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96.5「ヴァン:年貢の納め時」
しおりを挟む場所は一階のホール。
神父役はタイタニア様。
「ヴァン、貴方はいついかなる時も、このロボを愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
「ロボ、貴女はいついかなる時も、このヴァンを愛することを誓いますか?」
『はい。誓うでござる』
「貴方がたは自分自身をお互いに捧げますか?」
『「はい。捧げます」でござる』
「ではヴァン。改めて婚約首輪を巻いてあげて」
「はい」
ロボの首に五つの石がついた婚約首輪を巻きました。
「よく似合ってます。綺麗ですよ」
『ヴァン殿……』
「では、誓いのキスを」
年貢の納め時ですね。
八十二歳にして初婚です。
でも、ロボは狼といえどもレイロウです。きっと長生きしてくれるでしょうし、二人で仲良く楽しく過ごせるでしょう。
僕の唇がロボの口先に触れました。
突然、ロボの体から薄桃色の波動、ロボの精霊力が渦を巻き、ロボの体を覆いました。
「タ、タイタニア様! これは一体どうしたんです!?」
パチンと指を鳴らしたタイタニア様。
「よっし来た! 最高のタイミングだわ!」
薄桃色の渦が解け、中から現れたのは白い毛のロボではなく、袖のない白いワンピースを着た白い髪の少女――いえ、美少女と言って差し支えないでしょう――が佇んでいました。
少女は何かを確認するように、両手で自分の頭や顔、肩や腕をさすっています。
『ヴァン殿? それがしどうしたんでござる? これでは人族のようでござらんか?』
……驚き過ぎてしばらく声が出ませんでした。
白い髪は肩口で切り揃えられたボブ、ワンピースから覗く健康的なしなやかにほっそりと伸びた手足、ややツリ目ながら理知的な目の光。そして特徴的な犬歯。
「ロボ、貴女はそんな事が出来たんですか?」
『それがしこんなことでき――』
薄桃色の渦が再度、足元から頭上へ立ち上がりました。
『――んでござるよ……って、あれ? 元の姿に戻ってるでござる』
「タイタニア様? もしかして四つめの石の効果ですか?」
「ぶっぶーっ! その力はワタシと同じ、ロボに元々備わっていたものよ。愛した相手に合わせて姿を変える力、さすがワタシの子孫ね」
「じゃぁ四つめの石の効果とは?」
「さっきのロボがワンピースを着てたでしょ? アレがこの石の力よ。狼から人に変化する度に裸んぼじゃ、ロボが可愛そうだもの」
なるほど。
タイタニア様の直系ですものね、同じ力を持っていても不思議ではありませんね。
「おいタロウ、さっきのがロボだってか?」
「なんかそうみたいっすよね?」
「ちょっと可愛いくなかったか?」
「……ロップスさん、正直になりましょうや。はっきり言って、めっちゃ美少女やったすやん!」
「すまん強がった。物凄い美少女だった……」
タロウが四つん這いになったロップス殿の背を摩り慰めています。
「……ロボ、驚きましたね」
『驚いたでござる! でもこれで堂々とブラム様にご挨拶に伺えるでござる!』
そういえばロボは心配していましたね。
そんなこと心配しなくても、狼の姿でも僕は一向に構いません。
狼の姿も、先程の人の姿も、どちらも可愛らしくて僕は好きですよ。
末永くよろしくお願いしますね。
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