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58「一応、勇者パーティ」

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「我が孫娘、エリザベータ・アイトーロルが、この国の認定勇者となった。これも国民の皆のおかげだ。皆、ありがとう」

 アイトーロル王のお話はクドクドと長くなくて良いですね。簡潔で的確、それでいて心が篭っている感じもある、理想的な上司かも知れませんね。


「勇者認定の儀はこれにて終了! 皆の者! わざわざ集まってくれて悪かった!」

 もちろんニコラだって上司に戴くのに問題ありませんけどね。


 ぞろぞろとトロル達が解散し、それぞれが自分の仕事へと戻っていきました。
 王城三階のテラスに残っていたのは王、ニコラ、リザ、それに跳んで入ったアレク。
 さらに茫然自失のカコナとロン。

 広場に残っているのは、レミちゃんとジンさん、さらに茫然自失のキスニ姫、それにノドヌさん。

 私はずっと姿を隠していますから、そのどちらにも姿はありませんよ。こんな透け透けであの大勢の前には出れませんもの。


「ではリザ、私は部屋に戻る。いつ国を出るだとか、そう言った事は逐一報告に来ること。良いな?」

「畏まりました、お爺様。本日は誠にありがとうございました」

 ニコラに付き添われてテラスを離れるアイトーロル王の背に向けて、リザとアレクがぺこりと頭を下げました。

 その背が見えなくなるまで頭を下げた二人は、同時にぴょこんと頭を上げて、再び手を取り合って声を上げます。

「やったねリザ!」

「ありがとうアレク! 貴方のお陰です!」

「ううん、そんな事ない。僕は一言喋っただけで、皆んながリザの事をとっても大事に思ってくれてるからだよ」

「そんな事言わないで下さい! わたくし、貴方の言葉、とっても嬉しかったんですから――」

「――リザ……」

「――アレク……」


 リザに勇者認定をあげて下さい! って叫んだアレクはカッコ良かったですものね。
 二人は手を取り合ったままでお互いをじっと見つめて、そして――


 ――それをまたじっと見詰めるカコナとロンの視線に気付いてワチャワチャしながら手を離しちゃいました。

 んもう、あとちょっとだったのに。

 テラスの床にヤンキー座りのカコナとロンが、ちょっぴり面白くないような、それでいてワクワク顔という難しい顔で二人を見詰めていました。

「あ! せっかくだから続けてくれて良かったのに!」

「続ける……? カコナ、二人は何を続けようとしたのか教えてくれないか?」

「……ちょっ! ロン近すぎ! そんな綺麗な顔でこっち見ちゃダメ! レミに怒られちゃう! それにワタシはもうちょいバルクってる方が――」

 何をやってるんですか、この二人は。
 でもカコナの言い分も分かりますね。せっかくだから続けてくれても良かったとも思いますし、綺麗とバルクの両立が理想的だとも思います。

 あれ、それってロン・リンデルの元の姿、魔王デルモベルトの容姿が近いかも知れませんね。

 カコナのどストライクは魔王デルモベルト?
 けれどあの学芸会レベルの芝居の時に一度は姿を目にしている筈です。考えすぎでしたね。


「ねぇねぇリザ姫さま! なんでワタシたちにはバフ掛かってないの!?」

「そう、俺にも掛かっていないのだが」

「え、そうなのですか? なぜでしょうか……?」

 二人からは事前に言われていたんですよ。
 『リザの勇者パーティとして参加するからバフおくれ』って。けれどちゃんと言っておいたんですけどね。


『だから言っておいたでしょう。期待しないでね、って』

「あ! おばあちゃん! けど、そんなこと言ったって、ねえ?」

「あぁ、期待はしていた」

『そんなこと言われたって……』

 私だって困っちゃいますよ。
 アレクたちが勇者認定を貰ったアネロナと、ここアイトーロルの規模の差、勇者認定の仕組み、などなどを再び説明します。

 ここで重要なのは、まず第一にリザのバフがあって、その余剰分をパーティで分ける事になる、という事なんですよ。

「……そっか。分かったけど、でもゼロって事はないと思ってた」

『多分ですけど、体感できない位にほ~んのちょっぴりはバフ掛かってるんでしょうね。だから三人は一応、アイトーロルの勇者パーティって事にはなりますね』

 特になんの役にも立たないと思いますけど。

「うーん、足引っ張るだけのパーティメンバーになっちゃうのか」

「やはり付いて行かないべき……か」

「ぶっちゃけそうだね。二人は留守番だね」

 アレクがはっきりそう言いますが、まぁ、確かにそうでしょうね。


「アレックス! 少しこちらへ来て下さいませんか!」

 おや?
 広場の方からアレクを呼ぶ声です。
 アレクの事を本名のアレックスで呼ぶのはボラギノ女史しかおられませんね。
 
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