覆った。

「ひっ」

 触れられて、それまでとは比べ物にならない快感に襲われる。
 同時に、体内に異物が侵入する感覚に、私の喉から声にならない空気が漏れた。

 そんなところ、自分でも触ったことがない。
 自分という境界の内に侵入され、崩される感覚がある。
 怖い、けれどたまらなく気持ちがいい。
 あんなにも嫌いだと思っていたロルフ卿にされているというのに、だ。

 なんなく指を呑み込んで、ひくひくと締め付ける。
 痙攣のような快楽の波が収まりきる前に、その指がぐるりと体内をなぞった。

「ああっ」

 途端、どろどろと絡みつくような快感で、がくがくと腰が揺れる。
 指がとある一点を擦るたびに、腹の奥に耐えがたい疼きが溜まっていくのがわかる。

 気持ちいいけれども、足りない。
 重く渦巻く熱と疼きで、どうにかなってしまいそうだ。
 せり上がり、膨らむ焦燥感で、身を捩ってロルフ卿に縋り付く。
 もはや自分が何を言っているのか、しているのかさえ、わからない。
 嬌声を上げ、泣きながら無理だと体を擦りつける。

 すると、唐突に指が引き抜かれ、体が離されて、私は茫然とロルフ卿を見上げた。
 いつの間に脱いだのか、鍛え上げられた胸板が視界いっぱいに広がる。
 耐えるかのように眉がひそめられた額には、汗が。
 いつも冷静で隙のない男が今、髪を乱し、情欲を滲ませて、焦がれたように自分を見下ろしている。
 その光景に、私の心臓が、ドクリと大きく跳ね上がるのがわかった。 

「……責任は取る」

 言い終わるよりも早く、熱くて硬い何かが、秘所のぬかるみに当てられる。
 言われた意味を飲み込めないまま、それがめり込み、体を引き裂き貫く衝撃で、私は声もなく目を見開いた。

「――っ」
「……は」

 一息に根元まで押し込まれて、全ての音が遠ざかり、目の前が赤く染まる。
 痛い。
 経験したことのない痛みと強烈な圧迫感で、体が硬直する。
 けれども、それまで溶け切って用をなさなかった頭が、痛みで自我を取り戻したのがわかった。

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