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123.5「ウギー:置いていけ」
しおりを挟む『やっぱり思うんだ』
「どうしました?」
『僕を置いていくべきだよ』
「なぜです?」
『僕を、いや、イギーの魔術を封じるための結界でヴァンの魔力が頼りないじゃないか』
「確かにそれは否定しませんが、解放してしまえば貴方は僕らを襲うでしょう?」
『きっと襲うだろうね。でも解放せずに、例えば精魔術陣をそこらの岩にでも刻み直せばどう? 置いていけると思わないか?』
「……そうですね。大目に魔力を籠めていけば……、岩に刻んだとしてもしばらくは保つでしょう」
『しばらく?』
「ええ。僕の体から直接魔力を供給できなくなりますから」
『どの程度保つ?』
「限界まで籠めて、二、三日は保つでしょう」
『ならそうするべきだと思う。二、三日保てば充分ヴァン達はファネルの所に辿り着けるじゃないか』
「…………」
『積極的にヴァン達の手助けをしようとは思わないけど、積極的に足を引っ張るつもりもないんだ』
「…………」
『何を悩む必要があるのさ』
「……なんの根拠もないんですが、ウギーさんを連れて行くべきだと言うんです、僕の勘が」
『…………勘か』
「ええ。ただの勘です」
『ならしょうがないね』
「ええ、しょうがありません。折角のお申し出なのにすみません」
『良いさ。ボクも本音で言えば一緒に行きたいし』
「どう思いますか?」
『何が?』
「アギーさん達はどのように仕掛けてくるか、です」
『どうだろうね。霧の体の連中ももういないみたいだし、ボクが聞いてた範囲から推測してたのとはずいぶんとズレて来てるように思うからね』
「どう推測してたんですか?」
『まぁもう言っても良いか。ヴァン達が神の影と呼ぶ存在、彼らがタロウを乗っ取って新たな礎となる、そこを足掛かりにこの世界を元通りに復元するのさ』
「復元……ですか?」
『あぁ。1/4じゃない、元通りの真ん丸の世界にさ』
「そんな事が可能なんですか?」
『アギーの考えではできるらしいよ』
「それって僕らにとっても喜ばしい事なんでは……」
『そうでもないさ。この世界の明き神も、そこに住むヴァン達も、みんな死んじゃうらしいからね』
「……そう、ですか。さすがにそれは許容できませんね」
『だろうね。そうだろうと思う』
「でも神の影ももういない、と。どのような手段で来るかは……」
『全然。さっぱり分かんない』
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